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プロローグ

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 「海外を旅行するのはいつ以来だろうか。」

 自宅と職場を往復するだけの毎日。それどころか自宅に設置したパソコンを眺めるだけ日もあったか。それだけで給料が入るのだから。とも思うのではあるが、会う人と言えばいつもの顔ばかり。楽しみと言えば帰りのコンビニで買う晩酌の缶チューハイと、になってから見始めた動画配信のみ。私は何のために働いているのだろうか?

 あれから3年。外に出られる時がやっと来た。

 迎えた今年のゴールデンウイーク。溜まりに溜まった欲求を発散するべく、しかし思っていたより残高が増えていない通帳と睨めっこしながら海外へ赴く事にした私。予算の範囲内で。とは言えやる事と言えば現地の酒を飲むぐらい。別に日本でも出来るのでは無いか?そんな野暮な事はここでは言わない。1週間後にやって来る現実を忘れるべく私は、様々な店を梯子する事にした。アルコールが入れば言語なんか要らない。ただ酒を酌み交わし。笑い合えればそれで良い。3年前までは当たり前であったこの光景が今の私にとって。最高の贅沢だ……。


 旅行も終盤。とある酒場に入った私に、グラス片手に近づく人が。

「一緒に酒が飲みたいのだな。」

とそのグラスを受け取り乾杯。そのまま飲み干した所で……。



 気が付くと私は風呂の浴槽に居た。これでもかと言うぐらい氷の入った風呂の浴槽に。それまでの事は覚えていない。フト右に目をやるとそこには

「命が欲しければここに電話しろ。」

の現地語と電話番号と思しき数字の羅列。冷え切り感覚の無い中、受話器に手を伸ばし指定された番号に電話をする私。繋がった。今の状況を伝える私。それに対し、

「腰の辺りを確認して下さい。」

との電話口のアナウンスに従う私。そこであった事を伝える私。それに対し、

「落ち着いて下さい。あなたは今……。」
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