大将首は自分で守れ

俣彦

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担がれた神輿

和睦?

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 9月。武田晴信は駿河東部奪回に動く今川義元と合流。これを受け北条は吉原の城を放棄し三島に退却。その三島へと押し寄せる今川武田の連合軍。相対すべく小田原から北条氏康は駿河に入るのでありましたが……。



北条氏康「河越が包囲されたのか!?」



 当所の予定通り山内上杉憲政は、かつて扇谷上杉が北条に奪われた武蔵の拠点。河越城を取り戻すべく兵を起こすべのでありました。その数……。



北条氏康「……8万。」



 山内上杉憲政は、これまで対立関係であった扇谷上杉に、どちらかと言えば北条寄りであった古河公方足利をも味方の陣営に引き入れることに成功。これに関東の諸将が合流。氏康の義弟で河越城城主北条綱成は籠城。氏康に救援を要請して来たのでありました。そんな中……。



武田晴信「氏康が仲介を依頼して来たぞ。」



 北条が境を為すほぼ全ての諸将が敵に回ったこのいくさ。さすがの氏康と言えども全てと相対することは出来ず。この局面を打開すべく白羽の矢を立てたのが……。



板垣信方「我が武田家。と言う事でありますな。」

甘利虎泰「今話が出来るのは我らだけでありますからな。」



 武田と北条は前年に和睦。



飯富虎昌「実際、我らにとってこのいくさは今川の手伝いに過ぎませぬ故。」

武田晴信「矛を収めやすい立場ではある。」

板垣信方「あとは義元がどう思うかになりますが……。」



 氏康からの話を義元に伝える晴信。そこで出た条件は……。



北条氏康「駿河の権益の全てを明け渡せ……。」

板垣信方「はい。今川の目的はこれ以上もこれ以下もないとのこと。」

北条氏康「これを認めなければ……。」

板垣信方「伊豆。更には小田原へと兵を進めることになりましょう。」

北条氏康「そのようになった場合……。」

板垣信方「武田も同調することになります。」



 甲斐から相模に侵入することを意味。



北条氏康「認めれば……。」

板垣信方「今川と同様。晴信も兵を収めます。」

北条氏康「……しか無いのか……。」



 11月。北条氏康は、駿河の権益の放棄することと引き換えに武田、今川と和睦。河越城の救援へと向かうのでありました。



山本勘助「殿。」

武田晴信「どうした勘助。」

山本勘助「板垣様はどのように考えられているのでありまするか?」

武田晴信「どのように?と言うと……。」

山本勘助「この和睦についてであります。」

武田晴信「所期の目的を達したわけであるから……。それだけの事では無いのか?」

山本勘助「今川はそうかも知れませぬが。」

武田晴信「我らにとっては違うとでも言うのか?」

山本勘助「はい。駿河の件は終わりましたが。河越の件は終わっておりませぬ。」

武田晴信「それと武田は関係あるのか?」

山本勘助「今、我らは甲斐のほか諏訪を得ております。」

武田晴信「そうだな。」

山本勘助「次に進むとなりますと……。」

武田晴信「佐久を北へ。」

山本勘助「そこは山内上杉が影響力を有する地域。」

武田晴信「確かに。」

山本勘助「その山内上杉は今。北条と河越城でいくさをしています。」

武田晴信「うむ。」

山本勘助「そのいくさ……。どちらが勝つのでありましょうか……。」

武田晴信「何が言いたいのだ?」

山本勘助「板垣様は……その結果を見て。次の布石を打ってくるのではないのか?と……。」

武田晴信「どう言う事だ?」

山本勘助「もし北条が河越で敗れる。となった場合。板垣様は外交の方針を変更することになるのでは?」

武田晴信「北条との関係を破棄する。と言う事か?」

山本勘助「はい。我が武田家は関東管領のエリアにありますし、信虎様の時代は北条と抗争の関係にありました。今は懇意にしておりますが、その関係でありましても此度のいくさにおいて我らは今川につき。北条と対峙しております。どのような事態になっても……。」

武田晴信「不思議なことではない。と言う事か?」

山本勘助「御意。」

武田晴信「あくまで今は、仮の和睦でしかない。と……。」

山本勘助「御意。全ては……。」

武田晴信「河越次第。と言う事か……。」

山本勘助「御意。」
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