大将首は自分で守れ

俣彦

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担がれた神輿

打倒北条

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高遠の高遠頼継を屈服。箕輪の藤沢頼親を追放するなど諏訪地域支配の強化に成功した武田晴信。迎えた1545年。



武田晴信「(今川)義元が北条にいくさを仕掛けるのか。」



 今川家と北条家は元々主君と家老の関係。今川義元の父・氏親の家督相続の際、活躍したのが北条家初代となる伊勢新九郎。その功績により与えられたのが駿河の富士郡及び駿東郡の南部地域。その後、新九郎は伊豆・相模へと進出。新九郎の死後跡を継いだ氏綱は北条に改姓すると共に独自路線を模索。今川が武田に対峙した際、今川からの援軍要請を拒絶。これに対し今川氏親は、これまで北条に与えていた駿河の権益を反故。これに乗じ氏綱は駿河東部へ侵攻。遠江勢との連携を図ることにより義元を挟み撃ち。困った義元は武田信虎及び氏綱の武蔵進出に相対していた扇谷上杉家当主朝興に援軍を要請。両者が兵を派遣するも不発。それどころか扇谷上杉家の拠点の1つ河越城が氏綱に奪われる事態に陥るのでありました。



板垣信方「今川にとって駿河は本貫地。北条にとっては創業の地。お互い失いたくはない場所。」

甘利虎泰「いつ軍事衝突となりましても……。」



 北条氏綱が亡くなり、その跡を継いだのが北条氏康。引き続き武蔵での領国の拡大を続ける北条の動きに危機感を覚えた山内上杉憲政は、これまで対立が続いていた扇谷上杉家及び古河公方家と和睦。更には駿河の今川義元にも誼を通じるのでありました。



飯富虎昌「共通理念は『打倒北条』。」



 そんな中にあって武田家は?と言うと……。



武田晴信「海野平の一件以来山内上杉とは仲が悪い。」



 山内上杉との関係から積極的には参加しなかった海野平の戦い。とは言え佐久地域での権益の拡大には成功した武田家でありましたが、信虎追放により外に目を向けることが出来なくなった隙を突かれ。獲得した権益を山内上杉に奪われることになった武田家。



板垣信方「山内上杉が共通の敵となったことにより、ここ数年北条家との衝突は起きていない。」

甘利虎泰「むしろ良好な関係とも言える。」

飯富虎昌「ただ我が武田家は今川との関係も密であります。」



 信虎の隠居先は駿河。



武田晴信「その義元から『共同で駿河を攻め込まないか』の誘いが届いておる。」



 そこに記された構想は



板垣信方「北条家の西。駿河を今川と武田。北から足利と上杉が同時に攻め込む。」

武田晴信「さすがの北条と言えども……。」

甘利虎泰「如何なされますか?」

武田晴信「……今川と共同するのが筋。加えてこれまで対立しあっていた足利と両上杉が手を結んだとなると、これまで三者の争いの隙を突き領土を拡大して来た北条も苦しい。ただ……。」

飯富虎昌「どうされましたか?」

武田晴信「……それで北条が滅亡となるとも思えぬ。仮に滅亡となったとして、関東が治まるとも思えぬ。」



 三者の仲違いが北条の台頭を産んだ実績がある。



武田晴信「で、このいくさ。どちらにつこうがどのような結果になろうが武田にとってのメリットがない。」



 仮に駿河東部を武田が占拠したとしても、その領地は今川のもの……。



武田晴信「ただ甲斐への脅威を少しでも排除するためにも、ここは今川に味方するとするか。」

板垣信方「御意。」
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