大将首は自分で守れ

俣彦

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海野平の戦い

武田信虎以前の甲斐

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 甲斐の国は関東公方のエリア。



村上義清「そうだったのか?」

家臣「そうですよ。高校野球で何故か山梨が北信越では無く関東大会に組み込まれるのも『我々は首都圏の人間だ。』と言い張るのもその名残ですよ。」

村上義清「あの山梨が!!か。」

家臣「はい。でも関東に入るには甲斐の国から入るのが高速道路や新幹線が無い時代は、必ずしもそうではありませんが一番楽と言えば楽ではありました。」

村上義清「今度、リニアが出来ると。」

家臣「もとに戻るのであります。ただ赤石山脈で揉めているようでありまして……。」

村上義清「甲斐から諏訪を経由して飯田までを繋ぐ在来線の『リレーリニア』が出来るかもしれないな。」

家臣「それでしたら伊那谷に入らず直で中津川まで繋ぐことになるでしょう。……尤もそんなことをするより東京から新幹線に乗ったほうが速く名古屋に行くことが出来ます。」

村上義清「……流石は駿河。策士である……。」

家臣「……まぁ(函南で痛い目を食った)水が絡んでいますからね。こればかりは……。殿!!」

村上義清「なんだ!?」

家臣「話を元に戻しましょう。」



 関東公方のエリアにあたるため、甲斐の国は関東公方の情勢に直接影響を受ける。もしくは与える立場にありました。伊豆にいた堀越公方が今川氏親の重臣・伊勢長氏の侵攻により追放された際、頼りとしたのが甲斐武田家。



村上義清「『頼りとする。』と言うことはそれだけ武田に今川と対抗するだけの力があったと言う事だな。今、我らを頼りとしている……。」

家臣「越後や上野に支援を求めるものが増えるばかりであります。」

村上義清「公方が甲斐にやって来たとなると、武田にとっては関東進出の大義名分を得た事にもなるんだな。」



 ただ当時の甲斐の国は内紛状態。甲斐の守護・武田信縄は亡命して来た堀越公方を保護し山内上杉と同盟を結んだのに対し、弟であり信縄の父信昌の支援を受けた信恵は駿河の今川氏親と伊勢長氏と結ぶ事態に発展。



村上義清「この家……。いつも父と長男との折り合いが良くないような……。」

家臣「弟は兄の様子を見て育ちますからね……。やって良いことと悪いことが既に選別されていますから……父から見れば可愛く見えるのでありましょう。」

村上義清「でも内紛状態となると他国からの侵攻が……。」



 そんな中発生したのが明応地震。遠州灘沖で発生。東海道沖で津波の被害が記録される中、甲斐の国も震度6の揺れを観測。この出来事を受け、父(次男)と長男は仲直りをするのでありました。



村上義清「親子で喧嘩をしている状況では無い。と……。」

家臣「それ以上に、緊急事態となった時の信縄の行動を見て父信昌が長男を見直したのかもしれません。」

村上義清「平穏な時は『だから最近の若い奴らは……。』と眉をひそめていたのにこの緊急時になって『あのあいつがあれだけのことをすることが出来たのか!!』と言う事か。」

家臣「法律とか体面ではどうすることも出来ない状況に陥った時生きて来るのが。」

村上義清「幼少期に良い悪いは別として、いろいろ自分自身で体験して来たこと。」

家臣「……憎まれっ子世に憚る。」

村上義清「良い子で居るだけではね……。」

家臣「で。この仲直りで最も損をした人物が1人います。それは誰かと言いますと。」



 武田家一本化に伴い父信昌の外交路線を信縄も継承。よって堀越公方足利茶々丸は伊勢長氏の元へ護送され茶々丸は切腹。



村上義清「平和な世の中だったら、足利一門の人間として悠々自適な生活を送ることが出来たであろうに……。」

家臣「今はそのような時代ではありません故。」

村上義清「自分の身は自分で。と言う事か……。」

家臣「はい。」



16世紀に入り、武田信昌死去。その2年後に長男信縄もこの世を去り跡を継いだのが……。
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