もし春日信達が本能寺の変の報せを聞いた直後。真田昌幸に相談を持ち掛けていたら……。

弱点

　今の埼玉県寄居町にあった鉢形城は山内上杉家家臣長尾景春が築いた城。目的は鉢形城の北。今の埼玉県本庄市にあった五十子陣に相対す事。北と東からの侵入を想定し、北を流れる荒川と東を流れる深沢川と断崖を駆使し築城。



真田昌幸「かつて亡き御館様が鉢形を攻めた際、２つの川と崖に阻まれ（深沢川の）外しか攻略する事が出来なかったと聞いています。流石の滝川様と言えど攻略するのは……。ましてや北条のほぼ全軍が金窪に留まり、かつ増水により上野国から兵を繰り出す事が出来ない状況では……。」

小幡信真「真田殿の仰る事御尤もである。鉢形は御館様はもとより上杉謙信も落とす事が出来なかった城。今の滝川様でも難しいのは重々承知している。しかしこの城には弱点がある。それは……。」



　城の南西部。



小幡信真「元々が北と東からの攻撃を想定した城である事。その後の御館様や謙信も北と東から攻撃を仕掛けて来た事。それに南と西が安定した北条領であったため備えを必要としていなかった。ただ氏邦も弱点を放置し続けるのは好ましくないと順次拡張工事が行われて来た。行われてはいるが所詮は平地。北と東に比べれば攻め落とす事は難しくは無い。そして我らは……。」



　鉢形城南西地域への調略を進めている。



小幡信真「しっかりとして縄張りが施されているため敵側有利な状況ではあるが、平地での戦いとなれば人の数が物を言う。鉢形を守る氏邦は、ほぼ全てを率い金窪に居る。金窪から鉢形に辿り着くためには荒川と深沢川を迂回しなければならない。自ずと道は限られる。こちらも容易な事では無いが後詰めへの対処は可能。後は戦いたくてうずうずしている連中に働いていただく。鉢形は滝川様に差し上げましょう。ただし秩父は……。」



　小幡信真が頂戴します。



小幡信真「これが私からの条件であります。」

倉賀野秀景「真田殿。如何致す？」

真田昌幸「川を堰き止め。こちらの合図に合わせ決壊させる作業は重労働であり、危険を伴う作業であります。加えてこの成否が金窪でのいくさの勝敗に直結する事を考えれば……。」

倉賀野秀景「小幡殿次第？」

真田昌幸「はい。問題は滝川様がその事を了承されるか？になりますが……。」

倉賀野秀景「滝川様はもとより。滝川様の家臣の中にも沼田があっさり終わってしまった事を残念がっている様子でありました。それに鉢形は北条の重要拠点であり、この機会を逃すと攻略が難しくなる事を考えれば……。」

小幡信真「お願い出来ますでしょうか？」

倉賀野秀景「わかった。ただし我らが兵を回す事は出来ない。小幡殿が滝川様を支えるよう。」

小幡信真「わかりました。」