29 / 62
肝心の
しおりを挟む
滝川一益の大軍を確認した藤田信吉は、滝川益重からの停戦案に同意。越後へと落ちていくのでありました。滝川一益は当初の予定を早め。真田昌幸に沼田城を引き渡し、対北条戦に向け軍令を発したのでありました。その沼田城……。
真田昌幸「叔父上。危険な役目を引き受けていただきありがとうございました。」
矢沢頼綱「いや。老いぼれが出来る事等限られている。齢の数で誤魔化しただけに過ぎぬ。ところで昌幸。」
真田昌幸「何でありましょうか?」
矢沢頼綱「藤田との話し合いはそれ程掛からなかった。沼田を離れる事によって解決する事も決まっていた。」
真田昌幸「そうなのでありましたか?それにしては時間が掛かっていたように。」
矢沢頼綱「藤田は
『滝川の大軍をこの目で見るまでは離れぬ。我が儘を許していただきたい。』
と言って来た。もしこの間に景勝が沼田に兵を進めていたら大変な事になっていた。真田の力等そんなものでしかない。」
真田昌幸「そうですね……。」
矢沢頼綱「同じ事は新発田にも言える。新発田が単独で景勝と相対する事は出来ない。蘆名や伊達の後ろ盾。更には西と南から織田が春日山を脅かして初めて新発田は景勝と戦う事が出来る。その中の1つ織田は今、越後に兵を動かす事は出来ない。蘆名や伊達を焚き付けるには織田の力が必要不可欠。真田の名前では新発田を動かす事は出来ない。新発田が動かない。織田も越後に兵を動かす事が出来ないとなると……。」
真田昌幸「川中島が危険に晒される事になってしまいます。」
矢沢頼綱「川中島が奪われたら次は砥石が危なくなる。この事態を回避するのに必要不可欠となるのが滝川一益様の存在である。」
真田昌幸「はい。」
矢沢頼綱「小幡の話を聞く限り、氏政は兵を集めている。その集めた兵を上野攻略に使おうと考えている。そこに居るのが滝川様。」
真田昌幸「このいくさを避ける事は出来ません。」
矢沢頼綱「そのいくさに滝川様が勝っていただかなければならない。」
真田昌幸「はい。」
矢沢頼綱「上杉からの侵攻は我らが守る。これは不可能な事では無い。」
真田昌幸「はい。」
矢沢頼綱「しかし肝心の滝川様と北条のいくさに関与する事は出来ない。」
真田昌幸「そうなってしまいます……。」
矢沢頼綱「出来る事となれば、滝川様優位な場所。有利な条件でのいくさに持ち込む事。これしかない。」
真田昌幸「その術を探さなければなりません。」
矢沢頼綱「昌幸。」
真田昌幸「はい。」
矢沢頼綱「その手掛かりとなるものを藤田は漏らしておった。」
真田昌幸「叔父上。危険な役目を引き受けていただきありがとうございました。」
矢沢頼綱「いや。老いぼれが出来る事等限られている。齢の数で誤魔化しただけに過ぎぬ。ところで昌幸。」
真田昌幸「何でありましょうか?」
矢沢頼綱「藤田との話し合いはそれ程掛からなかった。沼田を離れる事によって解決する事も決まっていた。」
真田昌幸「そうなのでありましたか?それにしては時間が掛かっていたように。」
矢沢頼綱「藤田は
『滝川の大軍をこの目で見るまでは離れぬ。我が儘を許していただきたい。』
と言って来た。もしこの間に景勝が沼田に兵を進めていたら大変な事になっていた。真田の力等そんなものでしかない。」
真田昌幸「そうですね……。」
矢沢頼綱「同じ事は新発田にも言える。新発田が単独で景勝と相対する事は出来ない。蘆名や伊達の後ろ盾。更には西と南から織田が春日山を脅かして初めて新発田は景勝と戦う事が出来る。その中の1つ織田は今、越後に兵を動かす事は出来ない。蘆名や伊達を焚き付けるには織田の力が必要不可欠。真田の名前では新発田を動かす事は出来ない。新発田が動かない。織田も越後に兵を動かす事が出来ないとなると……。」
真田昌幸「川中島が危険に晒される事になってしまいます。」
矢沢頼綱「川中島が奪われたら次は砥石が危なくなる。この事態を回避するのに必要不可欠となるのが滝川一益様の存在である。」
真田昌幸「はい。」
矢沢頼綱「小幡の話を聞く限り、氏政は兵を集めている。その集めた兵を上野攻略に使おうと考えている。そこに居るのが滝川様。」
真田昌幸「このいくさを避ける事は出来ません。」
矢沢頼綱「そのいくさに滝川様が勝っていただかなければならない。」
真田昌幸「はい。」
矢沢頼綱「上杉からの侵攻は我らが守る。これは不可能な事では無い。」
真田昌幸「はい。」
矢沢頼綱「しかし肝心の滝川様と北条のいくさに関与する事は出来ない。」
真田昌幸「そうなってしまいます……。」
矢沢頼綱「出来る事となれば、滝川様優位な場所。有利な条件でのいくさに持ち込む事。これしかない。」
真田昌幸「その術を探さなければなりません。」
矢沢頼綱「昌幸。」
真田昌幸「はい。」
矢沢頼綱「その手掛かりとなるものを藤田は漏らしておった。」
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

私の名は杉山源吾。津軽藩で家老を務めていますが、公言出来ません。何故なら私の父が石田三成だからです。
俣彦
歴史・時代
慶長5年。関ヶ原の戦いで父石田三成が敗れ、居城佐和山も陥落。
その時、大坂城で豊臣秀頼に近侍していたのが次男の石田重成。
「このままでは助からない。」
絶望的な状況を見兼ね、手を差し伸べたのが同僚津軽信建。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
織田信長IF… 天下統一再び!!
華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。
この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。
主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。
※この物語はフィクションです。
猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~
橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。
記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。
これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語
※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります

高天神攻略の祝宴でしこたま飲まされた武田勝頼。翌朝、事の顛末を聞いた勝頼が採った行動とは?
俣彦
ファンタジー
高天神城攻略の祝宴が開かれた翌朝。武田勝頼が採った行動により、これまで疎遠となっていた武田四天王との関係が修復。一致団結し向かった先は長篠城。
楽将伝
九情承太郎
歴史・時代
三人の天下人と、最も遊んだ楽将・金森長近(ながちか)のスチャラカ戦国物語
織田信長の親衛隊は
気楽な稼業と
きたもんだ(嘘)
戦国史上、最もブラックな職場
「織田信長の親衛隊」
そこで働きながらも、マイペースを貫く、趣味の人がいた
金森可近(ありちか)、後の長近(ながちか)
天下人さえ遊びに来る、趣味の達人の物語を、ご賞味ください!!
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

【完結】風天の虎 ――車丹波、北の関ヶ原
糸冬
歴史・時代
車丹波守斯忠。「猛虎」の諱で知られる戦国武将である。
慶長五年(一六〇〇年)二月、徳川家康が上杉征伐に向けて策動する中、斯忠は反徳川派の急先鋒として、主君・佐竹義宣から追放の憂き目に遭う。
しかし一念発起した斯忠は、異母弟にして養子の車善七郎と共に数百の手勢を集めて会津に乗り込み、上杉家の筆頭家老・直江兼続が指揮する「組外衆」に加わり働くことになる。
目指すは徳川家康の首級ただ一つ。
しかし、その思いとは裏腹に、最初に与えられた役目は神指城の普請場での土運びであった……。
その名と生き様から、「国民的映画の主人公のモデル」とも噂される男が身を投じた、「もう一つの関ヶ原」の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる