上 下
9 / 62

甲斐国とその周辺

しおりを挟む
依田信蕃「徳川様は京における此度の件。明智光秀の謀叛により織田信長様信忠様が斃れられた一連の出来事を受け、

『織田が武田の権益であった場所を維持する事は出来なくなる。』

と見ています。対象は甲斐信濃。そして上野の3ヶ国。事実南信濃に入られた毛利(長秀)様や春日殿の上司で川中島を任されていた森長可様はそれぞれの本貫地に戻られています。先程の話。上野における越後の国境全域を真田殿に委ねられた所を見ると、滝川様も帰りたいと考えられているのでは無いか?」

春日信達「滝川様は

『当地に留まる。』

と承っているが、真田殿はどのように見ていますか?」

真田昌幸「滝川様が京における政変を知ったのは私の話が最初であった。その情報は?」

春日信達「越後の上杉景勝から。内応の打診であった。」

依田信蕃「森様よりも……。」

春日信達「森様が知ったのと景勝が知ったのは、ほぼ同じであった可能性が高い。」

依田信蕃「森様よりも先に景勝が?」

春日信達「はい。川中島の状況を確認する必要があったのでありましょう。」

依田信蕃「そこで其方は?」

真田昌幸「私の所に連絡して来た。」

春日信達「真田殿の助言に助けられ、森様との関係を深める事が出来た。感謝している。」

真田昌幸「助けられたのはこちらの方だ。これが無かったら……。」



 上越国境の備えに着手する事は出来なかった。



真田昌幸「滝川様はここを離れる予定は無い。今も上野国厩橋城で政務を執られている。ところで……。」

依田信蕃「如何為されましたか?」

真田昌幸「先程其方。徳川様は、織田が維持する事が出来ない場所に甲斐国も含めていたが……。」

依田信蕃「はい。」

真田昌幸「先のいくさの結果、甲斐国内を束ねる事が出来る武田の旧臣は皆。誅殺されている。国を引っ繰り返すだけの組織立った抵抗をする事は不可能な状況にある。これに相違無いか?」

依田信蕃「ありません。」

真田昌幸「甲斐を管轄する河尻秀隆様が国を離れようとされている?」

依田信蕃「その情報は入っていません。」

真田昌幸「甲斐国の南に位置する駿河国は徳川様の権益で北の信濃国は織田。そして東の相模武蔵は徳川様同様織田と同盟関係にある北条(氏政)様が統治している。外から攻められる恐れは無い。」

依田信蕃「真田殿。」

真田昌幸「如何為された?」

依田信蕃「わかった上で話されていますよね?私の口から話させようとしていますよね?誰がどういう動きを見せようとしているのか?を。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

高天神攻略の祝宴でしこたま飲まされた武田勝頼。翌朝、事の顛末を聞いた勝頼が採った行動とは?

俣彦
ファンタジー
高天神城攻略の祝宴が開かれた翌朝。武田勝頼が採った行動により、これまで疎遠となっていた武田四天王との関係が修復。一致団結し向かった先は長篠城。

明日の海

山本五十六の孫
歴史・時代
4月7日、天一号作戦の下、大和は坊ノ岬沖海戦を行う。多数の爆撃や魚雷が大和を襲う。そして、一発の爆弾が弾薬庫に被弾し、大和は乗組員と共に轟沈する、はずだった。しかし大和は2015年、戦後70年の世へとタイムスリップしてしまう。大和は現代の艦艇、航空機、そして日本国に翻弄される。そしてそんな中、中国が尖閣諸島への攻撃を行い、その動乱に艦長の江熊たちと共に大和も巻き込まれていく。 世界最大の戦艦と呼ばれた戦艦と、艦長江熊をはじめとした乗組員が現代と戦う、逆ジパング的なストーリー←これを言って良かったのか 主な登場人物 艦長 江熊 副長兼砲雷長 尾崎 船務長 須田 航海長 嶋田 機関長 池田

鄧禹

橘誠治
歴史・時代
再掲になります。 約二千年前、古代中国初の長期統一王朝・前漢を簒奪して誕生した新帝国。 だが新も短命に終わると、群雄割拠の乱世に突入。 挫折と成功を繰り返しながら後漢帝国を建国する光武帝・劉秀の若き軍師・鄧禹の物語。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 歴史小説家では宮城谷昌光さんや司馬遼太郎さんが好きです。 歴史上の人物のことを知るにはやっぱり物語がある方が覚えやすい。 上記のお二人の他にもいろんな作家さんや、大和和紀さんの「あさきゆめみし」に代表される漫画家さんにぼくもたくさんお世話になりました。 ぼくは特に古代中国史が好きなので題材はそこに求めることが多いですが、その恩返しの気持ちも込めて、自分もいろんな人に、あまり詳しく知られていない歴史上の人物について物語を通して伝えてゆきたい。 そんな風に思いながら書いています。

GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲

俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。 今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。 「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」 その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。 当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!? 姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。 共に 第8回歴史時代小説参加しました!

旧式戦艦はつせ

古井論理
歴史・時代
真珠湾攻撃を行う前に機動艦隊が発見されてしまい、結果的に太平洋戦争を回避した日本であったが軍備は軍縮条約によって制限され、日本国に国名を変更し民主政治を取り入れたあとも締め付けが厳しい日々が続いている世界。東南アジアの元列強植民地が独立した大国・マカスネシア連邦と同盟を結んだ日本だが、果たして復権の日は来るのであろうか。ロマンと知略のIF戦記。

蘭癖高家

八島唯
歴史・時代
 一八世紀末、日本では浅間山が大噴火をおこし天明の大飢饉が発生する。当時の権力者田沼意次は一〇代将軍家治の急死とともに失脚し、その後松平定信が老中首座に就任する。  遠く離れたフランスでは革命の意気が揚がる。ロシアは積極的に蝦夷地への進出を進めており、遠くない未来ヨーロッパの船が日本にやってくることが予想された。  時ここに至り、老中松平定信は消極的であるとはいえ、外国への備えを画策する。  大権現家康公の秘中の秘、後に『蘭癖高家』と呼ばれる旗本を登用することを―― ※挿絵はAI作成です。

戦艦大和、時空往復激闘戦記!(おーぷん2ちゃんねるSS出展)

俊也
SF
1945年4月、敗色濃厚の日本海軍戦艦、大和は残りわずかな艦隊と共に二度と還れぬ最後の決戦に赴く。 だが、その途上、謎の天変地異に巻き込まれ、大和一隻のみが遥かな未来、令和の日本へと転送されてしまい…。 また、おーぷん2ちゃんねるにいわゆるSS形式で投稿したものですので読みづらい面もあるかもですが、お付き合いいただけますと幸いです。 姉妹作「新訳零戦戦記」「信長2030」 共々宜しくお願い致しますm(_ _)m

信濃の大空

ypaaaaaaa
歴史・時代
空母信濃、それは大和型3番艦として建造されたものの戦術の変化により空母に改装され、一度も戦わず沈んだ巨艦である。 そんな信濃がもし、マリアナ沖海戦に間に合っていたらその後はどうなっていただろう。 この小説はそんな妄想を書き綴ったものです! 前作同じく、こんなことがあったらいいなと思いながら読んでいただけると幸いです!

処理中です...