8 / 62
消息不明
しおりを挟む
しばらくして……。
「春日殿。御無沙汰しております。」
春日信達「おっ!もしや其方は……依田殿?」
依田信蕃「如何にも。」
春日信達「依田殿は確か……。」
信濃国佐久郡の拠点を構える先方衆依田信蕃の事。彼は武田が滅亡するまで対徳川最前線の駿河国田中城を守り抜いた人物。
依田信蕃「其方の言いたい事はわかっている。世間では死んだ事になっておる。便りを出す事が出来ず申し訳無かった。」
春日信達「いえいえ。御無事で何よりであります。ところで依田殿はこれまでどちらに?」
依田信蕃「私か?私は徳川様に匿われていた。
『このまま(当時織田信長が居た)諏訪に行ってはならぬ。織田信長様の誘いは嘘だ。』
と。」
真田昌幸「その後大変だったんだぞ。信長様がたいそう怒られて。其方が潜伏している可能性のある場所を全て調べさせられたのだからな。」
依田信蕃「申し訳御座いませんでした。」
真田昌幸「事が事だけに仕方の無い事。ただ1つ言わせてもらっても良いか?」
依田信蕃「何でありましょうか?」
真田昌幸「最後の最後まで武田方として戦ったのは依田殿。其方だけでは無い。私もそうであったし、春日も同様。にも関わらず信長様は我らを許し、このように活動する事が出来ている。徳川様が其方を引き留めた時……。」
織田信長は本当に依田信蕃を亡き者にしようとしていたのか?
春日信達「それだけ徳川様は其方を欲していた証拠とも言えるのだが。」
依田信蕃「徳川様に騙されている?」
春日信達「勿論、良い意味で。である。」
真田昌幸「で。彼がこれまで何処に居たか知っているか?」
春日信達「何処でありますか?」
真田昌幸「依田に縁のある場所だ。」
春日信達「……流石に田中城ではありませんよね?」
真田昌幸「そこでは無い。依田殿。教えてやってくれ。」
依田信蕃「はい。徳川様が私を匿うべく用意していただいた場所。それは……。」
二俣城近郊。
春日信達「へぇ~~~。徳川様が依田殿に苦しめられたあの二俣の地を依田殿に提供されたのでありますか?」
依田信蕃「(徳川家家臣)大久保忠世様始め皆様に良くしていただいています。」
春日信達「何よりであります。しかし……。」
依田信蕃「如何為されましたか?」
春日信達「信長様が其方を諏訪に呼び出した本当の理由はわからぬ。徳川様の忠告の通りであったのか定かでは無い。しかしその後、信長様がお怒りになられたのは事実。ここ砥石は織田家家臣滝川様の管轄地。織田は其方の事を許したわけでは無い。斯様な立場である其方依田信蕃が何故ここに居るのか?」
「春日殿。御無沙汰しております。」
春日信達「おっ!もしや其方は……依田殿?」
依田信蕃「如何にも。」
春日信達「依田殿は確か……。」
信濃国佐久郡の拠点を構える先方衆依田信蕃の事。彼は武田が滅亡するまで対徳川最前線の駿河国田中城を守り抜いた人物。
依田信蕃「其方の言いたい事はわかっている。世間では死んだ事になっておる。便りを出す事が出来ず申し訳無かった。」
春日信達「いえいえ。御無事で何よりであります。ところで依田殿はこれまでどちらに?」
依田信蕃「私か?私は徳川様に匿われていた。
『このまま(当時織田信長が居た)諏訪に行ってはならぬ。織田信長様の誘いは嘘だ。』
と。」
真田昌幸「その後大変だったんだぞ。信長様がたいそう怒られて。其方が潜伏している可能性のある場所を全て調べさせられたのだからな。」
依田信蕃「申し訳御座いませんでした。」
真田昌幸「事が事だけに仕方の無い事。ただ1つ言わせてもらっても良いか?」
依田信蕃「何でありましょうか?」
真田昌幸「最後の最後まで武田方として戦ったのは依田殿。其方だけでは無い。私もそうであったし、春日も同様。にも関わらず信長様は我らを許し、このように活動する事が出来ている。徳川様が其方を引き留めた時……。」
織田信長は本当に依田信蕃を亡き者にしようとしていたのか?
春日信達「それだけ徳川様は其方を欲していた証拠とも言えるのだが。」
依田信蕃「徳川様に騙されている?」
春日信達「勿論、良い意味で。である。」
真田昌幸「で。彼がこれまで何処に居たか知っているか?」
春日信達「何処でありますか?」
真田昌幸「依田に縁のある場所だ。」
春日信達「……流石に田中城ではありませんよね?」
真田昌幸「そこでは無い。依田殿。教えてやってくれ。」
依田信蕃「はい。徳川様が私を匿うべく用意していただいた場所。それは……。」
二俣城近郊。
春日信達「へぇ~~~。徳川様が依田殿に苦しめられたあの二俣の地を依田殿に提供されたのでありますか?」
依田信蕃「(徳川家家臣)大久保忠世様始め皆様に良くしていただいています。」
春日信達「何よりであります。しかし……。」
依田信蕃「如何為されましたか?」
春日信達「信長様が其方を諏訪に呼び出した本当の理由はわからぬ。徳川様の忠告の通りであったのか定かでは無い。しかしその後、信長様がお怒りになられたのは事実。ここ砥石は織田家家臣滝川様の管轄地。織田は其方の事を許したわけでは無い。斯様な立場である其方依田信蕃が何故ここに居るのか?」
11
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
高天神攻略の祝宴でしこたま飲まされた武田勝頼。翌朝、事の顛末を聞いた勝頼が採った行動とは?
俣彦
ファンタジー
高天神城攻略の祝宴が開かれた翌朝。武田勝頼が採った行動により、これまで疎遠となっていた武田四天王との関係が修復。一致団結し向かった先は長篠城。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
大日本帝国、アラスカを購入して無双する
雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。
大日本帝国VS全世界、ここに開幕!
※架空の日本史・世界史です。
※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。
※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。
織田信長IF… 天下統一再び!!
華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。
この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。
主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。
※この物語はフィクションです。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
浅井長政は織田信長に忠誠を誓う
ピコサイクス
歴史・時代
1570年5月24日、織田信長は朝倉義景を攻めるため越後に侵攻した。その時浅井長政は婚姻関係の織田家か古くから関係ある朝倉家どちらの味方をするか迷っていた。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる