上 下
7 / 62

旧領

しおりを挟む
真田信幸「滝川様は如何為されますか?」

真田昌幸「『(上野国に)留まる。』

と仰っていた。」

真田信幸「越後の事を気にされて?」

真田昌幸「その通り。森様が川中島を離れられ、柴田様も兵を退かれた。共に信長様信忠様を亡き者にした謀叛者明智光秀を討つためである。これは仕方の無い事である。しかし信濃と上野の事を考えた場合、上策では無い。上杉とは敵対関係にあり、敵は臨戦態勢を整えている。ここで帰るわけには行かないとの判断である。」

春日信達「……助かります。」

真田昌幸「ただ滝川様が川中島も面倒を見るとなると、どうしても兵を分散させなければならなくなる。加えて滝川様は川中島の事を全く知らない。上野国にしても入ってから日が浅い。当地の者の助けは必要不可欠な状況にある。そこで……。」



 上野国と越後国との境の警備を買って出る事にした。



真田昌幸「越後から上野に入る際、必ず通る事になる沼田は私が長年管理していた場所。越後からの進入路は全て把握している。加えて滝川様が沼田から越後を伺った際、その山の険しさから攻略が難しい事を実体験されている。上野から越後を狙う事は難しい。もし越後を狙うのであれば……。」



 川中島が打って付け。



真田昌幸「結果。私がかつて管轄していた土地の全てを私に委ねられた。上野の状況が落ち着き次第、滝川様は川中島に向かわれる。その時は……。」

春日信達「森様の時同様。全ての情報をお伝えする所存であります。」

真田昌幸「川中島は上杉も知っている土地である事に加え、村上国清(山浦景国)やつい先日森様に謀叛を起こした芋川親正等本貫地が川中島の者も多数越後に居る。難しい戦いになる事は避けて通る事は出来ない。」

春日信達「わかりました。どんな苦境に立たされようとも滝川様を御支えします。」

真田昌幸「それを聞いて安心した。信幸!」

真田信幸「はい。」

真田昌幸「今すぐ滝川様の所に向かい、春日殿の言葉を伝えてくれ。」

真田信幸「わかりました。」

真田昌幸「そう言えば春日殿。」

春日信達「如何為されましたか?」

真田昌幸「もう少しすると珍しい人物がここを訪ねる事になっていますが?」

春日信達「急に何でありますか。珍しい人物とは?」

真田昌幸「その人物に其方の事を話した所

『是非お会いしたい。』

と言っていましたが、如何為されますか?」

春日信達「真田殿が薦める人物に間違いはありません。その方が私に会いたいのでありましたら断る理由はありません。お願いします。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

高天神攻略の祝宴でしこたま飲まされた武田勝頼。翌朝、事の顛末を聞いた勝頼が採った行動とは?

俣彦
ファンタジー
高天神城攻略の祝宴が開かれた翌朝。武田勝頼が採った行動により、これまで疎遠となっていた武田四天王との関係が修復。一致団結し向かった先は長篠城。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

大日本帝国、アラスカを購入して無双する

雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。 大日本帝国VS全世界、ここに開幕! ※架空の日本史・世界史です。 ※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。 ※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

浅井長政は織田信長に忠誠を誓う

ピコサイクス
歴史・時代
1570年5月24日、織田信長は朝倉義景を攻めるため越後に侵攻した。その時浅井長政は婚姻関係の織田家か古くから関係ある朝倉家どちらの味方をするか迷っていた。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...