上 下
6 / 62

解放

しおりを挟む
 出浦盛清。森長可が預かっていた川中島国衆の人質を伴い海津城に帰還。



春日信達「ありがとうございました。」

出浦盛清「無事役目を果たす事が出来ました。」

春日信達「森様は何か仰っていましたか?」

出浦盛清「春日殿の配慮に感謝していました。これは森様から

『春日殿に。』

とお預かりしたものであります。」

春日信達「この脇差は?」

出浦盛清「森様が所望されていたものであります。」

春日信達「私は何もしていません。これは出浦殿が。」

出浦盛清「いえ。私は私でいただいています。」

春日信達「……わかりました。出浦殿。」

出浦盛清「如何されました?」

春日信達「今後の事なのでありますが……。」

出浦盛清「森様より

『引き続き川中島の事を頼む。春日殿を助けるように。』

と指示されています。」

春日信達「お願い出来ますでしょうか?」

出浦盛清「問題ありません。それにこの事は……。」



 真田昌幸からも承っています。



春日信達「……そうでありましたか。それを聞いて安心しました。」

出浦盛清「我らが単独で上杉と戦うのは難しいのが実情であります。出来る事の全てを動員しなければなりません。こうしている間にも景勝が兵を動かす恐れがあります。急ぎ真田殿に連絡し、今後の対応を練りましょう。」



 砥石城。



真田信幸「これはこれは春日様。」

春日信達「其方の父君のおかげで無事役目を果たす事が出来た。」

出浦盛清「信幸。元気にしていたか?」

真田信幸「はい。」

春日信達「ところで父君は?」

真田信幸「あの後、上野国に入られました。もうすぐ戻るとの連絡を受けています。」



 しばらくして。



真田昌幸「春日殿。森様の件、見事でありました。」

春日信達「いえ私は真田殿の策をそのまま実行しただけであります。」

真田昌幸「いや。そうでは無い。駿河における其方の働きと武田に殉じようとした忠誠の心が皆を動かしたのである。」

春日信達「後忘れてはならないのが……。」



 亡き父である春日虎綱の功績。



真田昌幸「私がこうして居る事が出来るのも、其方の父君の助けがあったからである。」

出浦盛清「私もであります。」

真田昌幸「出浦殿。危険な役目を背負わせてしまい申し訳無かった。」

出浦盛清「いえ。森様に少しでも恩をお返しする事が出来て何よりでありました。」

春日信達「ところで真田殿は上野に赴かれていたとお聞きしましたが。」

真田昌幸「うむ。其方と別れた後、そのまま(上野国)厩橋の滝川様の所に足を運んだ。そして信長様信忠様の件をお伝えした。少し落ち着いたので戻って来た所である。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

高天神攻略の祝宴でしこたま飲まされた武田勝頼。翌朝、事の顛末を聞いた勝頼が採った行動とは?

俣彦
ファンタジー
高天神城攻略の祝宴が開かれた翌朝。武田勝頼が採った行動により、これまで疎遠となっていた武田四天王との関係が修復。一致団結し向かった先は長篠城。

明日の海

山本五十六の孫
歴史・時代
4月7日、天一号作戦の下、大和は坊ノ岬沖海戦を行う。多数の爆撃や魚雷が大和を襲う。そして、一発の爆弾が弾薬庫に被弾し、大和は乗組員と共に轟沈する、はずだった。しかし大和は2015年、戦後70年の世へとタイムスリップしてしまう。大和は現代の艦艇、航空機、そして日本国に翻弄される。そしてそんな中、中国が尖閣諸島への攻撃を行い、その動乱に艦長の江熊たちと共に大和も巻き込まれていく。 世界最大の戦艦と呼ばれた戦艦と、艦長江熊をはじめとした乗組員が現代と戦う、逆ジパング的なストーリー←これを言って良かったのか 主な登場人物 艦長 江熊 副長兼砲雷長 尾崎 船務長 須田 航海長 嶋田 機関長 池田

鄧禹

橘誠治
歴史・時代
再掲になります。 約二千年前、古代中国初の長期統一王朝・前漢を簒奪して誕生した新帝国。 だが新も短命に終わると、群雄割拠の乱世に突入。 挫折と成功を繰り返しながら後漢帝国を建国する光武帝・劉秀の若き軍師・鄧禹の物語。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 歴史小説家では宮城谷昌光さんや司馬遼太郎さんが好きです。 歴史上の人物のことを知るにはやっぱり物語がある方が覚えやすい。 上記のお二人の他にもいろんな作家さんや、大和和紀さんの「あさきゆめみし」に代表される漫画家さんにぼくもたくさんお世話になりました。 ぼくは特に古代中国史が好きなので題材はそこに求めることが多いですが、その恩返しの気持ちも込めて、自分もいろんな人に、あまり詳しく知られていない歴史上の人物について物語を通して伝えてゆきたい。 そんな風に思いながら書いています。

GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲

俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。 今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。 「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」 その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。 当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!? 姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。 共に 第8回歴史時代小説参加しました!

いや、婿を選べって言われても。むしろ俺が立候補したいんだが。

SHO
歴史・時代
時は戦国末期。小田原北条氏が豊臣秀吉に敗れ、新たに徳川家康が関八州へ国替えとなった頃のお話。 伊豆国の離れ小島に、弥五郎という一人の身寄りのない少年がおりました。その少年は名刀ばかりを打つ事で有名な刀匠に拾われ、弟子として厳しく、それは厳しく、途轍もなく厳しく育てられました。 そんな少年も齢十五になりまして、師匠より独立するよう言い渡され、島を追い出されてしまいます。 さて、この先の少年の運命やいかに? 剣術、そして恋が融合した痛快エンタメ時代劇、今開幕にございます! *この作品に出てくる人物は、一部実在した人物やエピソードをモチーフにしていますが、モチーフにしているだけで史実とは異なります。空想時代活劇ですから! *この作品はノベルアップ+様に掲載中の、「いや、婿を選定しろって言われても。だが断る!」を改題、改稿を経たものです。

旧式戦艦はつせ

古井論理
歴史・時代
真珠湾攻撃を行う前に機動艦隊が発見されてしまい、結果的に太平洋戦争を回避した日本であったが軍備は軍縮条約によって制限され、日本国に国名を変更し民主政治を取り入れたあとも締め付けが厳しい日々が続いている世界。東南アジアの元列強植民地が独立した大国・マカスネシア連邦と同盟を結んだ日本だが、果たして復権の日は来るのであろうか。ロマンと知略のIF戦記。

蘭癖高家

八島唯
歴史・時代
 一八世紀末、日本では浅間山が大噴火をおこし天明の大飢饉が発生する。当時の権力者田沼意次は一〇代将軍家治の急死とともに失脚し、その後松平定信が老中首座に就任する。  遠く離れたフランスでは革命の意気が揚がる。ロシアは積極的に蝦夷地への進出を進めており、遠くない未来ヨーロッパの船が日本にやってくることが予想された。  時ここに至り、老中松平定信は消極的であるとはいえ、外国への備えを画策する。  大権現家康公の秘中の秘、後に『蘭癖高家』と呼ばれる旗本を登用することを―― ※挿絵はAI作成です。

戦艦大和、時空往復激闘戦記!(おーぷん2ちゃんねるSS出展)

俊也
SF
1945年4月、敗色濃厚の日本海軍戦艦、大和は残りわずかな艦隊と共に二度と還れぬ最後の決戦に赴く。 だが、その途上、謎の天変地異に巻き込まれ、大和一隻のみが遥かな未来、令和の日本へと転送されてしまい…。 また、おーぷん2ちゃんねるにいわゆるSS形式で投稿したものですので読みづらい面もあるかもですが、お付き合いいただけますと幸いです。 姉妹作「新訳零戦戦記」「信長2030」 共々宜しくお願い致しますm(_ _)m

処理中です...