上 下
468 / 625

崩壊

しおりを挟む
真田幸隆「しかし殿。」

私(村上義清)「どうした?」

真田幸隆「氏康は悩む間もなく、いくさは終わりを迎える事になると思います。」



 武田義信が駿河に入るや否や、穴山信君を通じ武田家への帰参を求める駿河東部の今川家臣が殺到。その中には重臣格とも言える葛山氏元や朝比奈信置らも今川氏真を裏切る事態に発展。武田義信による調略の手は、今川中枢部にまで及んでいたのでありました。



私(村上義清)「見限られていたって事?」

真田幸隆「義元逝去してからの10年。三河及び天竜川以西の失陥。今の領域保持に貢献している武田義信並びに北条氏康の許可無しに徳川家康との和睦を結んでしまった事。そして武田北条の敵であります上杉輝虎と連携を図った事。駿河東部の今川家臣からしたら堪ったものではありません。」

私(村上義清)「最も安全であった場所が、最も危険な場所に変わってしまったんだからな。」

真田幸隆「その矢面に立たなければならなくなった。武田と北条は弱くはありません。強い相手であります。味方であれば頼もしい事この上ない両者でありますが、彼らが自領に襲い掛かって来る事は目に見えています。何故なら氏真に領土を拡大する意志が無いからであります。いくさの場所は間違いなく駿河。今回氏真を見限った連中の権益であります。

 そして義信が駿河に入って来ました。氏真はどのような行動を採用したでしょうか?囲まれている大宮城を真っ先に救いに行ったでしょうか?違います。駿府を守るのに最適な薩埵山に陣を構える事を決断しました。大宮城はどうするのでしょうか?氏康に頼む事にしました。

 そうなった時、今川の家臣はどのような行動に打って出るでしょうか?義信から誘いの話が舞い込んでいます。それも厚遇で以て。答えは1つしかありません。それが今の駿河であります。」



 相次ぐ家臣の裏切りにより、薩埵山での防衛を断念した今川氏真。そこを越えられてしまうと駿府まで敵を防ぐ事が出来る場所はありません。家臣の裏切りは更に続きます。駿河の中で氏真に味方する者はほとんど皆無の状態。ここに留まっていても武田に蹂躙される事が目に見えている。翌日。今川氏真は駿府を後にするのでありました。



真田幸隆「うちもそうでありますが、前線が破られたら次の境目となる国人が敵に対処する事になっています。ただどうでしょう?準備していますかね?」

私(村上義清)「自分の権益がいくさの場所になるとは思っていないよな。」

真田幸隆「そうですよね。ただそれでも主君がしっかりしていれば、この係争沙汰が収まれば主従関係が続く事になりますので一所懸命に働く事になります。」

私(村上義清)「そうで無かった場合は……。」

真田幸隆「自分の生き残りを賭け、主人に刃を向ける事になります。それは仕方の無い事であります。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

転生幼女は幸せを得る。

泡沫 ウィルベル
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!? 今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ

karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。 しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。

音爽(ネソウ)
ファンタジー
見た目だけはユルフワ女子のハウラナ・ゼベール王女。 その容姿のせいで誤解され、男達には尻軽の都合の良い女と見られ、婦女子たちに嫌われていた。 16歳になったハウラナは大帝国ダネスゲート皇帝の末席側室として娶られた、体の良い人質だった。 後宮内で弱小国の王女は冷遇を受けるが……。

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

築地シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

処理中です...