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輸出品

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 草津温泉と言う富の源泉を有している。と言う事は、当然それを奪おうと考える悪い輩も存在……。



私(村上義清)「湯本を別の場所に移すなりして全てを自分の物にしようとは考えなかったのか?」

真田幸隆「武力を行使すれば可能である事は否定しません。ただ源泉の管理などの専門的な技術ないし知識の蓄積及びそれに掛かる費用。人員などを踏まえますと彼らに任せた方が無難と言う判断に至りました。ですので湯治客の数はこちらで確認はしますが、湯銭以外のそこで落としたお金につきましては全て彼らの実入りとなるようにしました。」

私(村上義清)「帳簿も見ない?」

真田幸隆「そうなります。そして彼らにしか出来ない事がほかにもありまして。」

私(村上義清)「何だ?申してみよ。」

真田幸隆「はい。これは場合によっては大きな富に変わるかもしれません。」



 取り出したのは硫黄。



真田幸隆「輝虎に確認しましたところ、以前程ではありませんが大陸で火薬を作る際、重宝されているそうであります。『以前ほどでは』と申し上げましたのは競争相手の増加。主に琉球の参入が大きかった事が1つ。そしてもう1つの理由としまして、大陸。とりわけ明が求めている物の変化が挙げられます。それは銀であります。それでも(朝鮮)半島や南蛮(東南亜細亜)での需要はまだまだ大きく、勿論明でも売れる産品であります。(その中継地となる)博多に行く輝虎の船に硫黄を載せる事は可能と言う見解を頂戴しています。その硫黄の鉱床と産出するための方法を湯本は熟知しています。ただ彼らにはそれを換金する術がありません。」

私(村上義清)「その仲介をうちがする?」

真田幸隆「そうなります。」

私(村上義清)「何故湯本は輝虎には言わなかったのだ?」

真田幸隆「言っていたとは思われます。ただあそこから越後に持って行くのは難しかったのが実情では無かったかと。それにあそこは温泉がありますので、硫黄は必要では無かったのでありましょう。」

私(村上義清)「臨時収入ぐらいに考えていると言う解釈で良いのか?」

真田幸隆「はい。ただ人の手が増えれば増える程費用が乗すことになりますので、うち(尼ヶ淵)を通すよりは(少しでも海に近い)殿の所に運び、越後へ向かったほうが宜しいかと思いまして今回紹介した次第であります。」

私(村上義清)「と言う事は、これに関してお前は一銭も無くても構わない?」

真田幸隆「私と湯本との関係性があって初めて成り立った話でありますので。」

私(村上義清)「……わかった。配分を決めるか。」

真田幸隆「御意。」
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