162 / 625
飢饉
しおりを挟む
真田幸隆「正直な話。憲政の本貫地であります上野を氏康から奪い返すことが出来れば成功と言えば成功であります。」
私(村上義清)「そこに憲政と関東公方となる関白を置き、北条高広など家臣に守らせつつ何かあったら自分が駆け付ければよい。」
真田幸隆「すぐ横が越後ですから。」
私(村上義清)「ただあそこまで兵力が膨れ上がってしまうと、欲が出て来るのはある意味仕方が無いことかもしれないな。」
真田幸隆「武蔵北部の成田に太田も加わり、関東公方足利義氏も小田原に避難しています。」
私(村上義清)「それに対して氏康はどうしている。」
真田幸隆「基本的には引き籠り。」
私(村上義清)「好き放題やられたい放題。」
真田幸隆「いえ。景虎が困るようなことをこまめに行っています。」
私(村上義清)「寝込みや食事中を狙ったかと思えば、景虎が動き出す前には城に戻る。」
真田幸隆「そんな感じですね。」
私(村上義清)「それに対し景虎は。」
真田幸隆「目的が小田原城の北条氏康氏政親子を倒すことと、関東管領に就任することでありますので、途中の城攻めに時間を掛ける暇は無かったようであります。それに。」
私(村上義清)「それに?」
真田幸隆「関東に景虎の兵糧となるようなものがありませんので。」
私(村上義清)「どう言うことだ。」
真田幸隆「飢饉があったでしょう。」
長尾景虎が関東入りする2年前。関東地方で大飢饉が発生。発生させた責任と、徳政令などを出すことへのけじめとして北条氏康は隠居し、家督を氏政に譲ったのでありました。
私(村上義清)「本当に無いのか?」
真田幸隆「いえ。景虎が攻めることが出来ない山奥に隠していると思われます。それにこの徳政令と同時に氏康は伊豆、相模。それに北部を除く武蔵の検地を実施しています。」
私(村上義清)「景虎が相模内で兵糧を徴収することが出来ないようにしてある。」
真田幸隆「はい。あとは城の守りを固めることにより、景虎が干上がるのを待つだけ。」
私(村上義清)「そうなって来ると、あの10万の兵が邪魔になるな。」
真田幸隆「はい。加えてその大半は独立した領主の兵であり、景虎ではなく関東管領のために集まった兵であります。」
私(村上義清)「数にモノを言わせての攻城戦に用いることは出来ない。」
真田幸隆「当然のことであります。また小田原城がえげつないことになっていますので。」
私(村上義清)「上野の物資では。」
真田幸隆「賄うことは出来ません。越後から運んでもしんどいかと。」
私(村上義清)「10万の兵を養う物資を全て陸路で。更にあの山を越えてとなると……。」
私(村上義清)「そこに憲政と関東公方となる関白を置き、北条高広など家臣に守らせつつ何かあったら自分が駆け付ければよい。」
真田幸隆「すぐ横が越後ですから。」
私(村上義清)「ただあそこまで兵力が膨れ上がってしまうと、欲が出て来るのはある意味仕方が無いことかもしれないな。」
真田幸隆「武蔵北部の成田に太田も加わり、関東公方足利義氏も小田原に避難しています。」
私(村上義清)「それに対して氏康はどうしている。」
真田幸隆「基本的には引き籠り。」
私(村上義清)「好き放題やられたい放題。」
真田幸隆「いえ。景虎が困るようなことをこまめに行っています。」
私(村上義清)「寝込みや食事中を狙ったかと思えば、景虎が動き出す前には城に戻る。」
真田幸隆「そんな感じですね。」
私(村上義清)「それに対し景虎は。」
真田幸隆「目的が小田原城の北条氏康氏政親子を倒すことと、関東管領に就任することでありますので、途中の城攻めに時間を掛ける暇は無かったようであります。それに。」
私(村上義清)「それに?」
真田幸隆「関東に景虎の兵糧となるようなものがありませんので。」
私(村上義清)「どう言うことだ。」
真田幸隆「飢饉があったでしょう。」
長尾景虎が関東入りする2年前。関東地方で大飢饉が発生。発生させた責任と、徳政令などを出すことへのけじめとして北条氏康は隠居し、家督を氏政に譲ったのでありました。
私(村上義清)「本当に無いのか?」
真田幸隆「いえ。景虎が攻めることが出来ない山奥に隠していると思われます。それにこの徳政令と同時に氏康は伊豆、相模。それに北部を除く武蔵の検地を実施しています。」
私(村上義清)「景虎が相模内で兵糧を徴収することが出来ないようにしてある。」
真田幸隆「はい。あとは城の守りを固めることにより、景虎が干上がるのを待つだけ。」
私(村上義清)「そうなって来ると、あの10万の兵が邪魔になるな。」
真田幸隆「はい。加えてその大半は独立した領主の兵であり、景虎ではなく関東管領のために集まった兵であります。」
私(村上義清)「数にモノを言わせての攻城戦に用いることは出来ない。」
真田幸隆「当然のことであります。また小田原城がえげつないことになっていますので。」
私(村上義清)「上野の物資では。」
真田幸隆「賄うことは出来ません。越後から運んでもしんどいかと。」
私(村上義清)「10万の兵を養う物資を全て陸路で。更にあの山を越えてとなると……。」
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
婚約破棄?貴方程度がわたくしと結婚出来ると本気で思ったの?
三条桜子
恋愛
王都に久しぶりにやって来た。楽しみにしていた舞踏会で突如、婚約破棄を突きつけられた。腕に女性を抱いてる。ん?その子、誰?わたくしがいじめたですって?わたくしなら、そんな平民殺しちゃうわ。ふふふ。ねえ?本気で貴方程度がわたくしと結婚出来ると思っていたの?可笑しい! ◎短いお話。文字数も少なく読みやすいかと思います。全6話。
イラスト/ノーコピーライトガール
みんなで転生〜チートな従魔と普通の私でほのぼの異世界生活〜
ノデミチ
ファンタジー
西門 愛衣楽、19歳。花の短大生。
年明けの誕生日も近いのに、未だ就活中。
そんな彼女の癒しは3匹のペット達。
シベリアンハスキーのコロ。
カナリアのカナ。
キバラガメのキィ。
犬と小鳥は、元は父のペットだったけど、母が出て行ってから父は変わってしまった…。
ペットの世話もせず、それどころか働く意欲も失い酒に溺れて…。
挙句に無理心中しようとして家に火を付けて焼け死んで。
アイラもペット達も焼け死んでしまう。
それを不憫に思った異世界の神が、自らの世界へ招き入れる。せっかくだからとペット達も一緒に。
何故かペット達がチートな力を持って…。
アイラは只の幼女になって…。
そんな彼女達のほのぼの異世界生活。
テイマー物 第3弾。
カクヨムでも公開中。
【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部
山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。
これからどうかよろしくお願い致します!
ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
『スキルの素』を3つ選べって言うけど、早いもの勝ちで余りモノしか残っていませんでした。※チートスキルを生み出してバカにした奴らを見返します
ヒゲ抜き地蔵
ファンタジー
【書籍化に伴う掲載終了について】詳しくは近況ボードをご参照下さい。
ある日、まったく知らない空間で目覚めた300人の集団は、「スキルの素を3つ選べ」と謎の声を聞いた。
制限時間は10分。まさかの早いもの勝ちだった。
「鑑定」、「合成」、「錬成」、「癒やし」
チートの匂いがするスキルの素は、あっという間に取られていった。
そんな中、どうしても『スキルの素』の違和感が気になるタクミは、あるアイデアに従って、時間ギリギリで余りモノの中からスキルの素を選んだ。
その後、異世界に転生したタクミは余りモノの『スキルの素』で、世界の法則を変えていく。
その大胆な発想に人々は驚嘆し、やがて彼は人間とエルフ、ドワーフと魔族の勢力図を変えていく。
この男がどんなスキルを使うのか。
ひとつだけ確かなことは、タクミが選択した『スキルの素』は世界を変えられる能力だったということだ。
※【同時掲載】カクヨム様、小説家になろう様
中の御所奮闘記~大賢者が異世界転生
小狐丸
ファンタジー
高校の歴史教師だった男が、生徒達と異世界召喚されてしまう。だが、彼は生徒達の巻き添え召喚だった。それでも勇者である生徒をサポートする為、彼は奮闘する。異世界を生き抜き、やがて大賢者と呼ばれる様になった男は、大往生で寿命を終える。日本に帰ることを最後まで夢みて。
次に男が目を覚ますと、彼は日本で赤ちゃんとして生まれ変わっていた。ただ平成日本ではなく、天文年間であったが……
※作者の創作を多分に含みます。史実を忠実に描いている訳ではありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる