上 下
91 / 625

露払い

しおりを挟む
その頃、長尾景虎が京から仕入れた大量の種子島と玉薬の一部が山を越え、山内上杉憲政が籠る沼田城に景虎の家臣、北条高広と共に運び込まれたのでありました。沼田城は、高さ70mにも及ぶ崖のみならず東西南北の内、北を除く三方が川に守られた要害。その三方向からでしか攻めることが出来ない北条氏康にとってこの城は、ただでさえ厄介な代物であるところに遠くから狙うことの出来る未知なる兵器種子島が到来。



春日虎綱「なぜ北条(高広)を?」

真田幸隆「まず言えるのは種子島を使いこなすことが出来る人員を確保しなければならないので。」

私(村上義清)「下手すると暴発するし、弾が無くなったら何にも使えない武器なんでね……。」

春日虎綱「それでうち(昔の勤め先である武田)とのいくさの時、殿は醜態を晒すことになったんですね。」

私(村上義清)「……かさぶたを剝がそうとしないでくれる……。」

真田幸隆「それに湿気などに弱いため、管理出来る人間も居ないとなりませんので。」

私(村上義清)「ほかに言えることとなると……険しい山道とは言え、今は上野と越後を行き来することが出来てはいるけれども、もう少しすると雪が降って来る。そうなってしまうと人も物も動かすことが出来ない。全て自弁でやりくりしなければならなくなる。今、憲政が上野の中で補給することが出来る場所は沼田の城にあるもののみ。それだけでは雪が融けるまでの間、氏康の攻撃を凌ぎ切ることは不可能。景虎はまだ京に居る。越後の本隊が上野に入るのは難しい。もしかすると来年になってしまうかもしれない。それならば北条高広を送り込んで失地回復を狙おうでは無いか。」

春日虎綱「……となりますと北条(高広)も……。」

真田幸隆「憲政同様、冬に越後からの補給を期待することが出来ないから必死にならざるを得なくなります。」

私(村上義清)「籠っているのが、景虎が継ぐことになった関東管領の憲政であることを考えると北条(高広)の役割は、単なる『軍目付では無い』と言うこと。」

真田幸隆「沼田城の守りは勿論のこと。自活することが出来るよう少なくとも上野北部の奪還を求められていると思われます。」

私(村上義清)「出来れば裏切り者の業正の駆逐。更に南進し、氏康を武蔵に追いやることが出来れば。と言うところになるのかな。」

真田幸隆「景虎から『関東管領として入る私と、先代の山内上杉憲政様に迷惑を掛けぬよう抜かりなく準備をしておいてくれ。』と言ったところでしょうか。」



 北条高広が報われる日は、……来るのでしょうか……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部

山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。 これからどうかよろしくお願い致します! ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

みんなで転生〜チートな従魔と普通の私でほのぼの異世界生活〜

ノデミチ
ファンタジー
西門 愛衣楽、19歳。花の短大生。 年明けの誕生日も近いのに、未だ就活中。 そんな彼女の癒しは3匹のペット達。 シベリアンハスキーのコロ。 カナリアのカナ。 キバラガメのキィ。 犬と小鳥は、元は父のペットだったけど、母が出て行ってから父は変わってしまった…。 ペットの世話もせず、それどころか働く意欲も失い酒に溺れて…。 挙句に無理心中しようとして家に火を付けて焼け死んで。 アイラもペット達も焼け死んでしまう。 それを不憫に思った異世界の神が、自らの世界へ招き入れる。せっかくだからとペット達も一緒に。 何故かペット達がチートな力を持って…。 アイラは只の幼女になって…。 そんな彼女達のほのぼの異世界生活。 テイマー物 第3弾。 カクヨムでも公開中。

独裁者・武田信玄

いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます! 平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。 『事実は小説よりも奇なり』 この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに…… 歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。 過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。 【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い 【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形 【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人 【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある 【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。 (前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)

中の御所奮闘記~大賢者が異世界転生

小狐丸
ファンタジー
 高校の歴史教師だった男が、生徒達と異世界召喚されてしまう。だが、彼は生徒達の巻き添え召喚だった。それでも勇者である生徒をサポートする為、彼は奮闘する。異世界を生き抜き、やがて大賢者と呼ばれる様になった男は、大往生で寿命を終える。日本に帰ることを最後まで夢みて。  次に男が目を覚ますと、彼は日本で赤ちゃんとして生まれ変わっていた。ただ平成日本ではなく、天文年間であったが…… ※作者の創作を多分に含みます。史実を忠実に描いている訳ではありません。

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

今川義元から無慈悲な要求をされた戸田康光。よくよく聞いてみると悪い話では無い。ならばこれを活かし、少しだけ歴史を動かして見せます。

俣彦
ファンタジー
栃木県宇都宮市にある旧家に眠る「門外不出」の巻物。 その冒頭に認められた文言。それは…… 「私は家康を尾張に売ってはいない。」 この巻物を手に取った少年に問い掛けて来たのは 500年前にのちの徳川家康を織田家に売り払った張本人。 戸田康光その人であった。 本編は第10話。 1546年 「今橋城明け渡し要求」 の場面から始まります。

『スキルの素』を3つ選べって言うけど、早いもの勝ちで余りモノしか残っていませんでした。※チートスキルを生み出してバカにした奴らを見返します

ヒゲ抜き地蔵
ファンタジー
【書籍化に伴う掲載終了について】詳しくは近況ボードをご参照下さい。 ある日、まったく知らない空間で目覚めた300人の集団は、「スキルの素を3つ選べ」と謎の声を聞いた。 制限時間は10分。まさかの早いもの勝ちだった。 「鑑定」、「合成」、「錬成」、「癒やし」 チートの匂いがするスキルの素は、あっという間に取られていった。 そんな中、どうしても『スキルの素』の違和感が気になるタクミは、あるアイデアに従って、時間ギリギリで余りモノの中からスキルの素を選んだ。 その後、異世界に転生したタクミは余りモノの『スキルの素』で、世界の法則を変えていく。 その大胆な発想に人々は驚嘆し、やがて彼は人間とエルフ、ドワーフと魔族の勢力図を変えていく。 この男がどんなスキルを使うのか。 ひとつだけ確かなことは、タクミが選択した『スキルの素』は世界を変えられる能力だったということだ。 ※【同時掲載】カクヨム様、小説家になろう様

処理中です...