旅行先で目を覚ましたら村上義清になっていた私。そんな私を支えることになったのがアンチ代表の真田幸隆だった。

防備

早速物見を出す武田晴信。そこでもたらされた情報は。



武田晴信「誰も居らぬのか。」

山本勘助「はい。」

武田晴信「どこに兵を隠しているかわからぬ。用心いたせ。」



　しばらくして……。



山本勘助「どうやら民の全てが砥石城に籠っているそうであります。」



　砥石城は元々は真田氏の城。東太郎山の尾根を用い築かれたこの城は、真田が興った真田郷はもとより、上田郷も一望することが出来る山城。



武田晴信「我らの動きが丸見えになってしまっている。……と言うことだな。」

山本勘助「はい。」



　武田晴信が本陣を構える国分寺跡は南は千曲川。東は神川に囲まれた場所。加えて北に位置する砥石城に民が籠っている。と言うことは砥石城の中には。



武田晴信「村上の主力が居ても……。」

板垣信方「不思議なことではございませぬな。」



　そして西には尼ヶ淵の要害。



甘利虎泰「四方を敵に取り囲まれているとも言えますな。」

武田晴信「そうだな……。にしても。」

山本勘助「なんでありましょうか。」

武田晴信「尼ヶ淵の防備が甘過ぎやしないか。」

甘利虎泰「本当に下るだけですな。」

板垣信方「見た限りでありますが、さして障害となるものも見受けられませぬ。」

武田晴信「それに我らが神川を渡り陣を構えるまでの間、村上に動きは無かった。」

板垣信方「砥石城の防備に全てを託しているのであろうか。」

甘利虎泰「我らが砥石城攻めを行っている背後を尼ヶ淵の兵が挟み撃ちすることを狙おうとしているのか？」

板垣信方「にしても丸見えであろう。」

甘利虎泰「確かに。」

武田晴信「先に尼ヶ淵を攻めてみるのは？」

山本勘助「ただここまで無防備過ぎるのも……。」

武田晴信「気になることがあるのか。」

山本勘助「はい。」

武田晴信「申してみよ。」

山本勘助「ここから尼ヶ淵まで下る一方。と言うことはつまり。戻る時は上りになります。」

板垣信方「突き抜けてしまえばよいであろう。」

山本勘助「確かにその通りなのでありますが、こちらが尼ヶ淵を攻めている最中に砥石城から兵を出して来ましたら敵は下りで我らは上り。地の利を奪われることになります。」

武田晴信「……そうなると堅固ではあるが、砥石を先に攻めるべき。と……。」

山本勘助「はい。尼ヶ淵からの動きはこちらから丸見えでありますので対応することは可能かと。」

板垣信方「では私めが先陣となり、砥石城へ迫ることに……。」

甘利虎泰「西への備えは私が。」

武田晴信「わかった。ただ深追いをしてはならぬ。村上のこと。何もしていないとは到底思えぬ。」

板垣信方、甘利虎泰「わかり申した。」



　翌朝。武田晴信本陣のはるか西方から武田の者とは異なる人物が本陣へと近づいてくるのでありました。