17 / 625
和睦の条件
しおりを挟む
私(村上義清)「しかしよくあれだけバラバラな関東の勢力を憲政はまとめたものだな。」
これまで関東は古河公方と山内、扇谷の両上杉の三者が対立。その間隙を縫って台頭したのが北条氏。駿河東部を皮切りに、伊豆から相模。そして武蔵へと進出する中、父氏綱が亡くなり跡を継いだのが北条氏康。この機会を逃してはならぬと山内上杉憲政は、これまで対立していた扇谷上杉と和睦。更には氏康の妹を婿に迎えていた古河公方足利晴氏を支援し陣営に引き込むことに成功。北条を武蔵から追い落とすべく挙兵。この動きを見た関東の諸勢力が上杉側に加勢。北条綱成が守る河越城を8万もの大軍で包囲したのでありました。
真田幸隆「山内上杉憲政の動きは関東に留まらず駿河の今川義元とも連携。」
私(村上義清)「氏康は北と西から挟み撃ちにされたのか。ところで今川が参戦した理由は?」
真田幸隆「はい。今川と北条氏康の父氏綱との関係はもともとは良好でありました。ところが今川家の当主に義元が収まった際、これまで今川と対立関係にあった武田信虎の娘を正室に迎え同盟を結びます。その武田と敵対関係にあったのが北条氏綱。氏綱は当然激怒。駿河へと侵攻し、北条創業の地とも言える富士川以東を占領。」
私(村上義清)「以後も対立が続いていた。」
真田幸隆「はい。それに目を付けた憲政は、今川義元に参戦を打診。義元は承諾し、富士川以東の奪還を目指し挙兵。この動きに加わって来たのが義元の同盟者である甲斐の武田晴信。」
私(村上義清)「相模も狙われる危険性が生じたのか。」
真田幸隆「はい。ただ武田晴信と北条氏康はその前年に和解済み。」
私(村上義清)「その武田と今川は同盟関係。」
真田幸隆「武田との伝手を使い氏康は西の脅威を取り除くべく晴信に仲裁を依頼したのでありました。」
私(村上義清)「今川は応じたのか。」
真田幸隆「はい。ただそれには条件がありました。」
私(村上義清)「まぁそうなるわな。その条件は?」
真田幸隆「奪われた富士川以東の返還でありました。」
私(村上義清)「これを呑まないと……。」
真田幸隆「あくまで今川の協力者として振舞っていた晴信が、本格的に北条攻略へと動くことになります。」
私(村上義清)「表向きは『元の状態に戻しさえすれば良いですよ。』と言いながら。」
真田幸隆「そうなりますね。」
私(村上義清)「きついな。きついけれども『占領した土地だから。』と割り切ることも出来ないわけでは無い。」
真田幸隆「氏康はこの条件を受け入れ、西の脅威を取り除くことに成功。一方、武田晴信は甲斐東部の北条並びに南部の今川に対し、それぞれ貸しを作ると共に安全を確保。信濃進出を本格化出来る態勢が整ったのでありました。」
私(村上義清)「……荒れて欲しかったな……。ところで幸隆。」
真田幸隆「なんでしょうか。」
私(村上義清)「私と武田晴信がいくさとなり、仮に。仮の話であるが、こちらの状況が不利となり、晴信と和睦を結ぼうとした場合。条件は何になると思う。」
真田幸隆「それは勿論。殿の首に決まっているでしょう。」
それを和睦とは言わない。
これまで関東は古河公方と山内、扇谷の両上杉の三者が対立。その間隙を縫って台頭したのが北条氏。駿河東部を皮切りに、伊豆から相模。そして武蔵へと進出する中、父氏綱が亡くなり跡を継いだのが北条氏康。この機会を逃してはならぬと山内上杉憲政は、これまで対立していた扇谷上杉と和睦。更には氏康の妹を婿に迎えていた古河公方足利晴氏を支援し陣営に引き込むことに成功。北条を武蔵から追い落とすべく挙兵。この動きを見た関東の諸勢力が上杉側に加勢。北条綱成が守る河越城を8万もの大軍で包囲したのでありました。
真田幸隆「山内上杉憲政の動きは関東に留まらず駿河の今川義元とも連携。」
私(村上義清)「氏康は北と西から挟み撃ちにされたのか。ところで今川が参戦した理由は?」
真田幸隆「はい。今川と北条氏康の父氏綱との関係はもともとは良好でありました。ところが今川家の当主に義元が収まった際、これまで今川と対立関係にあった武田信虎の娘を正室に迎え同盟を結びます。その武田と敵対関係にあったのが北条氏綱。氏綱は当然激怒。駿河へと侵攻し、北条創業の地とも言える富士川以東を占領。」
私(村上義清)「以後も対立が続いていた。」
真田幸隆「はい。それに目を付けた憲政は、今川義元に参戦を打診。義元は承諾し、富士川以東の奪還を目指し挙兵。この動きに加わって来たのが義元の同盟者である甲斐の武田晴信。」
私(村上義清)「相模も狙われる危険性が生じたのか。」
真田幸隆「はい。ただ武田晴信と北条氏康はその前年に和解済み。」
私(村上義清)「その武田と今川は同盟関係。」
真田幸隆「武田との伝手を使い氏康は西の脅威を取り除くべく晴信に仲裁を依頼したのでありました。」
私(村上義清)「今川は応じたのか。」
真田幸隆「はい。ただそれには条件がありました。」
私(村上義清)「まぁそうなるわな。その条件は?」
真田幸隆「奪われた富士川以東の返還でありました。」
私(村上義清)「これを呑まないと……。」
真田幸隆「あくまで今川の協力者として振舞っていた晴信が、本格的に北条攻略へと動くことになります。」
私(村上義清)「表向きは『元の状態に戻しさえすれば良いですよ。』と言いながら。」
真田幸隆「そうなりますね。」
私(村上義清)「きついな。きついけれども『占領した土地だから。』と割り切ることも出来ないわけでは無い。」
真田幸隆「氏康はこの条件を受け入れ、西の脅威を取り除くことに成功。一方、武田晴信は甲斐東部の北条並びに南部の今川に対し、それぞれ貸しを作ると共に安全を確保。信濃進出を本格化出来る態勢が整ったのでありました。」
私(村上義清)「……荒れて欲しかったな……。ところで幸隆。」
真田幸隆「なんでしょうか。」
私(村上義清)「私と武田晴信がいくさとなり、仮に。仮の話であるが、こちらの状況が不利となり、晴信と和睦を結ぼうとした場合。条件は何になると思う。」
真田幸隆「それは勿論。殿の首に決まっているでしょう。」
それを和睦とは言わない。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
婚約破棄?貴方程度がわたくしと結婚出来ると本気で思ったの?
三条桜子
恋愛
王都に久しぶりにやって来た。楽しみにしていた舞踏会で突如、婚約破棄を突きつけられた。腕に女性を抱いてる。ん?その子、誰?わたくしがいじめたですって?わたくしなら、そんな平民殺しちゃうわ。ふふふ。ねえ?本気で貴方程度がわたくしと結婚出来ると思っていたの?可笑しい! ◎短いお話。文字数も少なく読みやすいかと思います。全6話。
イラスト/ノーコピーライトガール
平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。
モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。
日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。
今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。
そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。
特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。
みんなで転生〜チートな従魔と普通の私でほのぼの異世界生活〜
ノデミチ
ファンタジー
西門 愛衣楽、19歳。花の短大生。
年明けの誕生日も近いのに、未だ就活中。
そんな彼女の癒しは3匹のペット達。
シベリアンハスキーのコロ。
カナリアのカナ。
キバラガメのキィ。
犬と小鳥は、元は父のペットだったけど、母が出て行ってから父は変わってしまった…。
ペットの世話もせず、それどころか働く意欲も失い酒に溺れて…。
挙句に無理心中しようとして家に火を付けて焼け死んで。
アイラもペット達も焼け死んでしまう。
それを不憫に思った異世界の神が、自らの世界へ招き入れる。せっかくだからとペット達も一緒に。
何故かペット達がチートな力を持って…。
アイラは只の幼女になって…。
そんな彼女達のほのぼの異世界生活。
テイマー物 第3弾。
カクヨムでも公開中。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部
山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。
これからどうかよろしくお願い致します!
ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。
名前を書くとお漏らしさせることが出来るノートを拾ったのでイジメてくる女子に復讐します。ついでにアイドルとかも漏らさせてやりたい放題します
カルラ アンジェリ
ファンタジー
平凡な高校生暁 大地は陰キャな性格も手伝って女子からイジメられていた。
そんな毎日に鬱憤が溜まっていたが相手が女子では暴力でやり返すことも出来ず苦しんでいた大地はある日一冊のノートを拾う。
それはお漏らしノートという物でこれに名前を書くと対象を自在にお漏らしさせることが出来るというのだ。
これを使い主人公はいじめっ子女子たちに復讐を開始する。
更にそれがきっかけで元からあったお漏らしフェチの素養は高まりアイドルも漏らさせていきやりたい放題することに。
ネット上ではこの怪事件が何らかの超常現象の力と話題になりそれを失禁王から略してシンと呼び一部から奉られることになる。
しかしその変態行為を許さない美少女名探偵が現れシンの正体を暴くことを誓い……
これはそんな一人の変態男と美少女名探偵の頭脳戦とお漏らしを楽しむ物語。
『スキルの素』を3つ選べって言うけど、早いもの勝ちで余りモノしか残っていませんでした。※チートスキルを生み出してバカにした奴らを見返します
ヒゲ抜き地蔵
ファンタジー
【書籍化に伴う掲載終了について】詳しくは近況ボードをご参照下さい。
ある日、まったく知らない空間で目覚めた300人の集団は、「スキルの素を3つ選べ」と謎の声を聞いた。
制限時間は10分。まさかの早いもの勝ちだった。
「鑑定」、「合成」、「錬成」、「癒やし」
チートの匂いがするスキルの素は、あっという間に取られていった。
そんな中、どうしても『スキルの素』の違和感が気になるタクミは、あるアイデアに従って、時間ギリギリで余りモノの中からスキルの素を選んだ。
その後、異世界に転生したタクミは余りモノの『スキルの素』で、世界の法則を変えていく。
その大胆な発想に人々は驚嘆し、やがて彼は人間とエルフ、ドワーフと魔族の勢力図を変えていく。
この男がどんなスキルを使うのか。
ひとつだけ確かなことは、タクミが選択した『スキルの素』は世界を変えられる能力だったということだ。
※【同時掲載】カクヨム様、小説家になろう様
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる