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変報

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 魚津城を守る一人一人にこれまでの忠義と武勲を称える手紙を送った上杉景勝は、春日山近くにまで侵入して来た森長可への対処のため帰国。救出される見込みが無い事を悟った魚津城の守将13名が6月3日自刃した事により落城。この報せは瞬く間に越後国内に広まり、上杉方に衝撃が走ったのでありました。
「後は内から崩れるのを待つばかり。」
とほくそ笑む越後国二本木の森長可と魚津城を陥落させた柴田以下織田勢。そんな喜びに浮かれている織田方に新たな情報が。それは……。
「織田信長信忠親子が明智光秀の謀叛により行方不明。」
との報せ。行方不明となっている理由は亡骸が発見されていないだけであり、状況証拠を集める限り生存の可能性は皆無。織田家の当主2名を同時に失った動揺は魚津城内を駆け巡り、各々の本拠地を目指し四散。折角攻め落とした魚津城を手放す事態に陥ったのでありました。しかし魚津城の織田方はまだ良かった。何故なら魚津城より西は安定した織田領であったため、彼らの行く手を阻む者が居なかったから。北陸の織田方の武将は皆無事本貫地に帰還を果たしたのでありました。一方……。

「これは不味いぞ……。」
と思案に暮れる人物が。その人物の名は勿論この方。森長可。春日山城の目と鼻の先にある二本木に陣取っていた森長可。もし総攻撃になった際、真っ先に敵の本拠地を狙える好位置に陣取っていたのでありましたが、これが良い効果を齎すのは
(自分が優位な時だけ。)
当主は居ない。西から迫り来る味方の大軍も無い。越後国内も織田に攻め込まれる恐れが無いから、保身のため味方を裏切る必要も無い。目の前に居る者全てが敵。……ばかりでなく、背後の川中島に入ってまだ3ヶ月。それも敵対した者を撫で斬りにして他の者を黙らせたに過ぎない。織田信長逝去となった今、森長可に従う理由は何も無い。安全な美濃までには距離がある。このままでは挟み撃ちに遭い、命を落とす事になりかねない。……どうする?

「殿!」
森長可:落ち着け。今は動くで無い。背中を見せたら上杉が追って来る。兵の数に差は無い。陣に不備は無い。様子を見る。敵が打って出て来たら返り討ちにするのみ。

 しばらく様子を伺うも上杉方に動き無し。これを確認した森長可は陣を払い川中島へ戻る事を決断。川中島に探りを入れると案の定、不穏な動きが。この報を受け長可は、海津城内の人質を逃がさぬよう厳命する使者を出し、彼らの帰りを待って安全な道を前進。その途中……。
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