美濃に戻ろうとする森長可を真田昌幸が誘致したら

最後のいくさから

　川中島の拠点海津城に入った森長可は法規の発布並びに川中島の国人に対し所領の安堵を行う等統治に乗り出したのでありましたが……。

　信濃国飯綱。
芋川親正：森の言っている事。信用出来るか？
島津忠直：……全く。
芋川親正：だよな……。

　芋川親正は、信濃国飯綱の国人で対上杉の最前線を担当して来た人物。拠点は若宮城。島津忠直は、信濃国の長沼城で武田信玄と戦うも敗れ。大倉城に移った後、上杉謙信の傘下に入り川中島の戦いに従軍。その後、武田と上杉が和睦したのに伴い旧領の長沼城に復帰した人物。
　去就をはっきりさせない両者に対し森長可は進退を明らかにするよう指示。その内容とは？
「上杉景勝討伐の兵を出せ。」
上杉景勝と武田は同盟関係であった事に加え、島津忠直にとって景勝は主君。到底受け入れる事が出来る内容では無い。それに加え……。

芋川親正：上杉殿より書状が届いておる。
島津忠直：「憎き森長可を追い払え。さすれば其方らに川中島を与えよう。」
芋川親正：如何する？
島津忠直：私に断る理由はありません。
芋川親正：愚問だったな。
島津忠直：はい。そう言う芋川殿は？
芋川親正：このまま織田の軍門に降るのは面白くは無い。私は此度のいくさに関わる事が出来ぬまま敗れる事になってしまった。正直、駿河に甲斐。そして南信濃の連中の不甲斐なさに憤っている。ろくにいくさもせず。逃亡したり降伏したり。情けない限りである。ここで一矢報いなければ武田は未来永劫。物笑いの種にされてしまう。是が非でも避けねばならぬ。尤も……今回勝った所で武田が戻って来る事は無いがな……。まぁ織田にくれてやるくらいなら、（同盟関係にあった）上杉に渡した方が。
島津忠直：「まし。」
と言う事でありますか？
芋川親正：私の本心は……。
島津忠直：口外致しませぬ。
芋川親正：かたじけない。

　芋川親正は信濃国の一向宗徒や反織田を掲げる国人衆に働き掛けを行うと共に、廃城となっていた大倉城を改修。そこを拠点に構え一斉に蜂起。その数８０００。対する森長可の兵力は５０００。兵の数、地の利共芋川方にある。さしもの森長可も苦戦を強いられる事になる。
……と思われるのでありましたが、芋川親正等反織田方には致命的な欠点が潜んでいたのでありました。それは……。

　川中島で最後のいくさが繰り広げられたのは１８年前の事。その後も川中島は対上杉最前線であったため、芋川親正が他の戦場に出る事は皆無。これに４年前の和睦に伴い防衛機能も低下。この事に芋川は気付いていないのでありました。