気が付いたら石田三成になっていた私。島左近なる人物に日付を尋ねたら慶長5年の9月14日。場所は大垣城。て事は明日は関ヶ原?

俣彦

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プロローグ

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(トントントントン。トントントントン。)
「あ~~あ。サウジの金満サッカークラブが、間違って俺と契約してくんないかな?」
(トントントントン。トントントントン。)
「『自身を高める。』と考えたらイングランドでプレーするのも悪くは無いか。」
(トントントントン。トントントントン。)
「て言うか。」
(トントントントン。トントントントン。)
「学校の授業以外で、サッカーをやった事なんか無い。」
(トントントントン。トントントントン。)
「『ボールを持ったら、とにかく思いっきり遠くへ。可能な限り外に向けて蹴り出せ!』が唯一の教えだったな。」
(トントントントン。トントントントン。)
「自陣のゴール前でパスを繋ぐなんて。とてもとても。」
(トントントントン。トントントントン。)
「さっきから何『トントン』言っているかって?」

(トントントントン。トントントントン。)
「頭皮に刺激を与えているんだよ。」
(トントントントン。トントントントン。)
「前髪が無いわけでは無いが、薄くなっている事は否定しない。」
(トントントントン。トントントントン。)
「気付いてからでは遅いからな。」

そこへ
「こんにちは。宅配便です。」
「は~~い。今行きます。」

「おぉ届いた届いた。
『何が?』って。新しい発毛グッズに決まっておろう。
なになに?『これを使えば発毛の悩みの全てから解放されます。』とな。
怪しいな……。
ただ物は試し。駄目だったら高い授業料と割り切れば良い。
それに内服タイプでは無いので身体に害を及ぼす恐れも低い。
今回も打撃タイプ。説明書には
『何処そこに当てるのが効果的。』
と丁寧に部位も記されている。
では早速試してみるとするか……。」

「せ~~の。」

(グサッ!!)

「……グサッ?」



 気が付いたら私は椅子に座っていた。頭に手をやる。血は出ていないようだ。
「グサッ!」
と言う音が鳴った瞬間。
『発毛の悩みから解放される。』
と謳った理由は……寿命が尽きるから。と一瞬。頭を過ったような過らなかったような。良かった。どうやら生きているらしい。安堵した私は、少し休もうと背もたれに身体を預けた瞬間。転倒。

「あれ!?背もたれは?」
頭の痛みの影響か。少し重く感じる身体を何とか起こした所、
「何だこれは?」
私が普段使っているゲーミングチェアとは似ても似つかぬ簡素な椅子が目の前に。
「やはり傷を負って入院していたのか?いや。入院しているのならば、ベッドに横たわっているハズ。ここにあるのは……。」
X状に組まれた折り畳み式の椅子。傷病者の症状を和らげるような代物では無い。一体全体何が起こっているのだ?身体はどうなっているのだろう?手は動くし、足も問題は無い。息も出来る。ただ1つ気になった事がある。それは……。

 身に着けている物。全てが甲冑。

 普段私が身に着けているのは、サイズだけで買い揃えた上下のブランドがバラバラな服装。それよりは統一感はある。その事は否定しない。ただ……。

 甲冑を購入した記憶が私には無い。
「何かがおかしい。私の身に良からぬ事が発生した事に間違いは無い。」
そう確信した私は、原因となった
「グサッ!」
と音がした頭部に改めて手をやったその時。

「……前髪が無い。」
確かに私の前髪は薄かった。その事は否定しない。しかし全く無かったわけでは無いし、生え際が後退していたわけでも無かった。見栄では無い。事実である。ただ毛量が心許なかったのもまた事実。故に私は、その毛量を維持するべく。手取りの1割を育毛や発毛に惜しみなく投下し続けて来たのだ。その1割を投資し続けて来た前髪が……この世を去ってしまった。



「殿!如何為されましたか?」
 私の異変に気付いたのか一人の人物が私の目の前に現れた。私と同じく甲冑に身を纏っている。
 ……そうか。ここは私の家では無く、私が普段勤務している蝦夷松前城おもてなし武将隊の職場。配達時間の都合で、職場に配達を依頼していたのか……。

(発毛グッズを?)

 そうであるならば、私の前髪が無くなっているのも合点がいく。カツラを被っているのであるから。安心した。私も前髪も無事であったのだ。良かった。ここは私の職場であるのだから、蠣崎季広を演じなければならない。

「悪い夢を見ていたようである。」
「驚きましたよ。殿が斯様な声を上げる事等ありませぬから。」

 そう。私が演じているのは冷静なキャラ。

「すまぬ。すまぬ。申し訳無かった。」

 松前藩おもてなし武将隊は武将2名に姫1名。目の前に居るのが男であるのだから、彼の役目は松前慶広。蠣崎季広の息子に違いない。

「ところで慶広。今日の予定を教えてはくれぬか?」
「慶広?いったい誰の事でありますか?」
「慶広は其方の事であろう?」
「いえ、違いまする。」
「父を誑かすでは無い。」
「いえ、誑かして等おりませぬ。」

 ん!?

「其方は慶広では無い?」
「はい。殿。あまりの激務に、お疲れではありませぬか?」

 松前おもてなし武将隊で男のメンバーは他には居ない。そう言えば……慶広は、目の前に居る人物程屈強では無い。そうなると私は……。

「私は今、カツラを被っているよな?」
「いえ、殿。全て地毛でありますが……。」

 地毛?

「えっ!?私の前髪は?」
「殿が元服されてから何十年経っているのでありますか?あぁ殿。幼少期の頃が夢に出て来たのでありますね。」

 元服?

「1つ尋ねても良いか?」
「何なりと。」
「其方はいったい誰なのだ?」
「えっ!私の事。お忘れでありますか?」
「すまぬ。」
「島左近清興に御座います。」

 ……島左近。
 島左近は畿内で活躍した武将。ここ松前に所縁のある人物では無い。故におもてなし武将にはラインナップされていない。

「もう1つ聞いてよいか?」
「はい。」

 ……私はいったい誰なのだ?

「ん!?殿の名は石田三成に御座います。」

 ……石田三成?

「殿がお疲れな事。重々承知しています。しかし今は踏ん張り時。斯様な状態では、家臣も困ってしまいますぞ。」

 どうやらこの世を去ったのは……前髪だけでは無かったらしい。



 島左近を名乗る人物から、石田三成である事を知らされた私。彼が言っている事は本当なのであろうか?それともまだ夢の続きなのか?もし夢であるのであれば、感覚は無いハズ。試しに目の前の自称島左近に……。いや止めておこう。もし私が石田三成である事が事実であり、目の前の人物が島左近であった場合……。

 無傷では済まされない。

 石田三成が生きた時代は安土桃山。21世紀の現在程医療は発達しておらず。最後は全て。祈りに託していた時代。斯様な時に、安易に殴られるのは宜しくない。勿論これは21世紀の今も同じなのではあるのだが……。

 つねってみるか?

 ……感覚がある。覚悟を決めた私は

石田三成「今はいつである?」
島左近「えっ?」
石田三成「其方の言う通り。私は疲れ切っておった。一度全てを整理したい。頼む。」
島左近「わかりました。今は慶長5年の9月14日であります。」

 慶長5年は西暦1600年。それで日付は9月14日……。

石田三成「ここはいったい何処である?」
島左近「大垣城であります。」

 大垣城は今の岐阜県西部にある城。

石田三成「私は何故ここ大垣に居るのだ?」
島左近「江戸から京に向け兵を進めている徳川家康と相対すためであります。」

 徳川家康。と言う事は……。

石田三成「福島正則や池田輝政は?」
島左近「大垣城北西にある赤坂に居ます。」
石田三成「家康も?」
島左近「いえ。まだ到着していません。」

 関ヶ原の戦いは確か翌9月15日。このいくさに石田三成は敗れ、近江潜伏中に捕らえられ。京にある六条河原で敢え無い最期を迎える事になった。つまり、私は……この運命を辿るために石田三成に転生した。
 いや、違う。石田三成の無念を晴らすために、ここにやって来たのだ。幸い。まだ徳川家康は赤坂に到着していない。となれば……。

 打つ手はまだ残っている。

石田三成「左近!」
島左近「殿!急に大きな声を出さないで下され。驚いてしまいましたぞ。」
石田三成「すまぬ。左近よ。」
島左近「はい。」
石田三成「このいくさ。必ず勝ってみせるぞ!」
島左近「元より承知であります。」
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