16 / 112
厄介
しおりを挟む
太原雪斎からの要望を受けた戸田康光は、今橋城に程近い居城二連木城に移動。
戸田康光「……厄介な事になったぞ……。」
(長男)戸田尭光「父上。如何為されましたか?」
戸田康光「前、普門寺で出した要望。……全て通った。」
戸田光忠「それは何よりであります。」
(次男)戸田宣光「では何故厄介な事になられたのでありますか?」
戸田康光「広忠の倅を駿河に送り届ける件。我らにお鉢が回って来た。」
戸田尭光「えっ!?広忠の居城岡崎から駿河なら、そのまま陸を東に進めば済む話ではありませんか?」
戸田康光「『牧野領を進ませるわけにはいかない。』
と言って来たそうな。」
戸田宣光「うちに松平。そして牧野は皆今川の陣営になったとは言え、松平の拠点の1つ長沢城が牧野の手に落ちたのはつい先達ての事。無理はありません。」
戸田光忠「今川が運べば済む話では無いかと……。」
戸田康光「『言い出しっぺはお前だろ。』
と言われてしまっては、返す言葉が無かった。」
戸田光忠「申し訳ない。」
戸田宣光「何故叔父上が頭を下げるのでありますか?」
戸田光忠「提案したのは……忠次なんだよ。」
戸田宣光「忠次殿が。でありますか?」
戸田康光「『今後、織田と今川は岡崎に安祥。更には刈谷。そして尾張でいくさになる事になります。岡崎の重要度は高まるばかり。しかし松平家中が割れています。前の妻は水野信元の妹であり、広忠の倅はその子供。今川側に付く者と織田側に付く者が割れた時、広忠の倅が利用される恐れがあります。これを避けるためには、少なくとも倅を避難させる必要があります。』」
戸田光忠「『加えて今の岡崎では落ち着いて育てる事が出来る環境にはありません。安全な場所で、じっくり教育を施す事が出来る場所に松平の後継者となる竹千代様をお育てした方が今川にとっても得なのでは無いでしょうか?』」
戸田尭光「『その打ってつけの場所が、今川の本拠地である駿河であります。』」
戸田宣光「確かに忠次の言う通りでありますね。」
戸田光忠「しかし厄介な役目を仰せつかったものであります。」
戸田尭光「我らの権益は豊川と朝倉川の南。一応宝飯郡内の海沿いを押さえてはいますが、彼の地は元々牧野の権益。広忠の了解を得る事は難しい。」
戸田宣光「となりますと我らが制海権を握っている三河湾を使う事になりますか……。」
戸田尭光「海まで連れて行くのも我らの役目になりますか?」
戸田康光「いや。流石にそれは無い。西郡までは広忠が責任を以て送り届けると聞いている。」
戸田宣光「そこから海路で駿河まで送り届けますか……。」
戸田康光「……厄介な事になったぞ……。」
(長男)戸田尭光「父上。如何為されましたか?」
戸田康光「前、普門寺で出した要望。……全て通った。」
戸田光忠「それは何よりであります。」
(次男)戸田宣光「では何故厄介な事になられたのでありますか?」
戸田康光「広忠の倅を駿河に送り届ける件。我らにお鉢が回って来た。」
戸田尭光「えっ!?広忠の居城岡崎から駿河なら、そのまま陸を東に進めば済む話ではありませんか?」
戸田康光「『牧野領を進ませるわけにはいかない。』
と言って来たそうな。」
戸田宣光「うちに松平。そして牧野は皆今川の陣営になったとは言え、松平の拠点の1つ長沢城が牧野の手に落ちたのはつい先達ての事。無理はありません。」
戸田光忠「今川が運べば済む話では無いかと……。」
戸田康光「『言い出しっぺはお前だろ。』
と言われてしまっては、返す言葉が無かった。」
戸田光忠「申し訳ない。」
戸田宣光「何故叔父上が頭を下げるのでありますか?」
戸田光忠「提案したのは……忠次なんだよ。」
戸田宣光「忠次殿が。でありますか?」
戸田康光「『今後、織田と今川は岡崎に安祥。更には刈谷。そして尾張でいくさになる事になります。岡崎の重要度は高まるばかり。しかし松平家中が割れています。前の妻は水野信元の妹であり、広忠の倅はその子供。今川側に付く者と織田側に付く者が割れた時、広忠の倅が利用される恐れがあります。これを避けるためには、少なくとも倅を避難させる必要があります。』」
戸田光忠「『加えて今の岡崎では落ち着いて育てる事が出来る環境にはありません。安全な場所で、じっくり教育を施す事が出来る場所に松平の後継者となる竹千代様をお育てした方が今川にとっても得なのでは無いでしょうか?』」
戸田尭光「『その打ってつけの場所が、今川の本拠地である駿河であります。』」
戸田宣光「確かに忠次の言う通りでありますね。」
戸田光忠「しかし厄介な役目を仰せつかったものであります。」
戸田尭光「我らの権益は豊川と朝倉川の南。一応宝飯郡内の海沿いを押さえてはいますが、彼の地は元々牧野の権益。広忠の了解を得る事は難しい。」
戸田宣光「となりますと我らが制海権を握っている三河湾を使う事になりますか……。」
戸田尭光「海まで連れて行くのも我らの役目になりますか?」
戸田康光「いや。流石にそれは無い。西郡までは広忠が責任を以て送り届けると聞いている。」
戸田宣光「そこから海路で駿河まで送り届けますか……。」
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説

関ヶ原に敗れ、再起を図るべく息子が居る津軽に潜り込む石田三成。ここで藩を富ませ、打倒家康を誓うものの……あるのはコメばかり……。さてどうする
俣彦
ファンタジー
関ヶ原の戦いに敗れるも、徳川の追っ手から逃れ、
先に息子が脱出していた津軽に潜り込む事に成功した石田三成。
打倒家康を心に誓い、藩の富国に取り組もうとするも……。

転生一九三六〜戦いたくない八人の若者たち〜
紫 和春
SF
二〇二〇年の現代から、一九三六年の世界に転生した八人の若者たち。彼らはスマートフォンでつながっている。
第二次世界大戦直前の緊張感が高まった世界で、彼ら彼女らはどのように歴史を改変していくのか。

家庭菜園物語
コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。
その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。
異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~
橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。
記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。
これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語
※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
滝川家の人びと
卯花月影
歴史・時代
故郷、甲賀で騒動を起こし、国を追われるようにして出奔した
若き日の滝川一益と滝川義太夫、
尾張に流れ着いた二人は織田信長に会い、織田家の一員として
天下布武の一役を担う。二人をとりまく織田家の人々のそれぞれの思惑が
からみ、紆余曲折しながらも一益がたどり着く先はどこなのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる