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 1546年。少年は戸田忠次になっていた。理由はわからないが、とにかく戸田忠次になっていた。

戸田康光「忠次。」
戸田忠次「はい。」
戸田康光「本当にこれで良かったのか?(戸田康光の嫡男の)尭光や(同じく次男の)宣光。発言権を持ちたいのであれば、其方の父光忠になる事も可能であったと聞いているが?」
戸田忠次「今、家中は今川と戦う意志で固まりつつあります。それを和睦へと引っ繰り返す作業をしなければなりません。その際、尭光様や宣光様。そして父である光忠に私がなり、弱気の発言をするのは今川との内通を疑われる事になってしまいます。ならば私は元服したばかりで発言権の無い忠次になり、軍議で無い場所で殿と擦り合わせをした方が好都合なのでは無いか?と。今、決定権を持っているのは殿なのでありますから。それに……。」
戸田康光「何だ?申してみよ。」
戸田忠次「まだ若く、長生き出来る事がわかっているのが魅力であります。」

 戸田康光は1547年に討ち死に。長男の尭光は1550年まで田原城を守るもその後は行方不明。次男の宣光は1568年に死去。そして忠次の父光忠は1560年の桶狭間の戦い以降も活動しているが、忠次よりは早くに亡くなっています。そして少年が選択した戸田忠次が亡くなったのは1597年。齢は当時としては長生きの部類に入る67歳で老衰。

戸田康光「身体に無理をさせなければ、余命を更に伸ばす事が可能になる?」
戸田忠次「そう言う事であります。そのためにも大事なのが……。」

 ストレスを溜めない生活。

戸田忠次「であります。何より心強いのが……。」

 戸田康光が21世紀までの記憶を1546年に持って来ている事。

戸田康光「史実通りに進んでも、家を残す事が出来る。」
戸田忠次「ただそうなりますと、今居る家中は大変な目に遭わされる事になってしまいます。是が非でも回避しなければなりません。しかしあまりにも変え過ぎてしまいますのも良くはありません。」
戸田康光「私が見て来ていない世界を歩まなければならなくなってしまうからな。」
戸田忠次「はい。」
戸田康光「まずやらなければならない事は……。」
戸田忠次「今川との一戦を覚悟している家中を如何にして和平へと誘導するのか?」
戸田康光「これについて宣光は問題無い。彼には今川に付くよう伝えている。問題は私と共に今川と戦う決意を固めている尭光の方だな……。特に彼は海を管轄している故知多を狙う水野への対応がある。その水野が水面下で今川と繋がっているのが……わかっているからな……。」
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