上 下
27 / 49

苗木城

しおりを挟む
 苗木城。
 今の岐阜県東部中津川市にあった苗木城は織田と武田が相争った城で、この時苗木を治めていたのが遠山友忠。彼は両属の地であったこの地にあって、早い段階から織田方として活動。織田信長の姪を正室に迎え、木曽義昌の織田方転身にも貢献した人物。このような経歴を持っている事もあり、京で政変が発生した現在も織田方を貫き通していると思われるのでありましたが……。

遠山友忠:木曽様。如何為されましたか?
木曽義昌:落ち着いて聞いてくれ。……森に我らの策略がばれてしまった。
遠山友忠:えっ!?と言う事は木曽様は森に……。
木曽義昌:いや。いくさになったわけでは無い。それに森は其方の事を疑ってはいない。
遠山友忠:では何故苗木に?
木曽義昌:息子を人質に取られてしまった。
遠山友忠:引き渡してしまったのでありますか?
木曽義昌:いや、そうでは無い。私が森を討ち果たすため、城を出ていた時に狙われてしまった……。福島に入る日を偽って来よった。息子の身の安全と引き換えに取引を持ち掛けられた。
「金山までの道案内をせよ。途中の国衆との話を付けよ。さもなくば……。」
遠山友忠:事の仔細を織田家に訴え出る?
木曽義昌:いや、その件については不問にすると言って来た。私が心配しているのは……。
遠山友忠:岩松丸様の安全でありますね?
木曽義昌:頼む。ここは堪えてくれ。
遠山友忠:もとより私の役目は、木曽様と森が戦い。森を取り逃がした時に動く事であります。木曽様と森が相対さない。森の目的が金山に戻るだけなのでありましたら私に戦う理由はありません。
木曽義昌:かたじけない。
遠山友忠:しかし……。
木曽義昌:如何されましたか?
遠山友忠:木曽様は織田直属の国持大名。森は同じ国持大名ではあるが織田信忠様の与力。立場は同格ないし若干木曽様の方が上位。そのような立場にある森が木曽様の御子息を人質に取るのはやり過ぎでは無いか?と。その事は森自身わかっているはずであります。……そう考えました場合、

 ……木曽義昌が抵抗を試みた場合、森長可は戦う事が出来るのか?岩丸松を処分する事が出来るのだろうか?

木曽義昌:森は違う。
遠山友忠:何故そう思われるのでありますか?
木曽義昌:森の一行を見たのだが、そこに人質の姿は無かった。
遠山友忠:川中島の国衆の人質が居て然るべきでは?
木曽義昌:それが1人も居なかった。それにこれはまだ未確認の情報ではあるのだが。

 ……深志城近辺に身元不明の亡骸が、放置されているそうな……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今川義元から無慈悲な要求をされた戸田康光。よくよく聞いてみると悪い話では無い。ならばこれを活かし、少しだけ歴史を動かして見せます。

俣彦
ファンタジー
栃木県宇都宮市にある旧家に眠る「門外不出」の巻物。 その冒頭に認められた文言。それは…… 「私は家康を尾張に売ってはいない。」 この巻物を手に取った少年に問い掛けて来たのは 500年前にのちの徳川家康を織田家に売り払った張本人。 戸田康光その人であった。 本編は第10話。 1546年 「今橋城明け渡し要求」 の場面から始まります。

戦艦大和、時空往復激闘戦記!(おーぷん2ちゃんねるSS出展)

俊也
SF
1945年4月、敗色濃厚の日本海軍戦艦、大和は残りわずかな艦隊と共に二度と還れぬ最後の決戦に赴く。 だが、その途上、謎の天変地異に巻き込まれ、大和一隻のみが遥かな未来、令和の日本へと転送されてしまい…。 また、おーぷん2ちゃんねるにいわゆるSS形式で投稿したものですので読みづらい面もあるかもですが、お付き合いいただけますと幸いです。 姉妹作「新訳零戦戦記」「信長2030」 共々宜しくお願い致しますm(_ _)m

旅行先で目を覚ましたら武田勝頼になっていた私。どうやら自分が当主らしい。そこまでわかって不安に覚える事が1つ。それは今私が居るのは天正何年?

俣彦
ファンタジー
旅行先で目を覚ましたら武田勝頼になった私。 武田家の当主として歴史を覆すべく、父信玄時代の同僚と共に生き残りを図る物語。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部

山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。 これからどうかよろしくお願い致します! ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

明日の海

山本五十六の孫
歴史・時代
4月7日、天一号作戦の下、大和は坊ノ岬沖海戦を行う。多数の爆撃や魚雷が大和を襲う。そして、一発の爆弾が弾薬庫に被弾し、大和は乗組員と共に轟沈する、はずだった。しかし大和は2015年、戦後70年の世へとタイムスリップしてしまう。大和は現代の艦艇、航空機、そして日本国に翻弄される。そしてそんな中、中国が尖閣諸島への攻撃を行い、その動乱に艦長の江熊たちと共に大和も巻き込まれていく。 世界最大の戦艦と呼ばれた戦艦と、艦長江熊をはじめとした乗組員が現代と戦う、逆ジパング的なストーリー←これを言って良かったのか 主な登場人物 艦長 江熊 副長兼砲雷長 尾崎 船務長 須田 航海長 嶋田 機関長 池田

超文明日本

点P
ファンタジー
2030年の日本は、憲法改正により国防軍を保有していた。海軍は艦名を漢字表記に変更し、正規空母、原子力潜水艦を保有した。空軍はステルス爆撃機を保有。さらにアメリカからの要求で核兵器も保有していた。世界で1、2を争うほどの軍事力を有する。 そんな日本はある日、列島全域が突如として謎の光に包まれる。光が消えると他国と連絡が取れなくなっていた。 異世界転移ネタなんて何番煎じかわかりませんがとりあえず書きます。この話はフィクションです。実在の人物、団体、地名等とは一切関係ありません。

処理中です...