9 / 49
筋書き
しおりを挟む
高坂昌元挙兵の報は砥石城にも。
矢沢頼綱:……あいつは何を考えているんだ。
真田昌幸:このまま静かにしていさえすれば、厄介な森が勝手に居なくなると言うのに……。
矢沢頼綱:こちらの筋書きが崩れてしまったでは無いか……。
真田信幸:筋書きと言われますと?
真田昌幸:川中島の国衆にとって森長可は邪魔以外の何物でも無い。森はいくさに強い。いくさの場において頼もしい限りである。しかし森長可は川中島の国衆にとっては余所者であり、占領部隊。海津城等重要拠点や良田は当然森の物となってしまう。この事は川中島の国衆にとって由々しき事態。
矢沢頼綱:我らもそうであろう?
真田昌幸は織田信長に降伏後、上野の要衝沼田城の権益を失う。
真田昌幸:森は今、海津城を占拠している。ここは昌元の父高坂昌信が生涯押さえていた城。昌元にとって面白く無い事態であるのは当然の事。しかし森は強い。戦って勝てる相手では無いし、森の背後には織田が居る。昌元は森から与えられた場所で生きていくしかない状況に陥ってしまったのであったのだが、彼にとっては思わぬ僥倖が舞い込んで来た。それが、明智光秀謀叛に伴う織田家の動乱。それに付随して発生した森長可の全軍撤退である。
矢沢頼綱:森にとって大事なのは川中島よりも美濃金山。恐らく奴は戻ってこない。ならば奴が二度と川中島を志向しない。無用な恨みを買わぬよう退くのを静かに見守る事が上策。この事を出浦を通じ、昌元に伝えたはずなのであったのだが……。
真田信幸:高坂様は兵を挙げられてしまった?
真田昌幸:出浦の情報が正しければ?ではあるのだが。
真田信幸:いくさになりましたら?
矢沢頼綱:森は撤退の直前まで春日山攻略を目論み二本木にいた。つまりいつでも戦う事が出来る状況にあった。加えて二本木から海津までの間、森は兵を損ねていない。海津城は森が押さえており、昌元は森を海津に封じ込める事が出来ているわけでは無い。森はすぐにでも外いくさに打って出る事が可能な状況にある。昌元に勝算は無い。前の芋川や島津と同じ憂き目に遭うのは必至。
真田信幸:何故斯様な事を昌元様が?
矢沢頼綱:それがわかれば苦労はしない。
真田信幸:我らは如何致します?
矢沢頼綱:我らは滝川一益様の与力。森長可領内での出来事に首を突っ込む事は出来ぬ。それに我らは……。
真田昌幸:織田と敵対する気は無い。昌元とは長年。苦楽を共にして来た間柄であるが、こればかりは見捨てるほか無い。出浦も同じ考えであろう。
矢沢頼綱:……あいつは何を考えているんだ。
真田昌幸:このまま静かにしていさえすれば、厄介な森が勝手に居なくなると言うのに……。
矢沢頼綱:こちらの筋書きが崩れてしまったでは無いか……。
真田信幸:筋書きと言われますと?
真田昌幸:川中島の国衆にとって森長可は邪魔以外の何物でも無い。森はいくさに強い。いくさの場において頼もしい限りである。しかし森長可は川中島の国衆にとっては余所者であり、占領部隊。海津城等重要拠点や良田は当然森の物となってしまう。この事は川中島の国衆にとって由々しき事態。
矢沢頼綱:我らもそうであろう?
真田昌幸は織田信長に降伏後、上野の要衝沼田城の権益を失う。
真田昌幸:森は今、海津城を占拠している。ここは昌元の父高坂昌信が生涯押さえていた城。昌元にとって面白く無い事態であるのは当然の事。しかし森は強い。戦って勝てる相手では無いし、森の背後には織田が居る。昌元は森から与えられた場所で生きていくしかない状況に陥ってしまったのであったのだが、彼にとっては思わぬ僥倖が舞い込んで来た。それが、明智光秀謀叛に伴う織田家の動乱。それに付随して発生した森長可の全軍撤退である。
矢沢頼綱:森にとって大事なのは川中島よりも美濃金山。恐らく奴は戻ってこない。ならば奴が二度と川中島を志向しない。無用な恨みを買わぬよう退くのを静かに見守る事が上策。この事を出浦を通じ、昌元に伝えたはずなのであったのだが……。
真田信幸:高坂様は兵を挙げられてしまった?
真田昌幸:出浦の情報が正しければ?ではあるのだが。
真田信幸:いくさになりましたら?
矢沢頼綱:森は撤退の直前まで春日山攻略を目論み二本木にいた。つまりいつでも戦う事が出来る状況にあった。加えて二本木から海津までの間、森は兵を損ねていない。海津城は森が押さえており、昌元は森を海津に封じ込める事が出来ているわけでは無い。森はすぐにでも外いくさに打って出る事が可能な状況にある。昌元に勝算は無い。前の芋川や島津と同じ憂き目に遭うのは必至。
真田信幸:何故斯様な事を昌元様が?
矢沢頼綱:それがわかれば苦労はしない。
真田信幸:我らは如何致します?
矢沢頼綱:我らは滝川一益様の与力。森長可領内での出来事に首を突っ込む事は出来ぬ。それに我らは……。
真田昌幸:織田と敵対する気は無い。昌元とは長年。苦楽を共にして来た間柄であるが、こればかりは見捨てるほか無い。出浦も同じ考えであろう。
19
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
高天神攻略の祝宴でしこたま飲まされた武田勝頼。翌朝、事の顛末を聞いた勝頼が採った行動とは?
俣彦
ファンタジー
高天神城攻略の祝宴が開かれた翌朝。武田勝頼が採った行動により、これまで疎遠となっていた武田四天王との関係が修復。一致団結し向かった先は長篠城。
今川義元から無慈悲な要求をされた戸田康光。よくよく聞いてみると悪い話では無い。ならばこれを活かし、少しだけ歴史を動かして見せます。
俣彦
ファンタジー
栃木県宇都宮市にある旧家に眠る「門外不出」の巻物。
その冒頭に認められた文言。それは……
「私は家康を尾張に売ってはいない。」
この巻物を手に取った少年に問い掛けて来たのは
500年前にのちの徳川家康を織田家に売り払った張本人。
戸田康光その人であった。
本編は第10話。
1546年
「今橋城明け渡し要求」
の場面から始まります。
戦艦大和、時空往復激闘戦記!(おーぷん2ちゃんねるSS出展)
俊也
SF
1945年4月、敗色濃厚の日本海軍戦艦、大和は残りわずかな艦隊と共に二度と還れぬ最後の決戦に赴く。
だが、その途上、謎の天変地異に巻き込まれ、大和一隻のみが遥かな未来、令和の日本へと転送されてしまい…。
また、おーぷん2ちゃんねるにいわゆるSS形式で投稿したものですので読みづらい面もあるかもですが、お付き合いいただけますと幸いです。
姉妹作「新訳零戦戦記」「信長2030」
共々宜しくお願い致しますm(_ _)m
旅行先で目を覚ましたら武田勝頼になっていた私。どうやら自分が当主らしい。そこまでわかって不安に覚える事が1つ。それは今私が居るのは天正何年?
俣彦
ファンタジー
旅行先で目を覚ましたら武田勝頼になった私。
武田家の当主として歴史を覆すべく、父信玄時代の同僚と共に生き残りを図る物語。
【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部
山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。
これからどうかよろしくお願い致します!
ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
明日の海
山本五十六の孫
歴史・時代
4月7日、天一号作戦の下、大和は坊ノ岬沖海戦を行う。多数の爆撃や魚雷が大和を襲う。そして、一発の爆弾が弾薬庫に被弾し、大和は乗組員と共に轟沈する、はずだった。しかし大和は2015年、戦後70年の世へとタイムスリップしてしまう。大和は現代の艦艇、航空機、そして日本国に翻弄される。そしてそんな中、中国が尖閣諸島への攻撃を行い、その動乱に艦長の江熊たちと共に大和も巻き込まれていく。
世界最大の戦艦と呼ばれた戦艦と、艦長江熊をはじめとした乗組員が現代と戦う、逆ジパング的なストーリー←これを言って良かったのか
主な登場人物
艦長 江熊 副長兼砲雷長 尾崎 船務長 須田 航海長 嶋田 機関長 池田
超文明日本
点P
ファンタジー
2030年の日本は、憲法改正により国防軍を保有していた。海軍は艦名を漢字表記に変更し、正規空母、原子力潜水艦を保有した。空軍はステルス爆撃機を保有。さらにアメリカからの要求で核兵器も保有していた。世界で1、2を争うほどの軍事力を有する。
そんな日本はある日、列島全域が突如として謎の光に包まれる。光が消えると他国と連絡が取れなくなっていた。
異世界転移ネタなんて何番煎じかわかりませんがとりあえず書きます。この話はフィクションです。実在の人物、団体、地名等とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる