8 / 49
人質
しおりを挟む
人質の存在。
大塚次右衛門:川中島を統治する上で必要であったためであって、このために集めたわけではありませんが。
森長可:もし交渉が決裂してしまった場合は?
大塚次右衛門:為忠殿。
林為忠:わかっています。人質を全員処理した上、謀反人を全て撫で斬りにします。
大塚次右衛門:うむ。しかし今は大切な客人である。粗末に扱ってはならぬぞ。
林為忠:わかっています。
高坂昌元の待つ交渉の場所へ赴く大塚次右衛門。
大塚次右衛門:高坂殿。其方が武田勝頼より守備を命じられた三枚橋城を支える事が出来なかった後、……確か武田勝頼と行動を共にしようとしたと聞いている。これに相違無いか?
高坂昌元:はい。
大塚次右衛門:その時、其方は何と言われた。
「城を放棄するような奴等信用出来ぬ。」
と。
高坂昌元:間違いありません。
大塚次右衛門:武田勝頼と行動を共にした者共はどうなった?
高坂昌元:皆武田勝頼に殉じました。
大塚次右衛門:其方はどうした?
高坂昌元:行き場を失った私は、ここ川中島に戻って来ました。
大塚次右衛門:そこに殿がやって来た。そして其方を発見した。武田勝頼と同道しようとしていた事は知っていた。本来であれば処罰の対象。良くて切腹の沙汰が下されてもおかしくない其方に対し殿は何と言った?
高坂昌元:「川中島を一緒に支えてくれないか?」
そのように仰りました。
大塚次右衛門:其方にとって殿は命の恩人である。これに間違いは無いな?
高坂昌元:ありません。
大塚次右衛門:では何故我らの邪魔をしようとしているのだ?人質は我が手にある。いくさになればどうなるか。其方もわかっているであろう?
高坂昌元:御尤もであります。
大塚次右衛門:ならば私の誘い等無視し、掛かってくれば良かったものを。何故斯様な場所にのこのこやって来たのだ!息子が急にかわいくなったのか!?
高坂昌元:いえ。そうではありません。
大塚次右衛門:では何故ここに来たのだ?
高坂昌元:私が道を塞いだのには理由があります。
大塚次右衛門:何だ?申してみよ。
高坂昌元:私が兵を出してまで道を塞いだ理由。それは……。
森長可が川中島を放棄すると聞いたからであります。
大塚次右衛門:ん!?どう言う事だ?
高坂昌元:私は上杉との同盟締結に奔走した者であります。上杉と繋がりのある者が多い事は事実であります。しかし私の主君は武田勝頼。ただ独りであります。しかし勝頼に殉じる事は許されませんでした。行き場を失い、自暴自棄になり掛けた私に手を差し伸べていただいたのが森長可様でありました。その森様を私は失いたくはありません。故に道を塞いだのであります。
大塚次右衛門:川中島を統治する上で必要であったためであって、このために集めたわけではありませんが。
森長可:もし交渉が決裂してしまった場合は?
大塚次右衛門:為忠殿。
林為忠:わかっています。人質を全員処理した上、謀反人を全て撫で斬りにします。
大塚次右衛門:うむ。しかし今は大切な客人である。粗末に扱ってはならぬぞ。
林為忠:わかっています。
高坂昌元の待つ交渉の場所へ赴く大塚次右衛門。
大塚次右衛門:高坂殿。其方が武田勝頼より守備を命じられた三枚橋城を支える事が出来なかった後、……確か武田勝頼と行動を共にしようとしたと聞いている。これに相違無いか?
高坂昌元:はい。
大塚次右衛門:その時、其方は何と言われた。
「城を放棄するような奴等信用出来ぬ。」
と。
高坂昌元:間違いありません。
大塚次右衛門:武田勝頼と行動を共にした者共はどうなった?
高坂昌元:皆武田勝頼に殉じました。
大塚次右衛門:其方はどうした?
高坂昌元:行き場を失った私は、ここ川中島に戻って来ました。
大塚次右衛門:そこに殿がやって来た。そして其方を発見した。武田勝頼と同道しようとしていた事は知っていた。本来であれば処罰の対象。良くて切腹の沙汰が下されてもおかしくない其方に対し殿は何と言った?
高坂昌元:「川中島を一緒に支えてくれないか?」
そのように仰りました。
大塚次右衛門:其方にとって殿は命の恩人である。これに間違いは無いな?
高坂昌元:ありません。
大塚次右衛門:では何故我らの邪魔をしようとしているのだ?人質は我が手にある。いくさになればどうなるか。其方もわかっているであろう?
高坂昌元:御尤もであります。
大塚次右衛門:ならば私の誘い等無視し、掛かってくれば良かったものを。何故斯様な場所にのこのこやって来たのだ!息子が急にかわいくなったのか!?
高坂昌元:いえ。そうではありません。
大塚次右衛門:では何故ここに来たのだ?
高坂昌元:私が道を塞いだのには理由があります。
大塚次右衛門:何だ?申してみよ。
高坂昌元:私が兵を出してまで道を塞いだ理由。それは……。
森長可が川中島を放棄すると聞いたからであります。
大塚次右衛門:ん!?どう言う事だ?
高坂昌元:私は上杉との同盟締結に奔走した者であります。上杉と繋がりのある者が多い事は事実であります。しかし私の主君は武田勝頼。ただ独りであります。しかし勝頼に殉じる事は許されませんでした。行き場を失い、自暴自棄になり掛けた私に手を差し伸べていただいたのが森長可様でありました。その森様を私は失いたくはありません。故に道を塞いだのであります。
18
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
暁のミッドウェー
三笠 陣
歴史・時代
一九四二年七月五日、日本海軍はその空母戦力の総力を挙げて中部太平洋ミッドウェー島へと進撃していた。
真珠湾以来の歴戦の六空母、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴が目指すのは、アメリカ海軍空母部隊の撃滅。
一方のアメリカ海軍は、暗号解読によって日本海軍の作戦を察知していた。
そしてアメリカ海軍もまた、太平洋にある空母部隊の総力を結集して日本艦隊の迎撃に向かう。
ミッドウェー沖で、レキシントン、サラトガ、ヨークタウン、エンタープライズ、ホーネットが、日本艦隊を待ち構えていた。
日米数百機の航空機が入り乱れる激戦となった、日米初の空母決戦たるミッドウェー海戦。
その幕が、今まさに切って落とされようとしていた。
(※本作は、「小説家になろう」様にて連載中の同名の作品を転載したものです。)
織田信長 -尾州払暁-
藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。
守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。
織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。
そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。
毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。
スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。
(2022.04.04)
※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。
※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~
橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。
記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。
これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語
※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります
大東亜戦争を有利に
ゆみすけ
歴史・時代
日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる