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現状

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話を聞く限りではあるが、私は今。戦国時代に居るらしい。
現実で無い事を願うばかりなのではあるが、手に感触がある。
残念ながら事実のようだ。
どうやら私は森長可。ただ足利義昭が追放されたのが事実であるならば、危険な目に遭う事はなさそうだ。いや待てよ……。
「お尋ねしても宜しいか?」
「手短にお願いします。」
「武田勝頼は今、どうしている?」
「えっ!武田は滅ぼしたばかりではありませんか?」
武田が滅んだと言う事は、長篠の戦いで勝利を収め、上杉謙信はこの世を去った。本願寺は石山を退去し、武田滅亡に伴い東国で織田に刃を向ける者はほぼ居ない。上杉景勝等全く居ないわけでは無いが、織田の相手では無い。残るは毛利のみ。大規模な召集は掛かっているが、羽柴秀吉が自らの働きぶりを織田信長に見せるためのパフォーマンスに過ぎない。ただ気になる事が1つある。
……確か一大事と言っていたよな?
「先程、一大事と仰っていましたが?」
「はい。」
「領内で何か問題が発生したのですか?」
武田が滅んだ後、森長可は織田信長より川中島を与えられ海津城を拠点に統治を開始するも旧武田の家臣が上杉と結び付き叛乱。これを撃退し、従った国人衆から人質を徴収。一応落ち着きを取り戻してはいるのだが……。
「いえ。現状、領内で不審な動きは見られません。ただ……。」
ただ?
「今後、どのような動きを見せるか予断を許さない状況にあります。」
ん!?
「今私が居る場所は海津城では?」
「ありません。」
「ここは何処なのだ?」
「二本木であります。」
二本木は今の新潟県上越市にあり、上杉の本拠地春日山城を伺うには最適な場所。しかし越後は上杉領。敵地の真っ只中にあっての一大事。と言う事は……。
「上杉がこちらに向かっている?」
「いえ景勝は、魚津に兵を進めている事がわかっています。」
魚津があるのは富山県東部。当時、柴田勝家の猛攻を受けていた場所。
「安定しているわけでは無いが川中島に問題は無く、上杉景勝もここには居ない。私が戦って負ける相手は……。」
「ここには居ません。」
「では何故一大事と言っているのだ。」
「殿。」
「どうした?」
「落ち着いて聞いていただく事は出来ますか?」
「何だ急に?」
「決して取り乱す事は無い。と言う事を約束していただけますか?」
「……わかった。」
「ではお伝えします。」

織田信長が明智光秀に討たれました。
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