織田信長に逆上された事も知らず。ノコノコ呼び出された場所に向かっていた所、徳川家康の家臣に連れ去られました。

俣彦

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本多信俊

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 織田信長信忠親子の急死が甲斐信濃に広まったのが6月9日。この段階で既に甲斐国内では曽根昌世や岡部正綱。そして依田信蕃に通じる者が3千にも膨れ上がり、中には曽根岡部のお墨付きを得ようと試みる者も現れる始末。そんな政情不安定に陥った甲斐国内に入った人物。それは……。



 柏尾坂峠。



依田信蕃「本多信俊様が河尻様の下を訪ねたのでありますか?」



 本多信俊は徳川家康が岡崎で今川氏真と袂を分かつ前からの家臣で、今の愛知県豊川市に基盤を構える牧野氏調略等徳川家康の三河統一戦で活躍。その後も高天神城の戦い等でも戦功を上げた人物。因みに信俊の信は織田信長から与えられたと言われている。



曽根昌世「その通りだ。」

依田信蕃「どのような目的で?」

曽根昌世「今後の事についてと聞いている。」

依田信蕃「そうですか……。」



 しばらくして。



伝令「申し上げます!本多信俊様!河尻秀隆の手に掛かり、敢え無い最期を遂げました!!」

依田信蕃「何故!?」

曽根昌世「……わかった。引き続き情報の収集を頼む。」

伝令「わかりました!」

依田信蕃「……如何致す?」

曽根昌世「河尻様の所から我らが居る柏尾坂までは距離がある。我らに狙いを定めたのを確認するまでは動かないのが得策。我らに味方する事を決意した方々の事もある。それに……。」



 今動いたら依田と徳川が結び付いている事を認める事になる。



依田信蕃「……わかった。」



 しばらくして。



曽根昌世「本多様と河尻様のやり取りがわかった。」

依田信蕃「どのようなものでありますか?」

曽根昌世「織田信長様信忠様親子が亡くなられた事についての情報共有が1つ。これだけであれば問題は無い。

 問題はここからだ。甲斐国内に不穏な動きがある。大きなものとしては穴山様の権益の内、徳川様の管轄では無い甲斐の国に徳川様の家臣に位置付けられている岡部が入った事について河尻様より質問があった。」

依田信蕃「それに対し本多様は?」

曽根昌世「『穴山様の嫡男が元服前であるため、領内を保護する必要があった。』

と説明している。そしてもう1つ議題となったのが……。」



 柏尾坂に居る依田信蕃の旗について。



曽根昌世「『お前が掲げている旗と徳川は関係しているのか否か?』

『信長様信忠様の死が自分(河尻秀隆)の耳に届く前から甲斐国内で不穏な動きが見られるが、その動きと徳川は関係しているのか?』

について問い合わせがあった。」

依田信蕃「それに対し本多様は?」

曽根昌世「『無関係です。』

と返答したそうな。」
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