織田信長に逆上された事も知らず。ノコノコ呼び出された場所に向かっていた所、徳川家康の家臣に連れ去られました。

俣彦

文字の大きさ
上 下
26 / 42

蜥蜴の

しおりを挟む
曽根昌世「まさかこんな早くに再開する事になろうとは……。」

依田信蕃「その通りですね。」

曽根昌世「それもお前が表立って活動する事になるとは夢にも思わなかった。」

依田信蕃「いえ。その事でありますが……。」



 戻って二俣。



依田信蕃「『甲斐信濃を獲る。』

でありますか?」

大久保忠世「左様。明智光秀の謀叛により、織田家は当主を失った。このまま明智が京で君臨する事になるのか?織田家中の誰かが奴を倒すのか?はたまた他の勢力が混乱する織田家に割って入って来るのか?それはわからない。ただはっきりしている事が1つある。それは……。」



 織田が甲斐信濃を維持する事が出来なくなる。



大久保忠世「甲斐信濃は無主の国となり、周辺勢力。上杉と北条の草刈り場となる。このまま奴らの好き勝手にさせてしまうのは安全保障上、好ましいものでは無い。」

依田信蕃「確かに。」

大久保忠世「三河遠江の安定を図る上でも、甲斐信濃の領国化は必要不可欠。しかしここで1つ問題がある。それは……。」



 徳川家は織田大名。



大久保忠世「今、甲斐信濃には河尻様に毛利様。森様に滝川様。そして武田から織田に転向した木曽様が居る。その彼らが居る状況で、うちが兵を動かす事は出来ない。これは彼らが甲斐信濃を放棄し、各々の本貫地に戻っても同様。火事場泥棒の誹りを受け、新たに織田の当主となった人物から脅かされる事態となる。北は上杉。東を北条。そして西は織田と……。」

依田信蕃「少し前の武田よりも……。」

大久保忠世「酷い状況になる。これは避けなければならない。ただ今の状況を見過ごすわけにもいかない。上杉と北条は確実に動く。1年もしない内に甲斐信濃は奴らに蹂躙される事になってしまう。しかし我らは動く事が許されない。何か良い方策は無いものか?と様々な人物を調べた結果……。」



 進めて。



曽根昌世「『お前に白羽の矢が立てられた。』

と言う事か?」

依田信蕃「左様。」



 戻って二俣。



大久保忠世「我が家中には甲斐信濃に明るい人物としては曽根と岡部(正綱)が居る。しかし彼らは我らの家臣として織田が認識している。彼らの行動は徳川の行動。織田がそれを黙って見過ごす事はあり得ない。

『奴らが勝手にやっている事だ!』

と突っぱねる事も出来るが、後々禍根を残す事になる。避けなければならない事態である。武田に詳しく。武田家中の方々から慕われ、かつ徳川のために行動しても織田から徳川が睨まれる事の無い人物は居ないものか?」



 進めて。



曽根昌世「で、既にこの世を去ったお前が選ばれた。」

依田信蕃「まぁ言うたら何かあったら……。」



 蜥蜴の尻尾切り扱いにされる運命にある。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

徳川家康。一向宗に認められていた不入の権を侵害し紛争に発展。家中が二分する中、岡崎に身を寄せていた戸田忠次が採った行動。それは……。

俣彦
歴史・時代
1563年。徳川家康が三河国内の一向宗が持つ「不入の権」を侵害。 両者の対立はエスカレートし紛争に発展。双方共に関係を持つ徳川の家臣は分裂。 そんな中、岡崎に身を寄せていた戸田忠次は……。

大将首は自分で守れ

俣彦
歴史・時代
 当面の目標は長篠の戦い。書いている本人が飽きぬよう頑張ります。  小説家になろうで書き始め、調子が出て来たところから転載します。

大東亜戦争を有利に

ゆみすけ
歴史・時代
 日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

信忠 ~“奇妙”と呼ばれた男~

佐倉伸哉
歴史・時代
 その男は、幼名を“奇妙丸”という。人の名前につけるような単語ではないが、名付けた父親が父親だけに仕方がないと思われた。  父親の名前は、織田信長。その男の名は――織田信忠。  稀代の英邁を父に持ち、その父から『天下の儀も御与奪なさるべき旨』と認められた。しかし、彼は父と同じ日に命を落としてしまう。  明智勢が本能寺に殺到し、信忠は京から脱出する事も可能だった。それなのに、どうして彼はそれを選ばなかったのか? その決断の裏には、彼の辿って来た道が関係していた――。  ◇この作品は『小説家になろう(https://ncode.syosetu.com/n9394ie/)』『カクヨム(https://kakuyomu.jp/works/16818093085367901420)』でも同時掲載しています◇

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

本能のままに

揚羽
歴史・時代
1582年本能寺にて織田信長は明智光秀の謀反により亡くなる…はずだった もし信長が生きていたらどうなっていたのだろうか…というifストーリーです!もしよかったら見ていってください! ※更新は不定期になると思います。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

処理中です...