織田信長に逆上された事も知らず。ノコノコ呼び出された場所に向かっていた所、徳川家康の家臣に連れ去られました。

俣彦

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急飛脚

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 6月4日。



依田信幸「兄上。如何為されましたか?」

依田信蕃「急ぎの飛脚がこれを持って来た。」

依田信幸「大久保様からでありますか?」

依田信蕃「読んでみよ。」

依田信幸「……えっ!?」



 大久保忠世が依田信蕃に宛てた便りに記されていた文言。それは……。



依田信幸「信長様が亡くなられた……。」



 更に



依田信幸「信忠様も。でありますか……。」

依田信蕃「うむ。織田家中で謀叛が発生し、信長様と信忠様は斃れられた。徳川様は無事岡崎に戻られた。ただ……。」



 穴山信君の消息は不明。



依田信蕃「詳しい事はこちらに大久保様が到着されてから説明するとの事である。1つ確定した事は……。」



 依田信蕃は無罪放免となった。



依田信幸「それは何よりであります。」

依田信蕃「複雑な感情ではあるがな。」

依田信幸「しかし何故信長様は……。」

依田信蕃「その辺りについても話があると思う。」

依田信幸「わかりました。」



 大久保忠世到着。



依田信蕃「大変な事になってしまいました。」

大久保忠世「如何にも。」

依田信蕃「何があったのでありますか?」

大久保忠世「詳しい情報は入っておらぬ。わかっている事とすれば、織田信長様に刃を向けたのは明智光秀。安土において殿を接待した人物である。」

依田信蕃「それだけの重鎮が何故?」

大久保忠世「わからぬ。ただ殿の話を聞く限り、接待の準備中。信長様に叱責されていたとか。まぁそれだけの理由で謀叛とはならない。しかし信長様の性格を思うと……。」

依田信蕃「信長様の行いに積もるものがあった?」

大久保忠世「滅多な事を口にする事は出来ないがな。」

依田信幸「徳川様は御無事で。」

大久保忠世「岡崎に帰る事が出来た。ただ三河に到着するまでは大変だったと聞いている。」

依田信幸「襲ってくる者共が?」

大久保忠世「皆が皆、無事に戻る事は出来なかった。それに先に送った書状には記していないが……。」



 穴山信君逝去。



依田信幸「……。」

依田信蕃「……覚悟は出来ていました。残念でなりません。」

大久保忠世「殿も危なかったんだよ。狙われてでは無い。これは殿の悪い癖なのだが、状況が悪化すると無茶をする。討ち死に願望があって、それが発症してしまったそうな。」

依田信蕃「それを皆が押し留めて。」

大久保忠世「酒井(忠次)が

『場所を変えましょう。』

と殿を歩かせて、井伊(直政)。彼の家は当主を失い苦しい思いをして来ている。彼が

『亡国の者』

の惨めさを訴え、もし家康様が亡くなったらどうなってしまうのか徳川はどうなってしまうのかを悟らせ最後。本多忠勝の一言で翻意させる事が出来たと聞いている。」

依田信幸「何と仰ったのでありますか?」
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