14 / 42
勝者の中に
しおりを挟む
依田信蕃「信長様から追討された私に利用価値がある?」
曽根昌世「其方だけでは無い。私も同様である。」
依田信蕃「甲斐に不穏な動きが見られるのでありますか?」
曽根昌世「海津城のような武装蜂起にまでは発展していない。甲斐国に入った河尻(秀隆)様も最大限配慮されている。織田を恐れ逃亡した者への帰還を促し、武田時代に持っていた各々の権益について保証する動きを見せている。そして何より武田の旧臣に対し仕官を促している。ただ……。」
依田信蕃「ただ?」
曽根昌世「河尻様の呼び掛けに応じる者は少なく、他国へ逃れる者や逼塞する者が大半を占めている状況にある。」
依田信蕃「この動きに対し河尻様は?」
曽根昌世「海津城と異なり敵対する勢力が居ない。外からの誘いに乗っての行動では無い事を河尻様は理解されている。場所は武田の本国であった甲斐国。武田への思いが強い方々が多い事も理解されている。時間を掛け、織田の良さを示し続ける事によって甲斐の領国化を進める事になるのでは?と見ている。」
依田信蕃「それと私が何か?」
曽根昌世「徳川様から私に頼まれている事があって。」
依田信蕃「何でしょうか?」
曽根昌世「今ここで話す事は出来ない。出来ないが、その頼まれ事の中に其方が関係する事がある。と言う事がある事を伝えに来た。思い当たる節があるかも知れぬが、それを口外してはならない。徳川様は織田大名。独立した勢力では無い。甲斐は織田の領国であり、統治を任された河尻様は信忠様の補佐役を担っている人物。斯様な場所に混乱を招く。それもうちが絡む証拠でも出ようものなら……。」
どうなってしまうか。わかりますよね?
依田信蕃「徳川様は甲斐が。」
曽根昌世「これ以上口外してはならぬ。文字に起こしてもならぬ。そして少なくとも私はそれを望んではいない。何故なら甲斐国は内以外にも問題を孕んでいるので。」
依田信蕃「甲斐は織田。隣接する信濃も織田。駿河は徳川で武蔵相模は北条といづれも同盟関係にあります。国外に問題は……。」
曽根昌世「現状見られない。見られないが、此度のいくさにおける論功行賞について不満に思っている方がいる。」
依田信蕃「徳川様でありますか?」
曽根昌世「いや徳川様は信長様から駿河を提示された際、今川氏真様に渡すよう進言されている。」
依田信蕃「穴山様は断ったとなると……其方か?」
曽根昌世「私に不満等無い。これ以上ない厚遇で迎え入れられている。」
依田信蕃「となりますと……。」
曽根昌世「其方だけでは無い。私も同様である。」
依田信蕃「甲斐に不穏な動きが見られるのでありますか?」
曽根昌世「海津城のような武装蜂起にまでは発展していない。甲斐国に入った河尻(秀隆)様も最大限配慮されている。織田を恐れ逃亡した者への帰還を促し、武田時代に持っていた各々の権益について保証する動きを見せている。そして何より武田の旧臣に対し仕官を促している。ただ……。」
依田信蕃「ただ?」
曽根昌世「河尻様の呼び掛けに応じる者は少なく、他国へ逃れる者や逼塞する者が大半を占めている状況にある。」
依田信蕃「この動きに対し河尻様は?」
曽根昌世「海津城と異なり敵対する勢力が居ない。外からの誘いに乗っての行動では無い事を河尻様は理解されている。場所は武田の本国であった甲斐国。武田への思いが強い方々が多い事も理解されている。時間を掛け、織田の良さを示し続ける事によって甲斐の領国化を進める事になるのでは?と見ている。」
依田信蕃「それと私が何か?」
曽根昌世「徳川様から私に頼まれている事があって。」
依田信蕃「何でしょうか?」
曽根昌世「今ここで話す事は出来ない。出来ないが、その頼まれ事の中に其方が関係する事がある。と言う事がある事を伝えに来た。思い当たる節があるかも知れぬが、それを口外してはならない。徳川様は織田大名。独立した勢力では無い。甲斐は織田の領国であり、統治を任された河尻様は信忠様の補佐役を担っている人物。斯様な場所に混乱を招く。それもうちが絡む証拠でも出ようものなら……。」
どうなってしまうか。わかりますよね?
依田信蕃「徳川様は甲斐が。」
曽根昌世「これ以上口外してはならぬ。文字に起こしてもならぬ。そして少なくとも私はそれを望んではいない。何故なら甲斐国は内以外にも問題を孕んでいるので。」
依田信蕃「甲斐は織田。隣接する信濃も織田。駿河は徳川で武蔵相模は北条といづれも同盟関係にあります。国外に問題は……。」
曽根昌世「現状見られない。見られないが、此度のいくさにおける論功行賞について不満に思っている方がいる。」
依田信蕃「徳川様でありますか?」
曽根昌世「いや徳川様は信長様から駿河を提示された際、今川氏真様に渡すよう進言されている。」
依田信蕃「穴山様は断ったとなると……其方か?」
曽根昌世「私に不満等無い。これ以上ない厚遇で迎え入れられている。」
依田信蕃「となりますと……。」
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説

徳川家康。一向宗に認められていた不入の権を侵害し紛争に発展。家中が二分する中、岡崎に身を寄せていた戸田忠次が採った行動。それは……。
俣彦
歴史・時代
1563年。徳川家康が三河国内の一向宗が持つ「不入の権」を侵害。
両者の対立はエスカレートし紛争に発展。双方共に関係を持つ徳川の家臣は分裂。
そんな中、岡崎に身を寄せていた戸田忠次は……。

【完結】風天の虎 ――車丹波、北の関ヶ原
糸冬
歴史・時代
車丹波守斯忠。「猛虎」の諱で知られる戦国武将である。
慶長五年(一六〇〇年)二月、徳川家康が上杉征伐に向けて策動する中、斯忠は反徳川派の急先鋒として、主君・佐竹義宣から追放の憂き目に遭う。
しかし一念発起した斯忠は、異母弟にして養子の車善七郎と共に数百の手勢を集めて会津に乗り込み、上杉家の筆頭家老・直江兼続が指揮する「組外衆」に加わり働くことになる。
目指すは徳川家康の首級ただ一つ。
しかし、その思いとは裏腹に、最初に与えられた役目は神指城の普請場での土運びであった……。
その名と生き様から、「国民的映画の主人公のモデル」とも噂される男が身を投じた、「もう一つの関ヶ原」の物語。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
【おんJ】 彡(゚)(゚)ファッ!?ワイが天下分け目の関ヶ原の戦いに!?
俊也
SF
これまた、かつて私がおーぷん2ちゃんねるに載せ、ご好評頂きました戦国架空戦記SSです。
この他、
「新訳 零戦戦記」
「総統戦記」もよろしくお願いします。
織田信長IF… 天下統一再び!!
華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。
この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。
主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。
※この物語はフィクションです。

大日本帝国、アラスカを購入して無双する
雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。
大日本帝国VS全世界、ここに開幕!
※架空の日本史・世界史です。
※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。
※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。
大東亜戦争を有利に
ゆみすけ
歴史・時代
日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる