織田信長に逆上された事も知らず。ノコノコ呼び出された場所に向かっていた所、徳川家康の家臣に連れ去られました。

俣彦

文字の大きさ
上 下
11 / 42

加増

しおりを挟む
曽根昌世「棘のある物言いだな……。まぁやった事は褒められる事で無い。甘んじて受け入れる。」

依田信蕃「今回の仕置きについて気になっている事があるのだが。」

曽根昌世「この際だ。何でも聞いてくれ。」

依田信蕃「ありがとうございます。私が気になっているのは……。」



 穴山信君が加増されなった理由は?



依田信蕃「木曽様は此度のいくさの後、織田信長様より本貫地の木曾郡の安堵。並びに安曇と筑摩の2郡が加増されています。」

曽根昌世「うむ。」

依田信蕃「これに対し穴山様は甲斐国河内領と駿河国江尻領が安堵されただけ。しかも駿河については徳川家康様の与力の扱いとなっています。この理由は?」

曽根昌世「御本人に確認したわけでは無い。それはわかってくれ。」

依田信蕃「はい。」

曽根昌世「恐らくであるが、穴山様は……。」



 自身が持つ河内領以外の甲斐領有を断った。



曽根昌世「可能性が高いと見ている。理由は穴山様、どのような方法で以て織田信長様に取り入ったのかを甲斐の方々が知っているからである。」



 織田信長は新たに獲得した領地の運営を主家を裏切った者に与え、間接的に統治する手法を用いる事があります。越前や摂津がその事例になります。占領直後の国内には織田に対し、敵愾心を抱く者が多く存在します。特に攻め落とした場所や本拠地ともなればなおの事。



曽根昌世「今の状況で穴山様が武田の継承者として躑躅ヶ崎に本拠地を構えた場合、どのような事態が発生する事になるのか?」

依田信蕃「叛乱を起こす者多数でありましょう。」

曽根昌世「それを穴山様が一手に引き受けなければならなくなる。仮に穴山様が収める事が出来たとしても、織田信長様から

『統治能力に問題がある。』

と罰せられる危険性がある。収める事が出来なければ、自らの命が奪われる恐れがある。それを待っている人物もいる。」



 織田信長。



曽根昌世「穴山様を追い出した所で、彼らが担ぐ事の出来る神輿は存在しない。甲斐は今、織田領。その織田の兵が大挙として甲斐国に押し寄せる事になる。結末は、越前を見ればわかると思う。」

依田信蕃「お前もその口か?」

曽根昌世「俺が任されていた場所。知っているだろ?本当は徳川様の部隊が入る予定であったのだが、まさか駿河の入口で徳川の動きが止まってしまうとは予想だに出来なかった。おかげで私の管轄地は……。」



 北条氏政の部隊に蹂躙された。



曽根昌世「どのような沙汰が下されるかわかったものでは無かった。加増なぞ夢のまた夢であった。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

関ヶ原に敗れ、再起を図るべく息子が居る津軽に潜り込む石田三成。ここで藩を富ませ、打倒家康を誓うものの……あるのはコメばかり……。さてどうする

俣彦
ファンタジー
関ヶ原の戦いに敗れるも、徳川の追っ手から逃れ、 先に息子が脱出していた津軽に潜り込む事に成功した石田三成。 打倒家康を心に誓い、藩の富国に取り組もうとするも……。

独裁者・武田信玄

いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます! 平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。 『事実は小説よりも奇なり』 この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに…… 歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。 過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。 【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い 【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形 【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人 【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある 【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。 (前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

『影武者・粟井義道』

粟井義道
歴史・時代
📜 ジャンル:歴史時代小説 / 戦国 / 武士の生き様 📜 主人公:粟井義道(明智光秀の家臣) 📜 テーマ:忠義と裏切り、武士の誇り、戦乱を生き抜く者の選択 プロローグ:裏切られた忠義  天正十年——本能寺の変。  明智光秀が主君・織田信長を討ち果たしたとき、京の片隅で一人の男が剣を握りしめていた。  粟井義道。  彼は、光秀の家臣でありながら、その野望には賛同しなかった。  「殿……なぜ、信長公を討ったのですか?」  光秀の野望に忠義を尽くすか、それとも己の信念を貫くか——  彼の運命を決める戦いが、今始まろうとしていた。

国殤(こくしょう)

松井暁彦
歴史・時代
目前まで迫る秦の天下統一。 秦王政は最大の難敵である強国楚の侵攻を開始する。 楚征伐の指揮を任されたのは若き勇猛な将軍李信。 疾風の如く楚の城郭を次々に降していく李信だったが、彼の前に楚最強の将軍項燕が立ちはだかる。 項燕の出現によって狂い始める秦王政の計画。項燕に対抗するために、秦王政は隠棲した王翦の元へと向かう。 今、項燕と王翦の国の存亡をかけた戦いが幕を開ける。

獅子の末裔

卯花月影
歴史・時代
未だ戦乱続く近江の国に生まれた蒲生氏郷。主家・六角氏を揺るがした六角家騒動がようやく落ち着いてきたころ、目の前に現れたのは天下を狙う織田信長だった。 和歌をこよなく愛する温厚で無力な少年は、信長にその非凡な才を見いだされ、戦国武将として成長し、開花していく。 前作「滝川家の人びと」の続編です。途中、エピソードの被りがありますが、蒲生氏郷視点で描かれます。

異聞・鎮西八郎為朝伝 ― 日本史上最強の武将・源為朝は、なんと九尾の狐・玉藻前の息子であった!

Evelyn
歴史・時代
 源氏の嫡流・源為義と美貌の白拍子の間に生まれた八郎為朝は、史記や三国志に描かれた項羽、呂布や関羽をも凌ぐ無敵の武将! その生い立ちと生涯は?  鳥羽院の寵姫となった母に捨てられ、父に疎まれながらも、誠実無比の傅役・重季、若き日の法然上人や崇徳院、更には信頼できる仲間らとの出会いを通じて逞しく成長。  京の都での大暴れの末に源家を勘当されるが、そんな逆境はふふんと笑い飛ばし、放逐された地・九州を平らげ、威勢を轟かす。  やがて保元の乱が勃発。古今無類の武勇を示すも、不運な敗戦を経て尚のこと心機一転。  英雄神さながらに自らを奮い立て、この世を乱す元凶である母・玉藻、実はあまたの国々を滅ぼした伝説の大妖・九尾の狐との最後の対決に挑む。  平安最末期、激動の時代を舞台に、清盛、義朝をはじめ、天皇、上皇、著名な公卿や武士、高僧など歴史上の重要人物も多数登場。  海賊衆や陰陽師も入り乱れ、絢爛豪華な冒険に満ちた半生記です。  もちろん鬼若(誰でしょう?)、時葉(これも誰? 実は史上の有名人!)、白縫姫など、豪傑、美女も続々現れますよ。  お楽しみに 😄

if 大坂夏の陣 〜勝ってはならぬ闘い〜

かまぼこのもと
歴史・時代
1615年5月。 徳川家康の天下統一は最終局面に入っていた。 堅固な大坂城を無力化させ、内部崩壊を煽り、ほぼ勝利を手中に入れる…… 豊臣家に味方する者はいない。 西国無双と呼ばれた立花宗茂も徳川家康の配下となった。 しかし、ほんの少しの違いにより戦局は全く違うものとなっていくのであった。 全5話……と思ってましたが、終わりそうにないので10話ほどになりそうなので、マルチバース豊臣家と別に連載することにしました。

処理中です...