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嫌いでは無い
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依田信蕃「はい。」
徳川家康「私は……。」
お前のような奴が嫌いでは無い。
依田信蕃「えっ!?」
徳川家康「私にも経験がある。私の本貫地三河には古くから一向宗が幅を利かせていた。幅を利かせるどころか家臣の大半が(一向宗を信仰する)門徒であった。彼らの協力無しには徳川。当時は松平か。を維持する事は出来なかった。しかし当時はうちも貧しく、経済的自立無くして生き残る事は出来なかった。そこで私は一向宗に対し挑発した。彼らの持つ地盤を手に入れるためである。家中は割れた。当然である。そしてそんな彼らと戦った。その戦いに私は勝った。敗れた者の中には三河を出。各国の門徒と共に戦った者も居れば、我が家中に復帰してくれた者も居た。その中の何人かが……。」
三方ヶ原の戦いで、私の身代わりとなって私を救ってくれた。
徳川家康「彼らの信仰と生活基盤を脅かしたのは私である。悪いのは私である。一向宗に責任は無い。そんな無理難題を仕掛けた私が最大の生命の危機に直面した時、助けてくれたのは彼らであった。律儀であった。不器用であった。……そして愚かであった。それからかな?家臣の大事さを知る事が出来たのは。信蕃。」
依田信蕃「はい。」
徳川家康「実を言えば、あのいくさの前まではそうでは無かった。私は幼少期の長い間、駿府で過ごした。世間では
『人質』
と言われていたが、実際はそうでは無かった。まず身の安全が保障され、最高の教育を受ける事が出来た。今川義元の縁者と結ばれ、一門格として遇されたのが実際である。その間、岡崎の者共がどのような苦難に直面していたのかも知らずに。
そんな我が儘放題に育った私を三河の方々は迎え入れてくれた。そして私の無理難題に付いて来てくれた。それを私は……。」
当然の事と考えていた。
徳川家康「目を覚まさせてくれたのが、三方ヶ原であった。このままではいつか彼らに見限られてしまう。私が彼らを守らなければならない。そうなってからかな?無理ないくさを仕掛けないよう心掛けるようになったのは……。もし三方ヶ原以前のまま突き進んでいたら、生きて其方に会う事は叶わなかったかもしれぬ。武田勝頼に落ち度があったとは言っていない。勘違いしないでいただきたい。信長様も仰っていた。
『運が尽きてしまっただけだ。』
と。明日は我が身である事を自覚されている。それは私も同じ事。その運を手繰り寄せるために無くてはならないのが……。」
人の力である。
徳川家康「信蕃。」
依田信蕃「はい。」
徳川家康「私の願いを聞いていただきたい。」
徳川家康「私は……。」
お前のような奴が嫌いでは無い。
依田信蕃「えっ!?」
徳川家康「私にも経験がある。私の本貫地三河には古くから一向宗が幅を利かせていた。幅を利かせるどころか家臣の大半が(一向宗を信仰する)門徒であった。彼らの協力無しには徳川。当時は松平か。を維持する事は出来なかった。しかし当時はうちも貧しく、経済的自立無くして生き残る事は出来なかった。そこで私は一向宗に対し挑発した。彼らの持つ地盤を手に入れるためである。家中は割れた。当然である。そしてそんな彼らと戦った。その戦いに私は勝った。敗れた者の中には三河を出。各国の門徒と共に戦った者も居れば、我が家中に復帰してくれた者も居た。その中の何人かが……。」
三方ヶ原の戦いで、私の身代わりとなって私を救ってくれた。
徳川家康「彼らの信仰と生活基盤を脅かしたのは私である。悪いのは私である。一向宗に責任は無い。そんな無理難題を仕掛けた私が最大の生命の危機に直面した時、助けてくれたのは彼らであった。律儀であった。不器用であった。……そして愚かであった。それからかな?家臣の大事さを知る事が出来たのは。信蕃。」
依田信蕃「はい。」
徳川家康「実を言えば、あのいくさの前まではそうでは無かった。私は幼少期の長い間、駿府で過ごした。世間では
『人質』
と言われていたが、実際はそうでは無かった。まず身の安全が保障され、最高の教育を受ける事が出来た。今川義元の縁者と結ばれ、一門格として遇されたのが実際である。その間、岡崎の者共がどのような苦難に直面していたのかも知らずに。
そんな我が儘放題に育った私を三河の方々は迎え入れてくれた。そして私の無理難題に付いて来てくれた。それを私は……。」
当然の事と考えていた。
徳川家康「目を覚まさせてくれたのが、三方ヶ原であった。このままではいつか彼らに見限られてしまう。私が彼らを守らなければならない。そうなってからかな?無理ないくさを仕掛けないよう心掛けるようになったのは……。もし三方ヶ原以前のまま突き進んでいたら、生きて其方に会う事は叶わなかったかもしれぬ。武田勝頼に落ち度があったとは言っていない。勘違いしないでいただきたい。信長様も仰っていた。
『運が尽きてしまっただけだ。』
と。明日は我が身である事を自覚されている。それは私も同じ事。その運を手繰り寄せるために無くてはならないのが……。」
人の力である。
徳川家康「信蕃。」
依田信蕃「はい。」
徳川家康「私の願いを聞いていただきたい。」
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