6 / 42
何故
しおりを挟む
依田信蕃「何でありましょうか?」
徳川家康「何故信長様の誘いを断った?其方が田中城でうちの誘いを断って佐久へ戻った時、私はこう思った。」
武田勝頼に殉じるのでは無いかと。
徳川家康「其方の主君武田勝頼はもうこの世に居ない。佐久は織田によって占領されている可能性が高い。其方は敗軍の将であり、織田方の誰とも繋がっていない。無謀ないくさを仕掛け、命を終えるのだな。そのように考えていた。しかし其方は違った。織田信忠様からの誘いに断りを入れず、人質を提出する事により恭順の意を示した。佐久をいくさの場にしたくはない気持ちもあったと思われる。しかし其方は、信長様からの出頭命令に応じ諏訪に向かった所を見ると……。」
織田と一戦交えるため、佐久に戻ったのでは無かった。
徳川家康「相違ないか?」
依田信蕃「はい。」
徳川家康「では何故その場で誘いに応じなかったのだ?信長様は其方に
『佐久を任せる。』
と伝えたと聞いている。」
依田信蕃「その通りであります。」
徳川家康「何故断った?」
依田信蕃「断ったわけではありません。」
徳川家康「其方の立場を考えよ。生殺与奪の権は信長様が握っている事。理解していたであろう?」
依田信蕃「はい。」
徳川家康「その信長様が其方の望みを実現させるべく動いた。そしてその事が本人にもきちんと伝えられた。後は応じるだけでは無かったのか?」
依田信蕃「……はい。軽率でありました。」
徳川家康「もう一度聞く。何故信長様の誘いを断ったのだ?」
依田信蕃「それは……もし武田家が滅びてしまった場合、お仕えしたい人物が居たからであります。」
徳川家康「ん!誰だ?申してみよ。」
依田信蕃「はい。」
依田信蕃が密かに心を寄せていた人物。それは……。
依田信蕃「徳川家康様。あなた様にお仕えしたい。と考えていました。この思いを断ち切るための時間が欲しかったのであります。」
徳川家康「……ならば聞く。」
依田信蕃「はい。」
徳川家康「ならば何故田中城を出る時、私の誘いを断ったのだ?」
依田信蕃「我が主君。武田勝頼の死。武田家はもうこの世に存在しない事をこの目で確認し、納得するためであります。それを確認した時にはもう……。」
徳川家康の居る市川大門に戻る手立てを失っていました……。
依田信蕃「佐久に戻るしか選択肢は残されていませんでした。」
徳川家康「律儀だな……。そして不器用だな……。自分の身を顧みず愚かだな……。」
依田信蕃「何も言い返す言葉はありません。」
徳川家康「信蕃。」
徳川家康「何故信長様の誘いを断った?其方が田中城でうちの誘いを断って佐久へ戻った時、私はこう思った。」
武田勝頼に殉じるのでは無いかと。
徳川家康「其方の主君武田勝頼はもうこの世に居ない。佐久は織田によって占領されている可能性が高い。其方は敗軍の将であり、織田方の誰とも繋がっていない。無謀ないくさを仕掛け、命を終えるのだな。そのように考えていた。しかし其方は違った。織田信忠様からの誘いに断りを入れず、人質を提出する事により恭順の意を示した。佐久をいくさの場にしたくはない気持ちもあったと思われる。しかし其方は、信長様からの出頭命令に応じ諏訪に向かった所を見ると……。」
織田と一戦交えるため、佐久に戻ったのでは無かった。
徳川家康「相違ないか?」
依田信蕃「はい。」
徳川家康「では何故その場で誘いに応じなかったのだ?信長様は其方に
『佐久を任せる。』
と伝えたと聞いている。」
依田信蕃「その通りであります。」
徳川家康「何故断った?」
依田信蕃「断ったわけではありません。」
徳川家康「其方の立場を考えよ。生殺与奪の権は信長様が握っている事。理解していたであろう?」
依田信蕃「はい。」
徳川家康「その信長様が其方の望みを実現させるべく動いた。そしてその事が本人にもきちんと伝えられた。後は応じるだけでは無かったのか?」
依田信蕃「……はい。軽率でありました。」
徳川家康「もう一度聞く。何故信長様の誘いを断ったのだ?」
依田信蕃「それは……もし武田家が滅びてしまった場合、お仕えしたい人物が居たからであります。」
徳川家康「ん!誰だ?申してみよ。」
依田信蕃「はい。」
依田信蕃が密かに心を寄せていた人物。それは……。
依田信蕃「徳川家康様。あなた様にお仕えしたい。と考えていました。この思いを断ち切るための時間が欲しかったのであります。」
徳川家康「……ならば聞く。」
依田信蕃「はい。」
徳川家康「ならば何故田中城を出る時、私の誘いを断ったのだ?」
依田信蕃「我が主君。武田勝頼の死。武田家はもうこの世に存在しない事をこの目で確認し、納得するためであります。それを確認した時にはもう……。」
徳川家康の居る市川大門に戻る手立てを失っていました……。
依田信蕃「佐久に戻るしか選択肢は残されていませんでした。」
徳川家康「律儀だな……。そして不器用だな……。自分の身を顧みず愚かだな……。」
依田信蕃「何も言い返す言葉はありません。」
徳川家康「信蕃。」
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
高天神攻略の祝宴でしこたま飲まされた武田勝頼。翌朝、事の顛末を聞いた勝頼が採った行動とは?
俣彦
ファンタジー
高天神城攻略の祝宴が開かれた翌朝。武田勝頼が採った行動により、これまで疎遠となっていた武田四天王との関係が修復。一致団結し向かった先は長篠城。
明日の海
山本五十六の孫
歴史・時代
4月7日、天一号作戦の下、大和は坊ノ岬沖海戦を行う。多数の爆撃や魚雷が大和を襲う。そして、一発の爆弾が弾薬庫に被弾し、大和は乗組員と共に轟沈する、はずだった。しかし大和は2015年、戦後70年の世へとタイムスリップしてしまう。大和は現代の艦艇、航空機、そして日本国に翻弄される。そしてそんな中、中国が尖閣諸島への攻撃を行い、その動乱に艦長の江熊たちと共に大和も巻き込まれていく。
世界最大の戦艦と呼ばれた戦艦と、艦長江熊をはじめとした乗組員が現代と戦う、逆ジパング的なストーリー←これを言って良かったのか
主な登場人物
艦長 江熊 副長兼砲雷長 尾崎 船務長 須田 航海長 嶋田 機関長 池田
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
ソラノカケラ ⦅Shattered Skies⦆
みにみ
歴史・時代
2026年 中華人民共和国が台湾へ軍事侵攻を開始
台湾側は地の利を生かし善戦するも
人海戦術で推してくる中国側に敗走を重ね
たった3ヶ月ほどで第2作戦区以外を掌握される
背に腹を変えられなくなった台湾政府は
傭兵を雇うことを決定
世界各地から金を求めて傭兵たちが集まった
これは、その中の1人
台湾空軍特務中尉Mr.MAITOKIこと
舞時景都と
台湾空軍特務中士Mr.SASENOこと
佐世野榛名のコンビによる
台湾開放戦を描いた物語である
※エースコンバットみたいな世界観で描いてます()
天下人織田信忠
ピコサイクス
歴史・時代
1582年に起きた本能寺の変で織田信忠は妙覚寺にいた。史実では、本能寺での出来事を聞いた信忠は二条新御所に移動し明智勢を迎え撃ち自害した。しかし、この世界線では二条新御所ではなく安土に逃げ再起をはかることとなった。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる