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43話
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『フェーリ、助けてくれてありがとう』
『油断しない方が良い。あと王族の方は見ない方が良いね』
『王妃様はこちらを見ているの?』
『時々ね。王様も気にしてるよ。王子達は関心が無さそうに見えるけど、令嬢が群がっているからよく分からない』
気にしているのが、ふらついたせいか候補に入れたいのか分からないわね。
下位の方達のダンスが終わり、お兄様にエスコートされ中央に進み出る。
「ミュリー、力を抜いて身を任せて」
「ダンスでも体調が悪いふりなんて出来ますの?」
「それっぽく見せる事は出来るからね」
「まぁ、何だか楽しみです」
曲が流れ出し、お兄様のリードに身を任せる。
他の方よりゆったりと踊り、お兄様に支えられているような感じに見せる。実際にはちゃんと踊れているわよ。
「ふふ、何だか不思議な感じです」
「デビュタントだから、気持ちよく踊らせてあげたかったけどね」
「これはこれで、面白くて楽しいです」
「楽しんでもらえて良かったけれど、あまり笑い過ぎたら駄目だよ」
「あら?それは…なかなか難しいですわ」
お兄様と体調が悪い風のダンスを踊り切り、両親の元へ戻る。
「2人共、よく出来ていたよ」
「私達はご挨拶に行くから、フェリクス、ミュリエルを休ませてあげてね」
「はい。任せてください」
両親とお兄様のやり取りに笑ってしまいそうだわ。
少し疲れている風の顔を作って、私も演技を頑張らなくちゃね。
*****
壁際のソファへ座ると何だかほっとする。
「フェル兄様、先程のは冗談でしょうか?」
「どうかな?でも…第二王子とご令嬢方の性格が合わないのは事実だよ。だから決まらないんだ」
「性格はどうにもなりませんものね…」
「そうだね。でも、王族は好きな相手と結婚できる方が珍しいから」
誰でもお妃候補になれる訳では無いわ。私は健康面と養女という事で候補に入る事はまず無い。
余程候補となれる令嬢が居なければ、可能性はあったから病弱設定を継続しているわ。
「私に声をかけるほど相性が悪いのですか?」
「そうらしいよ。まぁ…典型的な政略になるだろうね」
「少し可哀想な気もしますが、目を付けられるのなら婚約者を決めてしまった方が良かったと思いましたわ」
「ミュリエルは誰か思う方は居るのかな?」
そう聞かれて、ついお兄様を半目で睨んでしまう。
「フェル兄様が基準になっているので、候補すら居ませんわ」
「ふふ。僕が基準なの?」
「だって知っている男の人なんて、お兄様とアルベール様、後はリュカくらいですもの。基準が厳しくなるのは仕方ありませんわ」
「アルもリュカも何だかんだ優しいし優秀だからね。確かに基準が高いかな」
お兄様は笑っているけれど、笑い事では無いのよ。
「でも、王妃様に目を付けられたのは不味いね」
「私は元々伯爵家ですから、それもあって候補では無いのに…」
「それだけ深刻なんだろう。第一王子も順調とは言えないからね」
「やはり、早めに婚約を決めてしまった方が安心出来そうです…」
焦らなくても良いと両親は言ってくれたけれど、今回の事で変わるかもしれないわね。
「フェル兄様のお友達に良さそうな方は居ませんの?」
「僕の友人に?」
「フェル兄様が良いと言う方なら間違いありませんもの」
「そうだねぇ…この件は父様達も交えて話そう」
「分かりましたわ」
デビュタントで色々な方に会って…という、最初の予定が完全に崩れちゃったわ。
*****
お兄様と話しているとアルベール様が歩いてくるのが見えた。
「ミュリエル嬢、デビュタントおめでとう」
「ありがとうございます」
「こんな所に居るなんてどうしたんだ?」
「ミュリーが王妃様に目を付けられてね。演技中なんだ」
「あぁ…なるほどな」
「ジュリエット様は候補に入りませんの?」
「今なら可能だろうが、殿下方がなぁ…」
ジュリエット様とはご挨拶程度の交流だけれど、随分変わられたわ。
学園での成績も良いし、後から候補に入れるのならジュリエット様の方が血筋的にも良いわ。
「昔の事をまだ言っているのか?子供の時の事をいつまでも」
「殿下も令嬢も、どっちも難アリだからな」
殿下も性格に問題があるの?どっちもどっちなら諦めて義務を受け入れたら良いのに。
「まぁ、どうなるか分からないが早めに動いた方が良いぞ」
「分かってるよ」
「アルベール様。お兄様にもお願いしたのですが、アルベール様のお友達に良さそうな方は居ませんの?」
「あ~…おじさん達と話し合っても、気に入るやつがいなければ紹介してやるよ」
「ありがとうございます。これで王族から逃げられそうですわ」
「まぁ、ミュリエルは腹芸が出来ないから、王族には向かないからな」
確かに腹芸は苦手よ。でも王子様だからって難アリな人なんて嫌よ。
お兄様とアルベール様が推薦する方なら1番良いわよね?
お見合いってどんな感じかしら?ちょっと楽しみだわ。
『油断しない方が良い。あと王族の方は見ない方が良いね』
『王妃様はこちらを見ているの?』
『時々ね。王様も気にしてるよ。王子達は関心が無さそうに見えるけど、令嬢が群がっているからよく分からない』
気にしているのが、ふらついたせいか候補に入れたいのか分からないわね。
下位の方達のダンスが終わり、お兄様にエスコートされ中央に進み出る。
「ミュリー、力を抜いて身を任せて」
「ダンスでも体調が悪いふりなんて出来ますの?」
「それっぽく見せる事は出来るからね」
「まぁ、何だか楽しみです」
曲が流れ出し、お兄様のリードに身を任せる。
他の方よりゆったりと踊り、お兄様に支えられているような感じに見せる。実際にはちゃんと踊れているわよ。
「ふふ、何だか不思議な感じです」
「デビュタントだから、気持ちよく踊らせてあげたかったけどね」
「これはこれで、面白くて楽しいです」
「楽しんでもらえて良かったけれど、あまり笑い過ぎたら駄目だよ」
「あら?それは…なかなか難しいですわ」
お兄様と体調が悪い風のダンスを踊り切り、両親の元へ戻る。
「2人共、よく出来ていたよ」
「私達はご挨拶に行くから、フェリクス、ミュリエルを休ませてあげてね」
「はい。任せてください」
両親とお兄様のやり取りに笑ってしまいそうだわ。
少し疲れている風の顔を作って、私も演技を頑張らなくちゃね。
*****
壁際のソファへ座ると何だかほっとする。
「フェル兄様、先程のは冗談でしょうか?」
「どうかな?でも…第二王子とご令嬢方の性格が合わないのは事実だよ。だから決まらないんだ」
「性格はどうにもなりませんものね…」
「そうだね。でも、王族は好きな相手と結婚できる方が珍しいから」
誰でもお妃候補になれる訳では無いわ。私は健康面と養女という事で候補に入る事はまず無い。
余程候補となれる令嬢が居なければ、可能性はあったから病弱設定を継続しているわ。
「私に声をかけるほど相性が悪いのですか?」
「そうらしいよ。まぁ…典型的な政略になるだろうね」
「少し可哀想な気もしますが、目を付けられるのなら婚約者を決めてしまった方が良かったと思いましたわ」
「ミュリエルは誰か思う方は居るのかな?」
そう聞かれて、ついお兄様を半目で睨んでしまう。
「フェル兄様が基準になっているので、候補すら居ませんわ」
「ふふ。僕が基準なの?」
「だって知っている男の人なんて、お兄様とアルベール様、後はリュカくらいですもの。基準が厳しくなるのは仕方ありませんわ」
「アルもリュカも何だかんだ優しいし優秀だからね。確かに基準が高いかな」
お兄様は笑っているけれど、笑い事では無いのよ。
「でも、王妃様に目を付けられたのは不味いね」
「私は元々伯爵家ですから、それもあって候補では無いのに…」
「それだけ深刻なんだろう。第一王子も順調とは言えないからね」
「やはり、早めに婚約を決めてしまった方が安心出来そうです…」
焦らなくても良いと両親は言ってくれたけれど、今回の事で変わるかもしれないわね。
「フェル兄様のお友達に良さそうな方は居ませんの?」
「僕の友人に?」
「フェル兄様が良いと言う方なら間違いありませんもの」
「そうだねぇ…この件は父様達も交えて話そう」
「分かりましたわ」
デビュタントで色々な方に会って…という、最初の予定が完全に崩れちゃったわ。
*****
お兄様と話しているとアルベール様が歩いてくるのが見えた。
「ミュリエル嬢、デビュタントおめでとう」
「ありがとうございます」
「こんな所に居るなんてどうしたんだ?」
「ミュリーが王妃様に目を付けられてね。演技中なんだ」
「あぁ…なるほどな」
「ジュリエット様は候補に入りませんの?」
「今なら可能だろうが、殿下方がなぁ…」
ジュリエット様とはご挨拶程度の交流だけれど、随分変わられたわ。
学園での成績も良いし、後から候補に入れるのならジュリエット様の方が血筋的にも良いわ。
「昔の事をまだ言っているのか?子供の時の事をいつまでも」
「殿下も令嬢も、どっちも難アリだからな」
殿下も性格に問題があるの?どっちもどっちなら諦めて義務を受け入れたら良いのに。
「まぁ、どうなるか分からないが早めに動いた方が良いぞ」
「分かってるよ」
「アルベール様。お兄様にもお願いしたのですが、アルベール様のお友達に良さそうな方は居ませんの?」
「あ~…おじさん達と話し合っても、気に入るやつがいなければ紹介してやるよ」
「ありがとうございます。これで王族から逃げられそうですわ」
「まぁ、ミュリエルは腹芸が出来ないから、王族には向かないからな」
確かに腹芸は苦手よ。でも王子様だからって難アリな人なんて嫌よ。
お兄様とアルベール様が推薦する方なら1番良いわよね?
お見合いってどんな感じかしら?ちょっと楽しみだわ。
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