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38話

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3年生になるとクラスの雰囲気が変わったわ。

婚約に向けてお付き合いを始める方が増えたせいかしら?

お相手の方が学園に居るのなら、週末お茶会をするよりも学園で交流する方が、仲を深められるものね。

「ミュリエル様はお見合いはしませんの?」
「ゆっくり考えようかと思っています。両親も焦らなくて良いと言ってくれたので」

シャルロット様は婿候補の1人とお付き合いを始めたわ。

お相手の方ともご挨拶をしたけれど、穏やかな方だったわ。

「ソフィア様はすぐに婚約されると思いましたのに」
「幼馴染として接するのとは、やはり違いますから…」
「照れるソフィア様は可愛らしいですわ」

ソフィア様は相思相愛だと感じた幼馴染の伯爵子息と、お付き合いを始めたわ。

お互い照れがあるみたいで、初々しくて見ているこちらが照れてしまうわ。

「アリアーヌ様はお見合いは如何でしたか?」
「何人かお会いしましたが、短い時間ではよく分かりませんわ」
「1人も気になる方はいらっしゃらなかったの?」
「そうではありませんが…まだ手紙で様子を見てますわ」

アリアーヌ様も良い出会いがあったようで良かったわ。

こうして1年お互いに見守っているから、婚約が決まると喜び合っていたのかしら?

実際に3年生になって分かる事もあるのね。胸焼けがするなんて失礼だったわ。



*****



来年のデビュタントで恥をかかないために、週末はダンスの練習が増えたわ。

リュカに相手をしてもらう事が多いけれど、時間が合えばお兄様も相手をしてくれるわ。

2人共リードが上手で、とっても踊りやすいのよ。

でも私の体力が無いから3曲ほどで疲れてしまうわ。

「はぁ…ダンスって結構ハードよね」
「踊っていれば体力もつきますよ」

息も乱れないリュカに言われても…。

「夜会では会話をしながら踊りますから、5曲くらいは続けて踊れるようにならないとキツイですよ?」
「そうだったわ。踊りながら会話もするのよね…」
「次からは喋りながらにしましょうね」

ものすごく良い笑顔で言われたわ…。

魔法を教えてくれた時もそうだったけれど、リュカって妥協してくれないのよね…。

脳筋なのかしら?

「ミュリー、練習は終わったの?」
「フェル兄様。今は休憩中ですわ」
「じゃあ、次は僕と踊ろうか?」
「はい。次からは話しながら踊る練習なんです」
「ミュリーは何曲目で息が上がっちゃうの?」
「3曲です」
「じゃあ、スローテンポで慣れよう。それから夜会でよくかかる曲を練習しよう」

テンポの違う3曲で練習していたけれど、やはりお兄様は優しいわ。

「スローテンポなら、お話しながら踊れそうです」
「まだ時間は沢山あるから、ゆっくり慣れれば良いよ」

ミアのピアノに合わせてお兄様と踊る。

「お話って、どんな事を話すのですか?」
「人によって色々だよ。僕はあまり話さないから参考にならないね」
「そうなのですね」

スローテンポは話しやすいけれど、他の曲に比べて密着度が高いから、お兄様相手でも少し照れるわ。

「ミュリー、顔が赤いけど大丈夫?」
「大丈夫です。その…この距離感が少し恥ずかしくて…」
「ふふっ。膝に乗せても大丈夫だったのに?」
「あれは、フェル兄様が癒されると言うから我慢していましたの」

昨年の夏季休暇が終わる頃から膝に乗せられなくなったから、久しぶりのこの距離感は恥ずかしいわ。

「じゃあ、慣れるためにまた癒してもらおうかな」
「我慢していたと言いましたわ」
「うん。でも慣れないとね。そんな顔をしていたら、僕以外と踊らせてあげられないからね」

キラキラした笑顔で言われるけれど、すごく圧を感じるのよ…。

ちょっと顔が赤くなるのも駄目なの?

日頃お兄様でも手や髪に触れる程度で、触れ合う事に慣れていないのだから仕方ないと思うわ。

男性との密着に慣れる日なんて来るのかしら?



*****



シャルロット様とソフィア様は、ランチをお相手と過ごす事もあるから4人揃う事も減ってきたわ。

「お2人は順調ですか?」
「ええ。少しは慣れてきましたわ」
「お2人を見ていると少し羨ましいです」
「あら?ミュリエル様も恋愛してみたくなりましたの?」
「そうではありませんが…皆様とても幸せそうなので」

まだお付き合いの手前である、アリアーヌ様も幸せそうなのよ。

それに皆様、更に可愛く美しくなられたのよね。

「ふふ、ミュリエル様の恋愛への苦手意識は減りましたか?」
「苦手という訳では…どうしてもお兄様と比べてしまうので…」
「フェリクス様と比較されるとあれですわね…」
「身近に優秀な方がいるのも大変ですわね。でも、気持ちは少し分かりますわ」

ソフィア様はやはり幼馴染と比べてしまっていたそう。

「何となく基準が出来てしまいますのよね」
「そうなんです」
「でも、ミュリエル様は基準がフェリクス様ですからねぇ…」

皆様、憐れまないで…。

お兄様を超える方が、そうそう居ない事は分かってますわ…。



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