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34話
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夏季休暇まであと少し。
お茶会でも学園でも気になる人なんて出来ないままよ。クラスメイトの子息とも挨拶以外、会話をする機会があまり無いし。
お茶会の方が話せるかと思ったのに、今まで通り当たり障りない感じ…。表面的な会話じゃ相手がどんな人かも分からない。興味を持つ以前の問題よ。
「私って社交が下手なのでしょうか…」
ついシャルロット様達に愚痴をこぼしてしまう。
「私達も令嬢とは交流出来ても、子息とは当たり障りのない会話になってしまいますわ」
「そうですよ。学園でも顔を合わせると言っても、話す事もそうありませんしね」
「私は婿探しのお茶会もありますから、皆様よりは交流はしていますが…より良い方をと比べて見ていますからねぇ」
シャルロット様だけは一人娘で家を継ぐから、10歳から何度かお見合いをして、何人かと定期的に交流をしているそう。
最初は私が言い出したけれど、皆様もデビュタントまでに相手を見つけたい気持ちがあるから、結構真剣に悩んでいたりする。
「やはり、小説のようにはいきませんわね…」
そう言って溜息をつくアリアーヌ様とソフィア様。
「見目の良い方なら興味が湧くかと思ったのですが…」
「ミュリエル様は見慣れていらっしゃるから難しくないですか?」
そうなのよ。お兄様にアルベール様。そして専属護衛となったリュカも、お兄様と並んでも見劣りしないくらいに整っているから、令嬢が騒ぐ方を見ても「綺麗な顔だな」と思うだけ。
むしろ、そういう方は周りから妬まれそうで遠慮したいという本音も…。
「ええ…何も思いませんわ…」
「まぁ…仕方ありませんわよね…」
でも…少しもときめかないってどうなのかしら?
*****
特に何も無いまま、夏季休暇に入ってしまったわ。
学園が無いとお茶会しか出会う場が無いけれど、社交も避暑地にほぼ移ってしまう。
お母様といくつか招待されているから、2週間ほど行く事になっているから楽しみだわ。
「はぁ…ミュリーとしばらく会えないなんて…」
「フェル兄様、たった2週間ですわ」
今だってお兄様が忙しく週末会えなければ、2週間ぶりに会うなど普通なのに。
「避暑地だと羽目を外す者も居るから気をつけるんだよ」
「はい。気をつけますわ」
その後も色々と約束させられたわ…。卒業前の心配性だった時を思い出すわね。
「そういえば、最近は子息とも積極的に話しているんだって?」
「もう少し交流を持ってみたいと思いましたが、あまり上手く行きませんの…」
「そうなの?」
「ええ。会話も続きませんし、ご令嬢方が騒いでいる方も興味が持てませんし…」
「人気の子息なのに?」
「確かに顔はお綺麗ですが、フェル兄様が傍に居ますのよ?フェル兄様を超える方なんて居ませんもの」
「ふふっ、ありがとう」
少し照れているのか、お兄様の目元が薄ら赤くなっているわ。
「私が居ないからと、お仕事頑張り過ぎないで下さいね」
「気をつけるよ」
「もう!約束ですからね」
お父様達とは最近まともに会えていないから心配しているのに、撫でられても誤魔化されませんわ!
それから数日後、お母様と避暑地へと向かったわ。
昨年、前世で言う高原リゾートのようと聞いていたけれど、自然の中にある別荘は気持ちが良いわね。
お茶会のない日は森を散策したりと、リフレッシュ出来たわ。お母様とも久しぶりにゆっくり過ごせて楽しかった。
フェーリは精霊だから自然豊かな所は好きみたいで、傍にリュカ達が居るのもあり、よく何処かへ飛んで行っていたわ。
あと…珍しくフェーリにお願いされて愛し子の力を使いましたわ。土地が痩せてきているそうで、肥沃になり動物達が飢えないようにと願いを込めた。
初めて大きな力を使ったので少し疲れたけれど、フェーリがお願いするなんて余程の事だもの全力でやりましたわ!
フェーリには『やり過ぎ!』と言われたけれど、足りないよりは良いと思ったのに…何故か怒られたのよ。
お茶会の方は…可もなく不可もなくと言った感じだったわね。
子息令嬢を誑かす方達も初めて見かけたわ。お母様と一緒に居たから近づいては来なかったけれど。
ただ…見目は確かに良いけれど、何となく笑い方が気持ち悪い。何故あれに騙されるのか不思議ですわ。
*****
邸に戻ってもあまり予定が無いので、せっせと「おまじない」の刺繍を刺したわ。
両親とお兄様にもですが、使用人にも部屋に置いておくだけで癒される「おまじない」の物を刺繍したわ。効果は疲れが取れる、よく眠れるかしら?
安眠効果のあるポプリを入れたから、多分、皆寝室に置いてくれたと思う。
『力を使いながらの刺繍も早くなったね』
『当たり前よ。いくつ作ったと思っているの?そういえば避暑地は力の効果は出てるかしら?』
『大丈夫。秋は豊作だよ』
『そう?良かったわ』
『でも、あんなに注ぎ込まなくても…』
『だって大事な友達のお願いだもの』
『ありがとう…』
照れているフェーリなんて珍しいわ。何だか可愛いわ。
『また何かあれば手伝わせてね』
『君あまり遠出しないだろ?』
確かに遠出は2回目ね。
『他にもあるの?』
『あるけど…その地に行けなければ力は届かないよ』
『フェーリは動物達を連れて来ていたじゃない?あれってどうやっていたの?』
『転移だよ』
『私を転移で連れて行けない?』
『出来るけど…良いの?』
『良いわよ。ただ見つからないように夜ね』
『分かったよ』
フェーリには色々な事を教えてもらったけれど、やっと少し恩返しが出来るわね。
お茶会でも学園でも気になる人なんて出来ないままよ。クラスメイトの子息とも挨拶以外、会話をする機会があまり無いし。
お茶会の方が話せるかと思ったのに、今まで通り当たり障りない感じ…。表面的な会話じゃ相手がどんな人かも分からない。興味を持つ以前の問題よ。
「私って社交が下手なのでしょうか…」
ついシャルロット様達に愚痴をこぼしてしまう。
「私達も令嬢とは交流出来ても、子息とは当たり障りのない会話になってしまいますわ」
「そうですよ。学園でも顔を合わせると言っても、話す事もそうありませんしね」
「私は婿探しのお茶会もありますから、皆様よりは交流はしていますが…より良い方をと比べて見ていますからねぇ」
シャルロット様だけは一人娘で家を継ぐから、10歳から何度かお見合いをして、何人かと定期的に交流をしているそう。
最初は私が言い出したけれど、皆様もデビュタントまでに相手を見つけたい気持ちがあるから、結構真剣に悩んでいたりする。
「やはり、小説のようにはいきませんわね…」
そう言って溜息をつくアリアーヌ様とソフィア様。
「見目の良い方なら興味が湧くかと思ったのですが…」
「ミュリエル様は見慣れていらっしゃるから難しくないですか?」
そうなのよ。お兄様にアルベール様。そして専属護衛となったリュカも、お兄様と並んでも見劣りしないくらいに整っているから、令嬢が騒ぐ方を見ても「綺麗な顔だな」と思うだけ。
むしろ、そういう方は周りから妬まれそうで遠慮したいという本音も…。
「ええ…何も思いませんわ…」
「まぁ…仕方ありませんわよね…」
でも…少しもときめかないってどうなのかしら?
*****
特に何も無いまま、夏季休暇に入ってしまったわ。
学園が無いとお茶会しか出会う場が無いけれど、社交も避暑地にほぼ移ってしまう。
お母様といくつか招待されているから、2週間ほど行く事になっているから楽しみだわ。
「はぁ…ミュリーとしばらく会えないなんて…」
「フェル兄様、たった2週間ですわ」
今だってお兄様が忙しく週末会えなければ、2週間ぶりに会うなど普通なのに。
「避暑地だと羽目を外す者も居るから気をつけるんだよ」
「はい。気をつけますわ」
その後も色々と約束させられたわ…。卒業前の心配性だった時を思い出すわね。
「そういえば、最近は子息とも積極的に話しているんだって?」
「もう少し交流を持ってみたいと思いましたが、あまり上手く行きませんの…」
「そうなの?」
「ええ。会話も続きませんし、ご令嬢方が騒いでいる方も興味が持てませんし…」
「人気の子息なのに?」
「確かに顔はお綺麗ですが、フェル兄様が傍に居ますのよ?フェル兄様を超える方なんて居ませんもの」
「ふふっ、ありがとう」
少し照れているのか、お兄様の目元が薄ら赤くなっているわ。
「私が居ないからと、お仕事頑張り過ぎないで下さいね」
「気をつけるよ」
「もう!約束ですからね」
お父様達とは最近まともに会えていないから心配しているのに、撫でられても誤魔化されませんわ!
それから数日後、お母様と避暑地へと向かったわ。
昨年、前世で言う高原リゾートのようと聞いていたけれど、自然の中にある別荘は気持ちが良いわね。
お茶会のない日は森を散策したりと、リフレッシュ出来たわ。お母様とも久しぶりにゆっくり過ごせて楽しかった。
フェーリは精霊だから自然豊かな所は好きみたいで、傍にリュカ達が居るのもあり、よく何処かへ飛んで行っていたわ。
あと…珍しくフェーリにお願いされて愛し子の力を使いましたわ。土地が痩せてきているそうで、肥沃になり動物達が飢えないようにと願いを込めた。
初めて大きな力を使ったので少し疲れたけれど、フェーリがお願いするなんて余程の事だもの全力でやりましたわ!
フェーリには『やり過ぎ!』と言われたけれど、足りないよりは良いと思ったのに…何故か怒られたのよ。
お茶会の方は…可もなく不可もなくと言った感じだったわね。
子息令嬢を誑かす方達も初めて見かけたわ。お母様と一緒に居たから近づいては来なかったけれど。
ただ…見目は確かに良いけれど、何となく笑い方が気持ち悪い。何故あれに騙されるのか不思議ですわ。
*****
邸に戻ってもあまり予定が無いので、せっせと「おまじない」の刺繍を刺したわ。
両親とお兄様にもですが、使用人にも部屋に置いておくだけで癒される「おまじない」の物を刺繍したわ。効果は疲れが取れる、よく眠れるかしら?
安眠効果のあるポプリを入れたから、多分、皆寝室に置いてくれたと思う。
『力を使いながらの刺繍も早くなったね』
『当たり前よ。いくつ作ったと思っているの?そういえば避暑地は力の効果は出てるかしら?』
『大丈夫。秋は豊作だよ』
『そう?良かったわ』
『でも、あんなに注ぎ込まなくても…』
『だって大事な友達のお願いだもの』
『ありがとう…』
照れているフェーリなんて珍しいわ。何だか可愛いわ。
『また何かあれば手伝わせてね』
『君あまり遠出しないだろ?』
確かに遠出は2回目ね。
『他にもあるの?』
『あるけど…その地に行けなければ力は届かないよ』
『フェーリは動物達を連れて来ていたじゃない?あれってどうやっていたの?』
『転移だよ』
『私を転移で連れて行けない?』
『出来るけど…良いの?』
『良いわよ。ただ見つからないように夜ね』
『分かったよ』
フェーリには色々な事を教えてもらったけれど、やっと少し恩返しが出来るわね。
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