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32話
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後期の試験も無事に終わり、お兄様の卒業まであと少し。
「ミュリーとこうして通えるのも、残りわずかだね」
「来年からは1人だと思うと寂しくなりますわ」
「必ずリュカと侍女を連れて行くんだよ」
「分かっております」
リュカは行き帰りは騎乗で護衛についてくれて居たけれど、来年からはリュカと侍女のミアかアンに、学園の使用人の待機所に居てもらう事になる。
そこまでしなくても良いと思うのに、お父様とお兄様が心配だからって聞かないのよね。過保護だと思うわ…。
「何かあれば直ぐにリュカ達に知らせるんだよ」
「ええ。シャルロット様達にも話してありますから」
「そう。朝くらいは一緒の馬車で出られたら良かったんだけどね」
学園と王宮は方向が違うから、私を送っていたらお兄様は毎朝遅刻してしまうわ…。
「どこかの子息に誘われても、軽率に受けてはいけないよ」
「それも分かっております。事前にお父様の許可を取らなければ、お断りすると約束しましたわ」
沢山ある注意事項も、覚えてしまうほど確認されているわ。
お兄様は夏季休暇の後からシスコン全開だったけれど、卒業を前に心配が尽きないみたい。
「大丈夫です。お兄様が心配するのでミア達に「しつこい子息の撃退法」というのを習っていますわ」
「それなら安心だね。ミュリーはこんなにも愛らしいのだから、学園でも血迷う者が出るかもしれないからね」
妹に撫でながら「愛らしい」とか駄目な気がするわ…。
アルベール様が止めてくれないから、お兄様のシスコンがどんどん酷くなっているの。
お兄様のシスコン全開と心配性が爆発して、ランチの時なんて「牽制しておかないとね」と皆様の前でも世話を焼かれ撫でられまくっているわ…。
牽制しないといけない危ない人なんて居たかしら?
お兄様のせいなのかクラスメイトの子息でさえ、用がないと話しかけてこなくなったのよ。
*****
「最近のフェリクス様は凄いですわね…」
カフェテリアから教室に戻る途中、アリアーヌ様に言われる。
「お兄様は心配しすぎですわ」
「まぁ…フェリクス様が居たから、1年何も無かったのかもしれませんしね」
「そうですが、多少は自分でトラブルを解決出来るようになりませんと…」
「確かに守られすぎて、いざと言う時に対処出来ないのも困りますわね」
「ソフィア様、分かって頂けますか!」
「ええ。私には10歳以上離れた兄姉がおりますが、先回りして何でもやってしまわれるので、嬉しいけれど困りましたわ。姉が嫁いでからは少し落ち着きましたが」
ソフィア様のご兄弟も相当過保護ね。
「私は弟しかおりませんから分かりませんわ」
「アリアーヌ様は弟君を甘やかしたりしませんの?」
「悩んでいたり落ち込んでいる時は甘やかしますが、主に愚痴を聞いているだけですわ。弟は将来家を継ぎますから勉強も大変そうですし、愚痴を吐き出させるくらいしか私には出来ませんから」
「アリアーヌ様って意外と優しいのね」
「シャルロット様、意外は余計よ!」
「ふふ、ごめんなさいね。でも私には兄弟が居ませんから、心配してもらえるのは羨ましいですわ」
シャルロット様のお母様は産後体調を崩され、2人目は望めなかったそう。
「しばらくはフェリクス様の牽制が効きますが、そのうち皆様忘れますわ。それからですわ」
「そうですね」
お兄様の牽制もさすがに5年は続かないわね。
それに私自身、皆様から注目されているわけではないもの。きっと大丈夫よ。
*****
あっという間にお兄様達の卒業の日を迎えた。
「フェル兄様、ご卒業おめでとうございます」
「ありがとう、ミュリー」
「1年だけですが一緒に通えて本当に嬉しかったです」
「僕もだよ。良い思い出が出来たよ」
「夜会、楽しんで来て下さいね」
卒業したらそれぞれ道が別れる。
家を継がない人や結婚が決まっていない人達は働きに出るから、今日を最後に会わなくなる人も居るそう。
「ミュリーをエスコートして出られないのが残念だよ」
卒業式の翌日にある夜会は卒業生と両親、そして婚約者しか出席出来ない。
5割増にキラキラした夜会服のお兄様は、心底残念だという顔をされ両親が苦笑いしているわ。
私はデビュー前だから夜会には参加出来ないのだけれど。
「家族全員参加したら、夜会はすごい人数になってしまいますわ」
「そうだね。5年生の負担が大変そうだ」
夜会は生徒会と5年生が主催する。お兄様も1年前に経験したからか、想像して苦笑いしている。
学園に居る使用人だけでは手が足りず、学生も給仕にも出るらしい。銀盆を持ってお兄様も出たのかしら?
「ふふ。学生最後の日を楽しんで下さいね」
「ありがとう。行ってくるよ」
両親とお兄様を見送り、晩餐まで部屋でのんびり過ごす。
『あ~あ、もうフェリクスの奇行も見れないのかぁ』
『奇行…フェーリそんな風に思っていたの?』
『だって君を見る男に笑顔で殺気飛ばしまくってたよ』
『え?殺気?』
殺気って飛ばせる物なの?よく分からないわ。
『きっと、お兄様は心配してくれているだけよ。貴族は色々と面倒くさいから』
『まぁ、守護精霊がついている君に危害を加えるのは無理だけどね』
『物理じゃなくて、貴族は陰口で攻撃するのよ』
『それは防げないね』
『ふふ、お兄様の牽制がしばらくは効くから大丈夫よ。フェーリは人に言えない愚痴を聞いてね』
『仕方ないなぁ』
学園生活は入学した頃に戻るだけ。きっとすぐに慣れるわ。
「ミュリーとこうして通えるのも、残りわずかだね」
「来年からは1人だと思うと寂しくなりますわ」
「必ずリュカと侍女を連れて行くんだよ」
「分かっております」
リュカは行き帰りは騎乗で護衛についてくれて居たけれど、来年からはリュカと侍女のミアかアンに、学園の使用人の待機所に居てもらう事になる。
そこまでしなくても良いと思うのに、お父様とお兄様が心配だからって聞かないのよね。過保護だと思うわ…。
「何かあれば直ぐにリュカ達に知らせるんだよ」
「ええ。シャルロット様達にも話してありますから」
「そう。朝くらいは一緒の馬車で出られたら良かったんだけどね」
学園と王宮は方向が違うから、私を送っていたらお兄様は毎朝遅刻してしまうわ…。
「どこかの子息に誘われても、軽率に受けてはいけないよ」
「それも分かっております。事前にお父様の許可を取らなければ、お断りすると約束しましたわ」
沢山ある注意事項も、覚えてしまうほど確認されているわ。
お兄様は夏季休暇の後からシスコン全開だったけれど、卒業を前に心配が尽きないみたい。
「大丈夫です。お兄様が心配するのでミア達に「しつこい子息の撃退法」というのを習っていますわ」
「それなら安心だね。ミュリーはこんなにも愛らしいのだから、学園でも血迷う者が出るかもしれないからね」
妹に撫でながら「愛らしい」とか駄目な気がするわ…。
アルベール様が止めてくれないから、お兄様のシスコンがどんどん酷くなっているの。
お兄様のシスコン全開と心配性が爆発して、ランチの時なんて「牽制しておかないとね」と皆様の前でも世話を焼かれ撫でられまくっているわ…。
牽制しないといけない危ない人なんて居たかしら?
お兄様のせいなのかクラスメイトの子息でさえ、用がないと話しかけてこなくなったのよ。
*****
「最近のフェリクス様は凄いですわね…」
カフェテリアから教室に戻る途中、アリアーヌ様に言われる。
「お兄様は心配しすぎですわ」
「まぁ…フェリクス様が居たから、1年何も無かったのかもしれませんしね」
「そうですが、多少は自分でトラブルを解決出来るようになりませんと…」
「確かに守られすぎて、いざと言う時に対処出来ないのも困りますわね」
「ソフィア様、分かって頂けますか!」
「ええ。私には10歳以上離れた兄姉がおりますが、先回りして何でもやってしまわれるので、嬉しいけれど困りましたわ。姉が嫁いでからは少し落ち着きましたが」
ソフィア様のご兄弟も相当過保護ね。
「私は弟しかおりませんから分かりませんわ」
「アリアーヌ様は弟君を甘やかしたりしませんの?」
「悩んでいたり落ち込んでいる時は甘やかしますが、主に愚痴を聞いているだけですわ。弟は将来家を継ぎますから勉強も大変そうですし、愚痴を吐き出させるくらいしか私には出来ませんから」
「アリアーヌ様って意外と優しいのね」
「シャルロット様、意外は余計よ!」
「ふふ、ごめんなさいね。でも私には兄弟が居ませんから、心配してもらえるのは羨ましいですわ」
シャルロット様のお母様は産後体調を崩され、2人目は望めなかったそう。
「しばらくはフェリクス様の牽制が効きますが、そのうち皆様忘れますわ。それからですわ」
「そうですね」
お兄様の牽制もさすがに5年は続かないわね。
それに私自身、皆様から注目されているわけではないもの。きっと大丈夫よ。
*****
あっという間にお兄様達の卒業の日を迎えた。
「フェル兄様、ご卒業おめでとうございます」
「ありがとう、ミュリー」
「1年だけですが一緒に通えて本当に嬉しかったです」
「僕もだよ。良い思い出が出来たよ」
「夜会、楽しんで来て下さいね」
卒業したらそれぞれ道が別れる。
家を継がない人や結婚が決まっていない人達は働きに出るから、今日を最後に会わなくなる人も居るそう。
「ミュリーをエスコートして出られないのが残念だよ」
卒業式の翌日にある夜会は卒業生と両親、そして婚約者しか出席出来ない。
5割増にキラキラした夜会服のお兄様は、心底残念だという顔をされ両親が苦笑いしているわ。
私はデビュー前だから夜会には参加出来ないのだけれど。
「家族全員参加したら、夜会はすごい人数になってしまいますわ」
「そうだね。5年生の負担が大変そうだ」
夜会は生徒会と5年生が主催する。お兄様も1年前に経験したからか、想像して苦笑いしている。
学園に居る使用人だけでは手が足りず、学生も給仕にも出るらしい。銀盆を持ってお兄様も出たのかしら?
「ふふ。学生最後の日を楽しんで下さいね」
「ありがとう。行ってくるよ」
両親とお兄様を見送り、晩餐まで部屋でのんびり過ごす。
『あ~あ、もうフェリクスの奇行も見れないのかぁ』
『奇行…フェーリそんな風に思っていたの?』
『だって君を見る男に笑顔で殺気飛ばしまくってたよ』
『え?殺気?』
殺気って飛ばせる物なの?よく分からないわ。
『きっと、お兄様は心配してくれているだけよ。貴族は色々と面倒くさいから』
『まぁ、守護精霊がついている君に危害を加えるのは無理だけどね』
『物理じゃなくて、貴族は陰口で攻撃するのよ』
『それは防げないね』
『ふふ、お兄様の牽制がしばらくは効くから大丈夫よ。フェーリは人に言えない愚痴を聞いてね』
『仕方ないなぁ』
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