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20話

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とうとう入学式の日だわ。

制服はお兄様と同じような白のブレザーにミモレ丈のワンピース。入学した年でリボンとネクタイの色が違うの。私は赤だけれど、お兄様は青。

装飾品は髪飾り以外は基本禁止。身分証にもなる家紋入りの物は良いから、お父様から懐中時計とブレスレットをプレゼントで頂いたわ。

ちなみに…身長は145cmをやっと超えたわ。10歳から10cm。あと20cmは欲しいわね…。

「ミュリー、入学おめでとう」
「ありがとうございます。今日からフェル兄様と一緒に通学できるのも嬉しいです」
「僕もだよ」

在校生は授業があるから入学式は両親だけが来るわ。

「帰りは教室まで迎えに行くからね」
「分かりました」

お兄様と別れてお父様達と講堂に向かう。

「ミュリエル。学園では今までより沢山の人と出会うだろう、色々な噂も耳にすると思うが堂々としていなさい」
「はい。お父様」
「何かあれば、1人で悩まずに相談するのよ?帰りの馬車でフェリクスに相談しなさいね」
「はい。お母様」

両親も学園に行くのは心配みたい。

今まで噂はフェーリからしか聞いたことがない。両親が守ってきてくれたけれど、学園ではそういう訳にもいかないものね。

入学式は爵位順に家ごとに座るから、特にトラブルも無く学園長の長いお話を聞いて終わったわ。



*****



両親と別れ教室へと向かう。

クラスは爵位順。高位と下位では家で学ぶ事に差があるからよ。2年生からは成績でクラスが決まるから頑張らなくちゃ。

「ミュリエル様、同じクラスですわね」
「シャルロット様、嬉しいです。よろしくお願いしますね」
「こちらこそ」

他にもお茶会でよく話す2人の令嬢もクラスに居てほっとしたわ。席が決まっていないから、窓際に4人で固まって座った。

お茶会では自分から話しかけられず、あまり交友関係は広がらなかったわ。だからお友達は少ないのよ…。

学園で新しいお友達はできるのかしら?


午前中は授業で使う教室や注意事項を、担任の先生から説明された。毎年よくあるトラブルを例題で教えてくれるから、とても分かりやすかったわ。

あと学園内では多少のマナーは免除されるのよ。

下位の者から話しかけられないと、先生からの伝言を伝えられないし、2年生からは成績でクラスが別れるから、高位と下位の爵位が混在するから困るわ。

だからといって、あまりマナーを無視しすぎるのは駄目らしい。


シャルロット様達とカフェテリアにランチを食べに行く。

カフェテリアは校舎からつながる中庭にあるわ。3つのガラスのドームが繋がっていて、一見すると大きな温室みたい。

中は陽の光が入り明るく、2階席もあるけれど2階は高位貴族専用。中央ドームの2階は王族専用よ。

給仕がいるから席に着いて料理を頼むの。テイクアウトもあって外で食べたりも出来るそうよ。

「カフェテリア、素敵ですね…」

ほわぁ…と見上げていると、シャルロット様に2階に促されたわ。

「ふふ、ミュリエル様はこういう建物は初めてですか?」
「はい。邸の温室はもっと小さいので」
「あら?では1度王立植物園に行く事をお勧めしますわ」
「王立植物園?」
「ええ。国内最大の温室があって、中にカフェもありますのよ」

お茶会で親しくなった、クラスメイトのアリアーヌ様とソフィア様が教えてくれる。

「まぁ、素敵ですわね」

皆様との身長の差もあまり縮まらないせいか、何となく皆様小さい子をお世話している感がある…お兄様にお世話され慣れて、普通に受け入れてしまっているわ。

『君は何だか危なっかしいから、周りがしっかりするね』とフェーリの声が聞こえてきた。危なっかしいて何処がよ?

フェーリは妖精が見える人が居ると面倒だからと姿を消して近くに居るわ。

「午後はテストですわね」
「私達のクラスは魔法の実技からね」
「少し緊張しますわ…」

午後は現在の実力を見るテスト。

私達のクラスは魔法実技、魔法学、国算社英となるわ。ただ外国語は1年生だと習得に差があるから、基礎が出来ているか見るだけらしい。

魔法実技は全ての属性を使う。適正のない属性もどの程度使えるか確認されるの。

私は水と光は中級、他の属性は初級で威力はかなり落としたわ。

周りを見ていると、思ったより皆様苦戦しているんですもの…もう少し失敗するべきだったかしら?

フェーリいわく『魔力操作が甘いから、適性のある属性も下手』なんだそう。

放課後、私はお兄様を待つから皆様と教室で別れたわ。「また明日」と言うのが何だか新鮮ね。



*****



お兄様と馬車での帰り道。

「学園初日はどうだった?」
「シャルロット様達とクラスが同じで楽しかったです」
「そう、良かったね」
「カフェテリアはとても大きくて驚きましたわ」
「全生徒が集まるからね。ちゃんと2階に行ったかい?」
「はい。シャルロット様がその方が良いだろうと」
「そうだね。何かあったらすぐに言ってね」
「はい。お兄様」

アリアーヌ様達に教えてもらった、王立植物園の話をすると、今度お兄様が連れて行ってくれると約束してくれたわ。

緊張していたせいか、その夜は湯浴みの途中で半分夢の中だった。



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