女神の愛し子だけど役目がありません!

猫ヶ沢山

文字の大きさ
上 下
13 / 51

12話

しおりを挟む
6歳になったわ。

体力はついてきたけれど、体はまだ小さいのよね…。大体1歳遅れくらい。

でもダンスは曲に合わせて踊る練習になったのよ。1番簡単なワルツを1曲踊るだけで、フラフラになっちゃうけれど。

「足運びはしっかり覚えていますね。1曲通して踊れるようになれば次の曲に進みましょう」
「はい。ありがとうございました」

執事のテランスさん、忙しいのにずっとダンスの先生をしてくれているの。

今は何小節かで区切って1曲踊っているけれど、通して踊ったら死にそう…もっと体力をつけたいわ…。

でも1曲通して踊れるようになったら、お兄様と練習するんだって。足を踏んでしまわないよう、練習頑張らなくちゃ。



*****



家紋の刺繍はもう何枚刺したか分からないけれど、先生からやっと合格をもらったわ。お父様にお手紙を添えてプレゼントしたの。

凄く喜んでくれて、抱き上げられてクルクル回されたわ。

目が回った所でテランスさんが助けてくれたけど、もっと早く助けて欲しかった…。

お父様は優しいけれど、何となくクールなイメージがあったから意外だったわ。プレゼントしたハンカチは額縁に入れて執務室に飾ってあるって、テランスさんがこっそり教えてくれたの。


昨年、色々と苦戦していた事も1年経ったら慣れてきたわ。

刺繍はゆっくりなら綺麗に刺せるし、あんなに覚えられなかった貴族名鑑も領地も覚えたわ。

元々この体が優秀なのか、中身が大人のせいなのかは分からないけれど、目立ちたくないのに「ランベール侯爵家のご令嬢は優秀だ」て噂があるとフェーリが教えてくれた。

『子供の時にちょっと出来たからって…』
『君くらいの年齢の貴族の子供は、大体が生意気で我儘だからね』
『お兄様はそんな事ないわ』
『大体って言ったろ?君らみたいな方が少ないんだよ』
『お茶会に出る頃には直るのかな?』
『無理じゃない?』
『はぁ…そんな子達とお茶するの面倒くさいな…』
『嫌になったら、一緒に冒険に出ちゃおうよ』
『フェーリと冒険…凄く楽しそうね』
『君の守護精霊だからね。いつでも一緒だよ』

時々優しいんだよね。フェーリってやっぱりツンデレ?

でも愛し子の力の訓練は相変わらず鬼教官よ。魔力操作みたいな事をずっとしている。力が強いからこそ大事なんだって。

もし力が暴走したら、フェーリにも止められないって言われてからは真面目にやっているわ。


暇な時は書庫で冒険小説を読んでいるわ。

面白いのはフェーリの反応よ。

『ドラゴンを倒す!?世界の調和が乱れるだろ!』とか精霊目線の感想が面白いのよ。

読みながら調和についても色々教えてくれたわ。

ドラゴンとかは精霊に存在が近くて、調和の乱れやす所に住処を作って世界を守ってくれているんだって。もしドラゴンが国を襲ったら、その国は世界の調和を乱す事をしているんだとか。

『だから、そのドラゴンを倒すとか人間は馬鹿だろ!』ともの凄く怒っていたわ。あくまで作り話なのに、フェーリって可愛いよね。

『今までにドラゴンを倒した人やドラゴンに滅ぼされた国はあるの?』
『無いけど、精霊王達から警告を受けた国はあるよ』
『精霊王?』
『女神様の代わりに世界の調和を整えている、精霊の王様達だよ。何かあれば教会に警告がいくんだ』
『なるほど』

精霊の事は分からない事が多いけれど、世界の調和が最優先。良くない事をしたら警告されるのか…。

きっと無視したら大変な事になるんだろうな…。



 *****



晩餐だけはお兄様や両親とも時々一緒になる。

1人で食べるのはやっぱり寂しいから、皆で食べられる日は嬉しいわ。

「ミュリーはやっぱり大人しいよね」
「そうなの?」

他の子供は話でしか知らないから、子供らしくなかったかしら?

「そうだよ。お茶会に行くようになってよく分かったよ」
「フェル兄様、なんだか疲れてる?」
「ミュリーに慣れていると、ご令嬢の騒がしさは疲れるね…」

侯爵家の嫡男で美少年だし、モテて大変なのかな?

「フェル兄様は素敵だから、ご令嬢が放っておかないのね」
「全然嬉しくないよ…ミュリーとお茶をしている方が楽しいよ」

お兄様はやっぱりシスコンなのかしら?

「フェリクス、学園に入学したらもっと大変よ」

お母様は面白そうに笑っているけれど、お兄様は珍しくムッとしているわ。

「まぁ…注目されるのは避けられらないからね。フェリクス、人をよく見て付き合いなさい」
「はい。父上」

溜息をつきながらお父様に返事をする11歳。モテるって大変なのね。

「お兄様、親友のアルベール様も一緒に入学されるのでしょう?大変な事もあるでしょうけれど、きっと楽しいわ」
「そうだね。楽しい事を考えるようにするよ」

いつものキラキラした笑顔になったお兄様にほっとする。

貴族の学校が楽しいだけじゃないのは、何となく想像がつくけれど、6年も通うんだから少しでも楽しい方が良いものね。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

聖女の娘に転生したのに、色々とハードな人生です。

みちこ
ファンタジー
乙女ゲームのヒロインの娘に転生した主人公、ヒロインの娘なら幸せな暮らしが待ってると思ったけど、実際は親から放置されて孤独な生活が待っていた。

すり替えられた公爵令嬢

鈴蘭
恋愛
帝国から嫁いで来た正妻キャサリンと離縁したあと、キャサリンとの間に出来た娘を捨てて、元婚約者アマンダとの間に出来た娘を嫡子として第一王子の婚約者に差し出したオルターナ公爵。 しかし王家は帝国との繋がりを求め、キャサリンの血を引く娘を欲していた。 妹が入れ替わった事に気付いた兄のルーカスは、事実を親友でもある第一王子のアルフレッドに告げるが、幼い二人にはどうする事も出来ず時間だけが流れて行く。 本来なら庶子として育つ筈だったマルゲリーターは公爵と後妻に溺愛されており、自身の中に高貴な血が流れていると信じて疑いもしていない、我儘で自分勝手な公女として育っていた。 完璧だと思われていた娘の入れ替えは、捨てた娘が学園に入学して来た事で、綻びを見せて行く。 視点がコロコロかわるので、ナレーション形式にしてみました。 お話が長いので、主要な登場人物を紹介します。 ロイズ王国 エレイン・フルール男爵令嬢 15歳 ルーカス・オルターナ公爵令息 17歳 アルフレッド・ロイズ第一王子 17歳 マルゲリーター・オルターナ公爵令嬢 15歳 マルゲリーターの母 アマンダ パトリシア・アンバタサー エレインのクラスメイト アルフレッドの側近 カシュー・イーシヤ 18歳 ダニエル・ウイロー 16歳 マシュー・イーシヤ 15歳 帝国 エレインとルーカスの母 キャサリン帝国の侯爵令嬢(皇帝の姪) キャサリンの再婚相手 アンドレイ(キャサリンの従兄妹) 隣国ルタオー王国 バーバラ王女

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

竜人王の伴侶

朧霧
恋愛
竜の血を継ぐ国王の物語 国王アルフレッドが伴侶に出会い主人公男性目線で話が進みます 作者独自の世界観ですのでご都合主義です 過去に作成したものを誤字などをチェックして投稿いたしますので不定期更新となります(誤字、脱字はできるだけ注意いたしますがご容赦ください) 40話前後で完結予定です 拙い文章ですが、お好みでしたらよろしければご覧ください 4/4にて完結しました ご覧いただきありがとうございました

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

処理中です...