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09話

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5歳になり、魔力検査という洗礼を受けるんだって。

教会にある水盤に手を入れると、魔力量や適性とかが書かれた紙が出てくる…らしい。

『魔力検査で愛し子だと気づかれるかもしれない。君は魔力量が多いし、愛し子の持つ聖属性はかなり特殊だから』
『え!フェーリ、何とか出来ないの?』
『出来なくは無いよ。平均的になるように書き換えれば良い』
『そんな事出来るの?』
『多分ね』

フェーリなら大丈夫だと思うけれど、バレたら世界規模で働くのか…嫌だな。

洗礼には家族揃って行くのよ。私にとって初めてのお出かけね。

起きてる状態では、初めて乗る馬車に揺られながら教会へ向かう。もっとガタガタするのかと思ったら、そんなに揺れないのが不思議。

外の景色も本当に外国に来たみたいで楽しい。

「ミュリー、ちゃんと座って。危ないよ」
「だって、初めて外に出たのよ」
「分かったから落ち着いて」

両親は病弱だった私が元気になって、何をするのも微笑ましいという感じで特に止められない。

お兄様は一緒にいる時間が長いせいか、世話焼きなのか、よく注意されるし心配性だわ。

「ミュリーはお転婆さんだね」
「ふふ、淑女教育が始まるけれど大丈夫かしら」

やっと自由に動けるようになったから、しばらくは大目に見て欲しいわ。中身大人だから教育は多分大丈夫よ。

「お母様、大丈夫よ。お勉強楽しみだわ」
「無理はしないのよ」
「はい。お母様」

両親とは会う事は少ないけれど、優しいし大事にされているって分かる。お勉強は好きではないけれど、引き取ってもらったから家の恥にならないよう頑張るわ!



*****



教会は何だか不思議な雰囲気の場所だった。

フェーリが『愛し子の力に、ここにいる精霊が反応しているせい』だと教えてくれた。

司教様の説明の後、洗礼室に向かう。

部屋の中には、女神様の不思議な髪色みたいな花が咲いている。

部屋の中央に銀色の大きなお皿みたいなのがあって、そこに入っている聖水に手を入れると、魔力量とかが書かれた紙が浮かび上がってくるんだって。

どういう仕組み?謎すぎる。

「それでは水盤まで進み、手を浸して、浮かび上がった紙は私の所に持って来て下さいね」
「はい」

司教様と家族は部屋に入ってすぐにある、長椅子で座って待つみたい。

フェーリと少し緊張しながら水盤まで歩いて行く。手を聖水に入れると底の方で何かモヤモヤとしたものが出てくる。

『じゃあ、平均的な感じにするよ』
『うん。お願いね』

フェーリが水の中に入りモヤモヤに手をかざしてる。

『愛し子って凄いね。魔力は無限、全属性と聖属性に適正あり。無敵だね』
『いやいや、無敵とかなりたくないから!世界規模で働くの嫌だから!』
『分かったよ』

しばらくして紙が浮かび上がってきた。

水の中から紙…しかも濡れていないのよ。どうなっているのかしら?

紙を司教様の所へ持って行くと、司教様が呪文を唱えると紙に文字が浮かび上がる。

「お嬢様の魔力量はご令嬢の平均560。適性は水と光ですね。魔力量はこれから増えますし、適正の無い属性も練習すれば使えるようになります。頑張って下さいね」
「はい。ありがとうございました」

両親とお兄様は適性が2つある事を褒めてくれた。

『愛し子の力を誤魔化すために治癒が使える光属性も付けといたよ』
『フェーリ、ありがとう』
『おやつのクッキー多くしてよね』
『もちろん』

魔力検査はとっても不思議だったわ。



*****



私が邸から出た事がなかったから、帰りは少し街を見て回った。

「人がいっぱい…」
「ミュリー、はぐれないように手を繋ごうね」

お兄様と手を繋いで色んなお店を見る。後ろからは両親と護衛がついてくるから、結構目立つ集団になっている。

「ここは貴族街と平民が住む区画の間だから、貴族のお店も平民のお店もあるんだよ」

お兄様の説明を聞きながらもキョロキョロしちゃう。

今日はドレスだから本当に少し見て回るだけ。貴族用のお店にも入ってみたけれど欲しいものは無かったわ。

「あの外にあるお店は?」
「あれは食べ物が屋台。雑貨が露天だよ」
「屋台も行ってみたい」
「今日は駄目だよ」

平民のお店は私がもう少し大きくなったら、連れて来てくれるとお兄様は約束してくれたわ。
 
「2人は本当に仲が良いね」

両親は私達が仲が良いのが嬉しいらしい。赤ちゃんの時に引き取られたとはいえ、仲良くなれるかは分からないものね。

「お父様とお母様も大好きだけれど、お兄様も優しくて大好きよ」

本当の家族みたいで嬉しくてお兄様に抱きついたら、珍しく真っ赤になっていたわ。

「あらあら、フェリクスったら照れちゃって」
「母様!」

よく抱っこしてくれたし、お膝の上で「あーん」とかしたのに、抱きつくのは恥ずかしいの?

お兄様の基準が分からないわ…。



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