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07話

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あれから半年近くリハビリに励んだわ。

喋るのは慣れてしまえば問題無かったけれど、歩くのは筋力が無くて時間がかかった。普通の生活をする為に必要な全身の筋トレは正直辛かった…。

もちろん、オムツは卒業したわ!

そんな日々を過ごしていたら3歳になった。

お嬢様言葉は子爵家出身のメイドのミアとアンをお手本にして、頑張って慣れるようにしているの。

エマには文字や常識、基本的なマナーを学んでいるわ。

初めて文字を教えてもらう時は「羽根ペンかな~」てワクワクしたけれど、万年筆みたいなペンでちょっとガッカリしたわ。

この国は共通語を使うからまずはそれを習って、その次に今後覚えなくちゃいけない同盟国の2つの国の言葉を教えてくれるんだって。

でもね、フェーリが言うには愛し子だから文字は覚えないといけないけれど、喋るのはどの国の言葉でも出来るらしいの。

どういう事なの?

『言葉が分からないとその人が何を望んでいるか分からないでしょ?だから、どの言葉も愛し子は分かるんだよ』と言っていた。

使命ある愛し子は世界規模で働くの?ハードワークじゃない?

怪我も病気も治せるって凄いけれど、1人の人間に対して期待過剰だと思う…。



*****



まだ多少躓いたりするけれど、ゆっくりなら1人で歩けるようになったわ。

体力をつけるために庭の散歩が日課になった。お花を見ながら、ゆっくり30分ほど歩く。庭が広いから毎日違う所を歩けて楽しいわ。

時々お兄様も一緒に歩いてくれるの。

「ミュリエル、しっかり歩けるようになったね」
「まだ、ゆっくりしかあるけません」
「それでも、出来る事が少しずつ増えてるよ」
「はい。もじもがんばってならってます」

お兄様とお喋りしながら歩いていると30分なんて、本当にあっという間に過ぎてしまう。

でも1番の難関はここから。邸の2階にある自室までが意外と辛い…特に階段がね…。段差が大変なのよ。

「沢山歩いて疲れたでしょう?頑張っているから抱っこしてあげるよ」

お兄様は手を繋いで登るのを助けてくれるけれど、毎回5段くらいで抱っこされる。

寝たきりだったから普通の3歳より私は小さいらしいけれど、簡単に抱っこできるお兄様は実は8歳にしてマッチョなのだろうか…。

「まだ、あるけます」
「でも皆も心配しているからね」

ミア達は万が一落ちてもすぐ受け止められるように、後ろに居てくれるんだよね。

なるべく私が自分でやろうとする事は、失敗すると分かっていてもやらせてくれる乳母&メイドだけれど、お兄様は私が寝たきりだったせいか、小さいからかすぐに甘やかすのよ。

「お昼寝から目が覚めたら一緒にティータイムにしようね」
「はい。おにいさま。いっしょにおさんぽしてくれて、ありがとうございました」
「僕も楽しかったからね。じゃあ、また後でね」

お兄様が出て行くと体を拭かれ、マッサージをされていると寝くなってくる。幼児はすぐ寝くなって困る。

ネグリジェを着せられベッドに入る頃には半分夢の中。

「おやすみ…みあ…あん…」
「「おやすみなさいませ」」



*****



お昼寝から起きたら支度を済ませ、お兄様が迎えに来てくれる。

「よく休めたかな?」
「はい」
「今日は庭に用意したから行こうか」

そう言うと、また抱っこされた。

「おひるねしたから、あるけます」
「でも、寝起きだから危ないからね」

キラキラした笑顔で言われると、まあ良いかと思ってしまうほど慣れてきたわ。

ミア達から、お兄様は私を抱っこするのが好きらしいと聞いた。だから理由をつけては何かと抱き上げるんだとか。

庭に用意された椅子に、クッションを重ねて座らされるが…ちょっと不安定で怖い。

「こっちにおいで」

お兄様が膝をポンポンと叩くと、メイドさんにお兄様の膝にクッションごと乗せられる。私への意思確認は無いわよ。

ケーキは食べやすくカットして「あーん」され、適温に冷めたミルクティーのカップを渡され…と、お兄様とティータイムをするようになってからずっとこんな感じ。

「美味しい?」
「おいしいです」

周りのメイドさん達の微笑ましいという視線が、何とも言えないけれど...。

「僕の事はフェルと呼んで」
「フェルにいさま?」
「フェルでもフェル兄様でも良いよ。ミュリエルの事はミュリーと呼んでも良いかな?」
「はい!」

愛称で呼ばれるのは初めてね。

お兄様も私が引き取られた理由を知っているけれど、普通に接してくれている。いや…かなり甘やかされているから普通ではないけれど。

ただ愛称で呼び合うだけで、本当の兄妹みたいで嬉しいな。優しい義理の家族に引き取られて、本当に良かったと思う。

ちなみに、元実家については誰も教えてくれないのが逆に怖い…。潰れてないよね?



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