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69話

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12月に入り3年生のクラスを決める試験が始まる。

ティナやクラスメイトと毎日の様にカフェテリアで試験勉強をしたわ。1年分の問題が出るから大変。苦手な所を重点的に勉強したりと、皆色々と工夫をしていたわね。

転生したからあったアドバンテージは今は感じないわ。ずっとズルをしている気がして、何となく嫌だったから、皆と教え合ったりするのは楽しかったわ。

「リリ、試験どうだった?」
「全体的に応用問題が自信がないわね・・・」
「私は全然出来た感じがしないわ・・・今度こそリリとクラス離れちゃうかも・・・」
「大丈夫よ。クラスが離れても今まで通りランチや放課後は一緒に過ごしましょう?」
「うん・・・」
「それにクラスよりも、ティナは伯爵夫人の勉強の方が大事よ?」
「そうよね。来年からはお母様と一緒にお茶会やパーティを主催するから大変よ・・・」
「まぁ、ご招待を楽しみにしているわ」

試験が終わる3年生の卒業パーティの準備となる。

昨年までは指示に従って動くだけだったけれど、今年は班ごとにわかれて手配から始まるから大変よ。

邸のパーティ等で多少経験はあっても規模が違うし、下級生は使用人ではないから指示の出し方も難しいわ。

ティナは来年から何度もこういう事をするのかと溜息をついていたわ。でも、短期間でこの規模を経験すると邸での手配は楽そうな気がするのだけれど・・・。

卒業パーティ当日は王宮に就職を目指す方達が給仕として頑張ったわ。特にトラブルも無く卒業生を送り出せたと聞いてほっとしたわ。



*****



王宮での今年最後の夜会の日。

シャンパンゴールドのシフォンドレスにライトブラウンの刺繍が胸元から裾へ向かって施され、くるりと回るとキラキラと光る石が煌めいて落ち着いているけれど素敵なドレス。

パリュールは金細工にサファイア、手袋に指を通しヒールに履き替える。

「腰のリボンは如何致しますか?」
「あった方が良いかしら?」
「細身のブルーは如何ですか?」

締めてもらうと良いアクセントになる。

「良いわね。これにするわ」

最近ドレスに変化を付けられるように、ベルベットのリボンを何色か太めの物と細身の物と購入したわ。リボンの有無で印象が変わるから重宝しそうよ。

「リリ、とても綺麗だ・・・本当に精霊様になってしまいそうだね」
「ふふ、リュド様もとても素敵よ」

リュドは社交の時だけは髪を後ろに流すから、少しドキッとするわ・・・。

光沢のあるダークブラウンに金糸の刺繍が施され、装飾はサファイアのピンとカフス。最近、前よりもリュドが素敵に見えて困るわ・・・。



*****



今回から両親とは別に挨拶に回るから少し緊張するわね。

王宮の豪華絢爛なホールにも慣れてきたわ。大体の立ち位置に着くと腰を抱いたエスコートをされる。

「リュド様?」
「リリを見る男が多くて嫉妬してしまいますね・・・」
「そうかしら?」

私よりもリュドを見ているご令嬢の方が多いと思うのだけれど・・・。

「いい加減、少しはご自分の容姿を自覚して下さいね」
「わかったわ。気をつけるけれど・・・リュド様と離れなければ問題は無いでしょう?」
「そうですね。ダンスも私だけと踊りましょうね?」
「ええ。もちろんよ」

陛下が女神様と精霊様に1年の感謝を捧げ、今年最後の夜会が始まる。

リュドと2人での挨拶回りは少し大変だったわ。子息を売り込んできたり、リュドにご令嬢を売り込んできたり・・・皆様そんなにも地獄行きのジェットコースターに乗りたいのね。

ダンスを2曲踊り、休憩のためデザートの所へ行く。

「リリ、拗ねているのも可愛いけれど機嫌を直して?」
「だって・・・」

舞踏の輪を出たら、リュドに言い寄るしつこいご令嬢もいたのよ・・・。リュドはハッキリと断っていたけれど、嫌なものは嫌なの!

全然社交モードに戻れないわ・・・。リュドの腕の中に囲われていると、サミュエル様とカティ様がこちらに来た。

「あらあら、仲が宜しいわね」
「少し害虫が出て、リリが拗ねてしまったので」
「まぁ・・・お2人に手を出そうなんて勇気のある方ね」
「マジか・・・そいつ死ぬな・・・」

別に命までは取りませんわよ?でも・・・落ち着くから腕の中から出たくないわ。私って嫉妬深いのかしら?

「あれ?リリアンヌ嬢はどうかしたの?」
「リリ、何かあったの?」

ティナとアンドリュー様も合流したけれど、離れたくないわ・・・。

「ふふ、2人に手を出す害虫が出たのよ」
「え!命知らずだなぁ・・・」
「私としては人前でリリが甘えてくるのは嬉しいのですが・・・」
「リュドが独占欲丸出しで周りを牽制しまくってるのに、そいつらの目は節穴か?」
「目の悪い方が多くて困りますね。腕に触れられて思わずご令嬢を投げ飛ばしそうでしたよ」

リュドも凄く嫌だったのね。少し機嫌が直ってきたわ。

「リュド様は結構アレですわよねぇ」
「いえいえ、サミュエルとカトリーヌ様には負けますよ」
「念の為リストは共有して下さいね?」
「もちろんですよ」
「え?俺もやるのか?」
「可愛い妹の為よ?やるわよね?」
「はい・・・・・・」

黒い3人にアンドリューとクリスティナは沈黙を貫いた。

3人もやるのなら私の分は残るのかしら?何が良いかしら・・・スキルで呪いかしら?命に関わるものは駄目よね?


1年間、体臭と口臭が公害レベルで臭くなるとかどうかしら?

でも、ずっとだと慣れそうね。体臭と口臭が1日毎に公害レベルで臭くなるとか良いんじゃないかしら?

連帯責任で家族全員にしましょう。躾が出来ていないんだから仕方がないわよね。

「リリ、機嫌は直った?」
「ええ。今とっても良い事を思いついたのよ」
「そう。それなら良かった」

リリアンヌの「良い事」にサミュエルとアンドリューは震えた。いまだ謎な未亡人の件とティナの為の駆除と、リリアンヌの害虫駆除は身を持って知っている。絶対に良い事ではない・・・と。

3人が報復をしている間、スキルで呪いを練習したわ。

練習台のお花に謝りながら使いこなせる様になったから、夜中にスキルで透明マントをかぶり転移して、1人ずつ地道にかけたわ。

人数が多くて大変だったけれど、関係ない使用人にかかったら可哀想だものね。

しばらくして謎の奇病が流行っていると噂が流れたけれど、夜会から日も経っていたから私が何かしたなんて思われていないわよ。



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