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64話

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翌日、お茶会の日に平凡ブラウンさんが物凄く見ていた事をティナにも話した。

「え?全然気が付かなかったわ・・・」
「見ているだけだから放っておいたのだけれど・・・」

話しているとクラスメイトのご令嬢達も同じ様な事があったそう。見ているだけなので、すぐに場所を移動したりと皆避けているようね。

「社交の話をしていると見てきますのよね・・・」
「あの方を招待される方なんて居ませんもの、羨ましくて・・・かしら?」
「正式にご挨拶もご紹介もされていませんからね・・・」
「ええ。我が家もデュクルー家とは交流がありませんし・・・」

そうなのよね。社交でのご招待は家の繋がりがあったり、どなたかに紹介してもらいご挨拶をしてからが一般的。招待出来ないのよ。

編入時から学園内でも避けられて早々に1年生に留年。2年生に親しく付き合うご令嬢なんて居ないわ。あの方をご招待して下さる奇特な方がいれば良いのだけれど・・・見世物として呼ばれるだけね。

友人が1人も居ないのは、自業自得とはいえ少し可哀想だわ。

「見ているだけなら構いませんが何かあれば先生に相談しましょう。皆様も気をつけて下さいね」

ご令嬢方に注意を促したけれど大丈夫かしら?

「私も連れて行きなさいよ!」的な視線なら良いけれど、平凡ブラウンさんは何をするかわからないのが不安だわ・・・。



*****



週末は婚約パーティだから、湯浴みの後に少し痛いマッサージを毎日されているわ。

ルゥから平凡ブラウンさんの調査報告を受け取る。

「特に変わった事はありませんね」
「そうね・・・学園でも謹慎が解けてから社交の話をしているご令嬢達を、見つめているくらいしか奇行は無いわね」
「何ですかそれ?地味に怖いんですけど・・・」
「わからないわ。招待状が来ないから嫉妬しているんじゃないかって皆思っているわ」

報告書には男爵家が王家からお叱りを受けたとあるけれど・・・平凡ブラウンさんはこの意味を分かっているのかしら?

「親しい人はやはり居ないのね」
「そうですね。会うのは義兄くらいで、毎週の様に王宮の寮に押しかけていますね。それと夜会の発言で2人の噂が流れ始めていますね」
「毅然とした態度を取れない義兄の自業自得ね。男爵家には一応招待状は届いているのよね?」
「ええ。ですが・・・娘を連れて来るなと釘を刺されている様で、男爵とご子息と婚約者様が出席されていますね」
「という事はいずれは結婚されるのよね」
「義妹の妨害が無ければ・・・じゃないですか?」

「禁断の恋」的な乙女ゲームはやめて欲しいわ・・・。

「やはり、どこかに嫁がせて厄介払いしたいのかしら?」
「そうだと思いますが・・・教養もマナーも無くて容姿も平凡って難しくないですか?」
「そうねぇ・・・」

エマニュエルみたいな下半身バカなら貰ってくれるのかしら?でも・・・あの一件でその手の人達は絶滅寸前なのよね・・・困ったわ。

「とりあえず調査は続けて頂戴」
「畏まりました」



*****



登校すると瞳をキラキラさせたティナが待っていたわ。

「ティナ、おはよう」
「おはよう、リリ。とうとう彼女やったわよ!」
「あら?お茶会にでも乱入したのかしら?」
「リリ凄いわ!正解よ!」
「え?嘘でしょう?」

えぇ・・・お茶会に乱入って本当なの?平凡ブラウンさんは行動派なのね・・・とても迷惑だわ。

「お義兄様と婚約者様がご招待されたお茶会に乗り込んで来たそうよ!」

乗り込むって・・・どんな状態なのかしら?前世のヤ〇ザが思い浮かんだわ・・・。

「どうして私だけ除け者にするのって大変だったらしいわ」
「男爵家を招待している家から彼女を連れて来ない様に釘を刺されているもの当たり前よ?」
「そうなの?」
「ええ。デビュタントを見てそうなったのだから自業自得なのだけれど・・・彼女は侍女を連れて居ないのに支度はどうしたのかしら?手伝ってくれるお友達なんて居ないわよね?」

侍女を連れていないご令嬢は就職の為に通っている裕福では無い貴族家か騎士爵が多い。少ない社交は寮生同士、何かと助け合って出席している。人の支度を手伝うのは侍女になる練習にもなるもの。

クリスティナはこてりと小首を傾げる。

「あら?まさか学園が終わってワンピースで行ったのかしら?」

想像してみると・・・やはり喜劇かしら?主催のご夫人はお気の毒だけれど。

邸に帰るとルゥが満面の笑みで調査報告を持って待っていたわ。

「お嬢様、お帰りなさいませ!」
「面白い事になったそうね」
「それはもう・・・小説の様ですよ!」

軽くお昼を食べ報告書を開く。

「この絵は何かしら?」
「話を聞かせてくれたメイドさんの力作です!」

婚約者様と平凡ブラウンさんが掴み合いの喧嘩をしている絵・・・結構上手いわね。

報告書は完全に小説の一幕よ・・・。


~お茶会乱入編~

「どうして私だけ除け者にするのよ!」
「コレット!どうしてここに居るんだ!?」
「お義兄様・・・ココをどうして連れて行ってくれないの?」
「招待されていないから仕方ないんだ」
「学園でも皆お茶会やパーティに行っているわ!どうしてココだけ!」

何を言っても言うことを聞かない義妹に困り果てる義兄に、婚約者が代わりに口を開く。

「デビュタントであんな事をしたのだから自業自得よ」
「なんですって!ココのデビューなのにアンタが邪魔するからでしょ!」
「婚約者なんだから夜会でダンスを踊り挨拶に回るのは普通の事よ」
「アンタなんか認めないわ!」
「貴女の許可は必要ないのよ」
「ココのお義兄様を返しなさいよ!」
「ちょっと!痛っ・・・やめて!手を離してよ!」

激高して婚約者様に掴みかかる義妹。

「コレット止めるんだ!彼女から手を離すんだ!」
「どうして!お義兄様はこの女の味方をするの?ココの方が可哀想なのに!」


まだ続くけれど何だかお腹が一杯だわ・・・。

「これを招待されたお茶会でやったのね・・・」
「はい!いやぁ・・・話してくれたメイドさんが話も上手で面白かったです」
「主催のご夫人は災難ね・・・」

とりあえず、この一幕はティナに写しをあげましょう。ルゥにティナへの手紙に写しを入れて送るよう指示する。

ルゥは「クリスティナ様、喜ばれますね!」と言って鼻歌を歌いながら写しを書きに行ったわ。



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