85 / 100
83話
しおりを挟む
11月も半ば。私とティナも卒業試験の為、授業後はカフェテリアで勉強をしているわ。
王宮の試験者のために先生方もマナーや剣術、魔法等の補習をしてくれている。希望をすれば受けられるわ。
騎士団は魔力量13000、魔術師団は15000と言われているけれど文官も必要だもの。魔力や実技が足りなくても一定数は採用されるから、目指している人達は本当に真剣よ。
「実技の練習に行く人も多いのかしら?最近カフェテリアが空いているわね」
「リリ、少し休憩にしましょう?」
「そうね。デザートをお願いしましょうか」
「勉強をしていると甘いものが凄く美味しい気がするわ」
頭を使うと糖分を欲しがるとか言うやつよね?前世でも仕事の合間に、コーヒーを飲みながらチョコレートを食べていたわ。
卒業試験は王宮採用試験に比べたら簡単よ。3年間でどの程度身についたのか各家に結果が送られるのと、記録が学園に残るだけだもの。
就職や転職する時に、卒業試験の記録を求められる事があるから手は抜けないけれどね。あまりに成績が酷いと家で再教育よ。
紅茶とケーキを食べながら。
「リリはウェディングドレスの仕立てってどう?」
「最初に希望は言ったけれど後は任せているわ。でも仮縫いで仕立て途中のドレスを見たけれど美しかったわ」
「私はまだ仮縫いはしていないけれど、何だかいつものドレスと気持ちが違うわよね・・・」
「そうね。結婚するって実感が湧いたわ」
「ふふ、私もよ」
*****
邸に帰るとリュドが出迎えてくれる。
「お帰り、リリ」
「リュド、ただいま」
「今日はリリに確認して貰う物があってね。サロンへ行こうか」
リュドにサロンまでエスコートをされるけれど、あの夜から少しドキドキしてしまうわ。自分からしたのだけれど・・・いまだに恥ずかしい・・・。
紅茶と焼菓子を摘んでいるとテーブルに図面が広げられる。
「これは何かしら?」
「カントリーハウスの俺達夫婦の区画だよ」
「夫婦の・・・・・・」
じわじわと顔が熱くなってくるわ・・・。
「1階の改装はもう始まっているけど、リリは何か希望はある?」
「派手なのは好きじゃないわ。落ち着く部屋が良いわね」
「サラさんに好みは聞いているから、多分大丈夫だと思うけれど領地に帰って気に入らなかったら直そう」
そうね。サラは私より私の事を知っているもの間違いないわ。
図面を見ると1階はお互いの執務室と補佐の部屋等、仕事に関する部屋が並ぶ。2階が夫婦の寝室で両側にお互いの私室とドレスルーム。右の奥はプライベートなダイニングとサロン。左の部屋は何かしら?
「仕事に関する部屋は1階にまとめたよ。2階はプライベートな空間。奥のダイニングとサロンは邸の端だから見渡せて景色が良いよ」
「この左側は何かしら?」
「あぁ、夜勤の使用人と護衛の部屋。それと子供部屋の予定だよ」
「子供・・・・・・」
「幼い時は部屋が近い方が良いかと思ってね。教育が始まれば移動させればいいさ」
リュドとの子供・・・ちょっと想像出来ないわ・・・。夫婦になるのもやっと実感してきたのに。
「ありがとう。領地に帰る楽しみが増えたわ」
「こっちは領地に帰っている間に終わるからね」
「こっち?」
「そう、タウンハウスは寝室の隣は私室兼執務室になるよ。しばらくはハイシーズンしか住まないしね」
結婚したら・・・いつも一緒に眠るのね・・・。眠れるのかしら・・・。
「リリ、顔が赤いけれど・・・大丈夫?」
「大丈夫よ・・・」
「リリはなかなか慣れないね」
「リュドはいつも余裕があってずるいわ・・・」
「リリもそのうち慣れるよ」
その後もお喋りをして、久しぶりに一緒に晩餐を食べて楽しい時間を過ごせたわ。
*****
試験は3年間で1番難しかったわ。
湯浴みを済ませてベッドに横になる。今週は頭を使い過ぎて仕事のやる気が出ないわ・・・。
魔法の実技は思った以上に上手く出来たわ。結局上位属性は「氷」しか取得出来なかったけれど、氷魔法を含め4つの属性が上級まで使えるようになったのは嬉しかったわ。
まぁ、スキルを使えば何でも出来るけれど・・・なるべくスキルに頼らないようにしているから、使うのは時々ね。
1番無制限に使ったのは多分サファイアの時ね・・・ティナの為だから後悔はしていないわ。多少やり過ぎたけれど・・・。
そういえば、絶対に前世同郷の人が作った魔道具がたくさんあるのに、何度か魔道具組合に行ったけれど、いまだにそれっぽい人に会えた事がないわ。
アフタヌーンティーセットの3段のやつもそうだと思うのよ。あのカフェ・・・時々前世で食べた物が新メニューになるもの。
「考えた事が無かったけれど、前世があると人に知られたらどうなるのかしら?特にスキルなんてチートよ・・・絶対知られたくないわ」
私はこの世界も好きよ。貴族は少し息苦しいと思う時もあるけれど。
あったらいいなと思う前世の物もたくさんあるけれど、誰か作ってくれたら・・・と思うだけで、自分で作ったり〇〇チートとかやりたいとは思わないわ。
前世同郷の人にも会ってみたいと思うけれど、国や世代が違ったら懐かしさも何も無いわね。でも、こういう悩みは相談できたわね。
「リュドに隠し事をしているのはやっぱり嫌だわ・・・」
前世やスキルの事を話した方が良いのかしら?
「でも・・・リュドに嫌われたくないわ・・・」
リュドと同じ香りのするヌイグルミを抱き締める。
リュドと同じライトブラウンに青い瞳のクマのヌイグルミをくれた時は、子供扱いされているみたいで拗ねてしまったけれど・・・この香りがして手放せなくなってしまったのよね。
「はぁ・・・いつまでも悩んでいても仕方がないわ。卒業したら領地に帰るし、落ち着いたら話そうかしら・・・」
先延ばししてばかりだわ・・・。
王宮の試験者のために先生方もマナーや剣術、魔法等の補習をしてくれている。希望をすれば受けられるわ。
騎士団は魔力量13000、魔術師団は15000と言われているけれど文官も必要だもの。魔力や実技が足りなくても一定数は採用されるから、目指している人達は本当に真剣よ。
「実技の練習に行く人も多いのかしら?最近カフェテリアが空いているわね」
「リリ、少し休憩にしましょう?」
「そうね。デザートをお願いしましょうか」
「勉強をしていると甘いものが凄く美味しい気がするわ」
頭を使うと糖分を欲しがるとか言うやつよね?前世でも仕事の合間に、コーヒーを飲みながらチョコレートを食べていたわ。
卒業試験は王宮採用試験に比べたら簡単よ。3年間でどの程度身についたのか各家に結果が送られるのと、記録が学園に残るだけだもの。
就職や転職する時に、卒業試験の記録を求められる事があるから手は抜けないけれどね。あまりに成績が酷いと家で再教育よ。
紅茶とケーキを食べながら。
「リリはウェディングドレスの仕立てってどう?」
「最初に希望は言ったけれど後は任せているわ。でも仮縫いで仕立て途中のドレスを見たけれど美しかったわ」
「私はまだ仮縫いはしていないけれど、何だかいつものドレスと気持ちが違うわよね・・・」
「そうね。結婚するって実感が湧いたわ」
「ふふ、私もよ」
*****
邸に帰るとリュドが出迎えてくれる。
「お帰り、リリ」
「リュド、ただいま」
「今日はリリに確認して貰う物があってね。サロンへ行こうか」
リュドにサロンまでエスコートをされるけれど、あの夜から少しドキドキしてしまうわ。自分からしたのだけれど・・・いまだに恥ずかしい・・・。
紅茶と焼菓子を摘んでいるとテーブルに図面が広げられる。
「これは何かしら?」
「カントリーハウスの俺達夫婦の区画だよ」
「夫婦の・・・・・・」
じわじわと顔が熱くなってくるわ・・・。
「1階の改装はもう始まっているけど、リリは何か希望はある?」
「派手なのは好きじゃないわ。落ち着く部屋が良いわね」
「サラさんに好みは聞いているから、多分大丈夫だと思うけれど領地に帰って気に入らなかったら直そう」
そうね。サラは私より私の事を知っているもの間違いないわ。
図面を見ると1階はお互いの執務室と補佐の部屋等、仕事に関する部屋が並ぶ。2階が夫婦の寝室で両側にお互いの私室とドレスルーム。右の奥はプライベートなダイニングとサロン。左の部屋は何かしら?
「仕事に関する部屋は1階にまとめたよ。2階はプライベートな空間。奥のダイニングとサロンは邸の端だから見渡せて景色が良いよ」
「この左側は何かしら?」
「あぁ、夜勤の使用人と護衛の部屋。それと子供部屋の予定だよ」
「子供・・・・・・」
「幼い時は部屋が近い方が良いかと思ってね。教育が始まれば移動させればいいさ」
リュドとの子供・・・ちょっと想像出来ないわ・・・。夫婦になるのもやっと実感してきたのに。
「ありがとう。領地に帰る楽しみが増えたわ」
「こっちは領地に帰っている間に終わるからね」
「こっち?」
「そう、タウンハウスは寝室の隣は私室兼執務室になるよ。しばらくはハイシーズンしか住まないしね」
結婚したら・・・いつも一緒に眠るのね・・・。眠れるのかしら・・・。
「リリ、顔が赤いけれど・・・大丈夫?」
「大丈夫よ・・・」
「リリはなかなか慣れないね」
「リュドはいつも余裕があってずるいわ・・・」
「リリもそのうち慣れるよ」
その後もお喋りをして、久しぶりに一緒に晩餐を食べて楽しい時間を過ごせたわ。
*****
試験は3年間で1番難しかったわ。
湯浴みを済ませてベッドに横になる。今週は頭を使い過ぎて仕事のやる気が出ないわ・・・。
魔法の実技は思った以上に上手く出来たわ。結局上位属性は「氷」しか取得出来なかったけれど、氷魔法を含め4つの属性が上級まで使えるようになったのは嬉しかったわ。
まぁ、スキルを使えば何でも出来るけれど・・・なるべくスキルに頼らないようにしているから、使うのは時々ね。
1番無制限に使ったのは多分サファイアの時ね・・・ティナの為だから後悔はしていないわ。多少やり過ぎたけれど・・・。
そういえば、絶対に前世同郷の人が作った魔道具がたくさんあるのに、何度か魔道具組合に行ったけれど、いまだにそれっぽい人に会えた事がないわ。
アフタヌーンティーセットの3段のやつもそうだと思うのよ。あのカフェ・・・時々前世で食べた物が新メニューになるもの。
「考えた事が無かったけれど、前世があると人に知られたらどうなるのかしら?特にスキルなんてチートよ・・・絶対知られたくないわ」
私はこの世界も好きよ。貴族は少し息苦しいと思う時もあるけれど。
あったらいいなと思う前世の物もたくさんあるけれど、誰か作ってくれたら・・・と思うだけで、自分で作ったり〇〇チートとかやりたいとは思わないわ。
前世同郷の人にも会ってみたいと思うけれど、国や世代が違ったら懐かしさも何も無いわね。でも、こういう悩みは相談できたわね。
「リュドに隠し事をしているのはやっぱり嫌だわ・・・」
前世やスキルの事を話した方が良いのかしら?
「でも・・・リュドに嫌われたくないわ・・・」
リュドと同じ香りのするヌイグルミを抱き締める。
リュドと同じライトブラウンに青い瞳のクマのヌイグルミをくれた時は、子供扱いされているみたいで拗ねてしまったけれど・・・この香りがして手放せなくなってしまったのよね。
「はぁ・・・いつまでも悩んでいても仕方がないわ。卒業したら領地に帰るし、落ち着いたら話そうかしら・・・」
先延ばししてばかりだわ・・・。
5
お気に入りに追加
161
あなたにおすすめの小説
婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました
宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。
しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。
断罪まであと一年と少し。
だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。
と意気込んだはいいけど
あれ?
婚約者様の様子がおかしいのだけど…
※ 4/26
内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
婚約破棄を望む伯爵令嬢と逃がしたくない宰相閣下との攻防戦~最短で破棄したいので、悪役令嬢乗っ取ります~
甘寧
恋愛
この世界が前世で読んだ事のある小説『恋の花紡』だと気付いたリリー・エーヴェルト。
その瞬間から婚約破棄を望んでいるが、宰相を務める美麗秀麗な婚約者ルーファス・クライナートはそれを受け入れてくれない。
そんな折、気がついた。
「悪役令嬢になればいいじゃない?」
悪役令嬢になれば断罪は必然だが、幸運な事に原作では処刑されない事になってる。
貴族社会に思い残すことも無いし、断罪後は僻地でのんびり暮らすのもよかろう。
よしっ、悪役令嬢乗っ取ろう。
これで万事解決。
……て思ってたのに、あれ?何で貴方が断罪されてるの?
※全12話で完結です。
【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?
雨宮羽那
恋愛
元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。
◇◇◇◇
名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。
自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。
運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!
なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!?
◇◇◇◇
お気に入り登録、エールありがとうございます♡
※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。
※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。
※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))
ヒロイン気質がゼロなので攻略はお断りします! ~塩対応しているのに何で好感度が上がるんですか?!~
浅海 景
恋愛
幼い頃に誘拐されたことがきっかけで、サーシャは自分の前世を思い出す。その知識によりこの世界が乙女ゲームの舞台で、自分がヒロイン役である可能性に思い至ってしまう。貴族のしきたりなんて面倒くさいし、侍女として働くほうがよっぽど楽しいと思うサーシャは平穏な未来を手にいれるため、攻略対象たちと距離を取ろうとするのだが、彼らは何故かサーシャに興味を持ち関わろうとしてくるのだ。
「これってゲームの強制力?!」
周囲の人間関係をハッピーエンドに収めつつ、普通の生活を手に入れようとするヒロイン気質ゼロのサーシャが奮闘する物語。
※2024.8.4 おまけ②とおまけ③を追加しました。
面倒くさがりやの異世界人〜微妙な美醜逆転世界で〜
波間柏
恋愛
仕事帰り電車で寝ていた雅は、目が覚めたら満天の夜空が広がる場所にいた。目の前には、やたら美形な青年が騒いでいる。どうしたもんか。面倒くさいが口癖の主人公の異世界生活。
短編ではありませんが短めです。
別視点あり
猫に転生したらご主人様に溺愛されるようになりました
あべ鈴峰
恋愛
気がつけば 異世界転生。
どんな風に生まれ変わったのかと期待したのに なぜか猫に転生。 人間でなかったのは残念だが、それでも構わないと気持ちを切り替えて猫ライフを満喫しようとした。しかし、転生先は森の中、食べ物も満足に食べてず、寂しさと飢えでなげやりに なって居るところに 物音が。
【完結】悪役令嬢のトゥルーロマンスは断罪から☆
白雨 音
恋愛
『生まれ変る順番を待つか、断罪直前の悪役令嬢の人生を代わって生きるか』
女神に選択を迫られた時、迷わずに悪役令嬢の人生を選んだ。
それは、その世界が、前世のお気に入り乙女ゲームの世界観にあり、
愛すべき推し…ヒロインの義兄、イレールが居たからだ!
彼に会いたい一心で、途中転生させて貰った人生、あなたへの愛に生きます!
異世界に途中転生した悪役令嬢ヴィオレットがハッピーエンドを目指します☆
《完結しました》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる