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第2話 SIXの標的
4 SIX参戦 三つ巴の乱戦
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ブライドがM109を誘い出したのは、営業を中止している自走式立体駐車場の5階だった。
この階の上は屋上になっている。
商業施設に併設された駐車場だが、今は使われていない。
先月から持ち主が代わり、大規模修繕工事が始まるのを待っているところだ。
車は1台も停まっていなかった。
周囲には、5~10階建くらいのビルが乱立している地域だ。
建物の多くは平成の頃に建てられたものだろう。
時代を感じさせる建物が多く見受けられる。
快晴の午後。
風は微風。
ブライドとM109との戦いが続いている。
「なかなかやるな、ブライド」
M109は、どんなに打撃を撃ち合っても動きが軽やかなままだ。
「ぜんぜん本気じゃないですね」
ブライドの打撃は一度も当たっていない。
「それはお互い様だろう」
M109が消える理屈も、ブライドは見抜いて対処している。
M109は、ブライドのように光学迷彩を使っている訳ではない。
ブライドが何かを『認識』する瞬間の虚を突いて高速で移動しているのだ。
M109が笑った時、彼の目だけは笑っていなかった。
その事実を無意識に認識した瞬間、M109はブライドの視野の外に移動していたのだ。
何かを認識する刹那、人の思考は停滞する。
その僅かな時間の中で、一気に視野の外まで高速で移動すると、消えたように錯覚してしまうのだ。
そこで、消えたと認識した刹那、ブライドの目の前に移動していたのだ。
理屈はわかるが、実際に超高速の反復横跳びができる人間はそうはいない。
ブライドにはできない動きだった。
ブライドの打撃も蹴りも、M109は捌いてしまう。
それに比べて、ブライドはM109の打撃を躱しきれていない。
だが当たってもいない。
なぜなら、M109が寸止めをしているからだ。
ブライドの昇龍脚もスウェーバックで躱された。
服が擦れ合う至近距離から相手の顎を蹴り上げるのが昇龍脚だ。
視界の外から来る神速の蹴りも、M109はいなしてしまう。
高く蹴り上げた爪先で小さく8の字を描きくように蹴りの方向を180度変えて、カカトをこめかみに落とす降龍脚も、M109は見切っていた。
更にその回転を加速させて、体重を乗せて撃ち込む肘も、M109は「ぽんっ」と手のひらで受けてしまった。
ありえない⁉️
更に肘を伸ばして掌底で顎を突き上げても、首を少し傾けて避けてしまった。
「いい動きをしているな」
間合いを開けたM109がブライドを誉めた。
(うさぎちゃん。
M109から電脳通信が来てるよ)
(つないで❣️)
(狙われているのは分かっているな?)
M109の言ってる意味は、スナイパーが狙撃体制に入っている事を気が付いているかと聞いているのだ。
(分かっています❣️)
(まだ続けるか?)
(狙撃は避けられますから、問題ありません❣️)
(いい子だ)
言葉を認識した刹那、M109が消えた。
後方に下がるブライドを追うように、M109が現れた。
その距離.....0センチ❗️
「な......なにを......⁉️」
ブライドのくちびるがM109に奪われた。
「さすがにディープキスとはいかないか?」
真っ赤になって手で口を隠すブライドが、M109の股間を蹴り上げる。
無意識の蹴りだった。
にやけていたM109の表情が、凍りついた。
かすった。
悔しがるブライド。
胸を撫で下ろすM109。
ブライドが神速で追撃する。
ブライドの無意識の攻撃に動きが読めない。
ブライドが右の掌底を撃ち込む瞬間、ライフルが火を噴いた。
ブライドの右肩を背中から撃ち抜き、M109の左胸を狙う軸線だ。
ブライドは咄嗟に左の回し蹴りに変える。
ライフル弾を避ける動きが、そのまま攻撃につながる動きだ。
M109は、ブライドの蹴りを避ける動きがそのままライフル弾を避ける動きになる。
ライフル弾の軌跡を追うように、ブライドのブーツのカカトが襲いかかった。
対戦している相手の身体に隠れて狙撃をするとは、SIXもいやらしいやり方をする。
2085年のスナイパー用のレーザーポインターは不可視光線を使っているが、優秀な電脳やサポートAIなら可視化することができる。
スナイパーの殺気が読めれば射撃のタイミングがわかるが、SIXのスナイパーには殺気がまったくない。
その代わり、引き金を引く瞬間の筋肉の動く気配は隠すことができていない。
今、ブライドとM109の周囲には、6本のレーザーポインターの光条が張り巡らされていた。
広い駐車場の床の上には、どこにもスナイパーの死角はなかった。
この階の上は屋上になっている。
商業施設に併設された駐車場だが、今は使われていない。
先月から持ち主が代わり、大規模修繕工事が始まるのを待っているところだ。
車は1台も停まっていなかった。
周囲には、5~10階建くらいのビルが乱立している地域だ。
建物の多くは平成の頃に建てられたものだろう。
時代を感じさせる建物が多く見受けられる。
快晴の午後。
風は微風。
ブライドとM109との戦いが続いている。
「なかなかやるな、ブライド」
M109は、どんなに打撃を撃ち合っても動きが軽やかなままだ。
「ぜんぜん本気じゃないですね」
ブライドの打撃は一度も当たっていない。
「それはお互い様だろう」
M109が消える理屈も、ブライドは見抜いて対処している。
M109は、ブライドのように光学迷彩を使っている訳ではない。
ブライドが何かを『認識』する瞬間の虚を突いて高速で移動しているのだ。
M109が笑った時、彼の目だけは笑っていなかった。
その事実を無意識に認識した瞬間、M109はブライドの視野の外に移動していたのだ。
何かを認識する刹那、人の思考は停滞する。
その僅かな時間の中で、一気に視野の外まで高速で移動すると、消えたように錯覚してしまうのだ。
そこで、消えたと認識した刹那、ブライドの目の前に移動していたのだ。
理屈はわかるが、実際に超高速の反復横跳びができる人間はそうはいない。
ブライドにはできない動きだった。
ブライドの打撃も蹴りも、M109は捌いてしまう。
それに比べて、ブライドはM109の打撃を躱しきれていない。
だが当たってもいない。
なぜなら、M109が寸止めをしているからだ。
ブライドの昇龍脚もスウェーバックで躱された。
服が擦れ合う至近距離から相手の顎を蹴り上げるのが昇龍脚だ。
視界の外から来る神速の蹴りも、M109はいなしてしまう。
高く蹴り上げた爪先で小さく8の字を描きくように蹴りの方向を180度変えて、カカトをこめかみに落とす降龍脚も、M109は見切っていた。
更にその回転を加速させて、体重を乗せて撃ち込む肘も、M109は「ぽんっ」と手のひらで受けてしまった。
ありえない⁉️
更に肘を伸ばして掌底で顎を突き上げても、首を少し傾けて避けてしまった。
「いい動きをしているな」
間合いを開けたM109がブライドを誉めた。
(うさぎちゃん。
M109から電脳通信が来てるよ)
(つないで❣️)
(狙われているのは分かっているな?)
M109の言ってる意味は、スナイパーが狙撃体制に入っている事を気が付いているかと聞いているのだ。
(分かっています❣️)
(まだ続けるか?)
(狙撃は避けられますから、問題ありません❣️)
(いい子だ)
言葉を認識した刹那、M109が消えた。
後方に下がるブライドを追うように、M109が現れた。
その距離.....0センチ❗️
「な......なにを......⁉️」
ブライドのくちびるがM109に奪われた。
「さすがにディープキスとはいかないか?」
真っ赤になって手で口を隠すブライドが、M109の股間を蹴り上げる。
無意識の蹴りだった。
にやけていたM109の表情が、凍りついた。
かすった。
悔しがるブライド。
胸を撫で下ろすM109。
ブライドが神速で追撃する。
ブライドの無意識の攻撃に動きが読めない。
ブライドが右の掌底を撃ち込む瞬間、ライフルが火を噴いた。
ブライドの右肩を背中から撃ち抜き、M109の左胸を狙う軸線だ。
ブライドは咄嗟に左の回し蹴りに変える。
ライフル弾を避ける動きが、そのまま攻撃につながる動きだ。
M109は、ブライドの蹴りを避ける動きがそのままライフル弾を避ける動きになる。
ライフル弾の軌跡を追うように、ブライドのブーツのカカトが襲いかかった。
対戦している相手の身体に隠れて狙撃をするとは、SIXもいやらしいやり方をする。
2085年のスナイパー用のレーザーポインターは不可視光線を使っているが、優秀な電脳やサポートAIなら可視化することができる。
スナイパーの殺気が読めれば射撃のタイミングがわかるが、SIXのスナイパーには殺気がまったくない。
その代わり、引き金を引く瞬間の筋肉の動く気配は隠すことができていない。
今、ブライドとM109の周囲には、6本のレーザーポインターの光条が張り巡らされていた。
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