Rabbit bride 2085 第2話 SIXの標的

まろうど

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第2話 SIXの標的

1 うさぎのメイド

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「メイド喫茶はいかがですか❓」

可愛いらしい少女の声が、街の賑わいの中から聞こえてくる。

私は初めて、秋葉原の街に来ていた。

60歳を過ぎた自分には、とても似合わない街だと分かっているが、今日は人探しの目的があって秋葉原に訪れた。

とは言え、どこにいるのかわかっている訳ではない。

散歩のようなものだった。

私は、街をぐるっと見回した。

若さの溢れるいい街じゃないか?

若者達の弾む声を聞いていると、もう人探しは放っておいてもいいんじゃないかと思えてきた。

急ぐ必要はないし、どうせ当てがある訳でもないのだから。

2001年に開業されたメイド喫茶は、2085年でも盛況だった。

だがその業態はずいぶんと変わったようだ。

リアルに女性が接客する訳ではない。

電脳やサポートAIのおかげで、仮想空間を駆使して客を楽しませることができるからだ。

メイド喫茶に入店した客は、そこが巨大な邸宅に見える。

そして、自分好みのメイドを選んで、言葉遣いや衣装、仕草などをリクエストして、自由に接客をプログラムすることができる。

リアルではない分、セクハラもOKだ。

類似店舗に秘書室と言うのもあるらしい。

リアルな女性は、店舗の外で通行人に声を掛ける人だけのようだ。

「こんにちは、おじさま。
今日は綺麗な青空ですね❣️」

空を見上げている時に、不意に声を掛けられた。

優しく弾む、可愛いらしい声だった。

「どなたかをお探しですか❓」

心を撫でられるような、気持ちの良い言葉だった。

「あ......あぁ。
君を.....探していたんです」

少女の優しい笑顔に、私は思わず答えてしまった。

「わたしも、おじさまにお会いしたかったです❣️」

少女は、他人を疑うことも知らないような笑顔を見せて、恥ずかしそうに答えた。

「ありがとう」

私はこの時初めて、少女の姿に目をやった。

美しい少女だった。

黒いロングのメイド服に、白いエプロンを身に付けていた。

どこにでもあるメイド服だが、そこには気品が漂っていた。

少女の肌は、透き通るように白い。

髪も白に近い薄いブロンドだった。

瞳は、時折赤く見える。

「君はアルビノなのですか?」

「はい❣️
ちょっと肌が白過ぎますよね💕」

失礼な質問をしてしまったと気付く前に、少女は照れくさそうに笑って見せた。

「もし、お時間があれば、私のお店で休んで行ってください」

少女が差し出した名詞を、私は丁寧に受け取った。

名刺には
  『メイド喫茶 黒夢館
     うさぎ ありす』
と書かれていた。

「ありがとう。
今日は探している人を見つける以上に、嬉しい出会いがありました。
また、日を改めて君にお会いしたいと思います」

ドキドキしながら女性と会話するのはいつ以来だろう?

「わたしも、おじさまとの再会を心からお待ちしております」

丁寧に頭を下げる少女の元から、後ろ髪を引かれる思いで私は去った。

「次に会うのが楽しみですね」

ビルに囲まれた空を見上げる私の表情は、嬉しさを堪え切れずに笑顔が溢れていた。
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