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第2話 SIXの標的

プロローグ

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コツコツと足音が聞こえる。

海風が音をかき消すように通り抜けていく。

近づいて来ると、それは2人の足音であることが聞き分けられた。

血溜まりの中で、命が尽きるまでもがき続けた男の側で、2人の足音が止まった。

「わざと急所を外して何発も撃ち込んだのですか?」

30代と思われる男が問うた。

「いや、違うんじゃないか?」

50代と思われる男が、辺りを見回して答えた。

「見てみろ。
柱にも、床にも、複数の着弾痕がある。
下手な狙撃手が、四方から狙い撃ちしたんじゃないか?」

2人が見回す周囲には、至る所に着弾痕があった。

ここは6階建の自走式立体駐車場の4階だ。

周囲の景色が良く見渡せる。

屋上に登れば、遠くに海が見えるはずだ。

柱や車、転落防止の壁の影に隠れれば、この程度の射撃精度なら生き残れる確率は高い。

しかし、四方八方から狙撃されればそうはいかない。

隠れられる死角ができないからだ。

殺された男は、致命傷にはならない場所に何発もの弾丸を撃ち込まれて、時間をかけて嬲り殺しにされたようだ。

「酷い殺し方ですね」

30代の男が吐き捨てるように言った。

「これは、SIX(シックス)の仕業かも知れない」

50代の男が答えた。

「あのSIXですか?
6人組のスナイパーの.....」

「あぁ....
奴ら、いつの間に入国したんだ?

だが、本当にSIXの仕業なら、俺たち所轄の刑事に出番はない」

「またですか?」

「あぁ....
SIXは、諜報機関のエージェント専門の殺し屋だからだ。

このガイシャの身元も、俺たちではわからない」

「だから、鑑識も早々に店仕舞いしているんですね」

2人の刑事は、血溜まりの男に手を合わせて去って行った。

優しい風が、2人を追い越して行った。
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