1 / 6
プロローグ
しおりを挟む
紅蓮の炎と漆黒が戦っている
漆黒の烏天狗が、火車が取り憑いた人間と死闘を繰り広げている
胸に炎の車輪を着けた人間は、その炎で自らの身体を焼いていた
その炎の車輪の中心に、妖怪『火車』の顔があった
火車は牙を剥いて笑っていた
.....これは夢か?
烏天狗が押されている
火車の炎が凄まじい熱量を持っている
....あの烏天狗は誰だ❓
江戸時代の中期から後期にかけて、日本の妖怪の多くが退治された記述が残っている
だが実際は、大天狗の霊力によって妖怪達が未来に飛ばされただけだった
どうしても斃すことのできない妖怪を、大天狗は未来の人間たちに託したのだ
年号が令和に変わった頃から、江戸時代から飛ばされて来た妖怪達が出現し始めた
火車もそのひとつだ
車輪にとり憑く妖怪の火車は、現代の車にとり憑き、圧倒的な力で人々を食い散らかした
火車に恨みを持つ人間に対して、烏天狗が時代を越えてその力『法玉』を与えたのが4人のクロウだった
4人のクロウのうち3人は、すでに力尽きて倒れてしまった
その法玉を、最後のクロウ.....ゼロ・クロウに託して
「お前の妻子を殺したのは私だ❗️
お前の怒りはその程度か❓
アイアン・クロウ‼️」
口から炎を上げ、目から血の涙を流して火車に取り憑かれた人間が叫ぶ
火車が最初に取り憑いたのが、今アイアン・クロウと戦っている笹川の車だった
そして、最初の犠牲者がアイアン・クロウの妻子だった
もちろん、笹川に罪がある訳ではない
だから、アイアン・クロウは最後の攻撃を踏み切れずにいた
だが、いつまでも迷っている訳にはいかない
アイアン・クロウの中で、4つの法玉が光る
「零」ゼロ・クロウ
「剛」ダイナ・クロウ
「玄」ファントム・クロウ
「瞬」フラッシュ・クロウ
全ての法玉の力を有した者
それがアイアン・クロウだ
「行きますよ、先生❗️」
「来い❗️
九郎‼️」
....そうだ
あれは九郎....
神長九郎だ❗️
アイアン・クロウの鋼の爪が、火車の顔を貫き、取り憑かれた人間の心臓をも貫く
「笹川先生
ありがとうございます」
命のない妖怪を殺すことはできない
だから笹川は、自分の身体に火車を取り憑かせ、自分の命と共に火車を葬り去ろうとしていた
そして、笹川の命を絶つのはアイアン・クロウだ
それは笹川と九郎の、命を賭した約束だった
笹川の身体から逃れ、他の車に取り憑こうとする火車
「諦めるんだな火車
この周囲に車は1台もない」
アイアン・クロウの強い意志が火車を睨みつける
「そして、私の身体には結界を張っている
妖怪のお前は私の身体から出ることは不可能だ」
衣服が燃え落ちると、笹川の身体にはびっしりと呪文が書かれていた
満足そうに笑う笹川
最後の笹川の命を吸って、炎を上げて抵抗する火車
2人はその炎に焼かれながら、黙って耐えている
「ありがとう」
笹川の最後の言葉と共に、火車の炎は消え去った
そこには、崩れ落ちた炭と、半身が炭化した九郎だけが残った
アイアン・クロウの辛勝だった
もう、アイアン・クロウの姿を止めることもできていない
人間の、神長九郎の姿に戻っていた
九郎の身体から、ひとつ、またひとつと法玉がこぼれ落ちる
九郎の身体が、もうアイアン・クロウのフルパワーに耐えられないのだ
4つの法玉がこぼれ落ちた時、クロウの傍らに1人の男が現れた
震える瞳で、九郎が男の顔を見た
その男は、地面に落ちた零の法玉を拾い上げた
「すまないが九郎....
お前のその力を、おれに貸してくれないか❓」
男は返事も聞かず、その法玉を九郎の身体に押し込んだ
言葉を返すこともできず、炭となって崩れ落ちる九郎
立ち上がる男の隣に、九郎が立っていた
「いいですよ」
.....そうだ、思い出した
あの時に、おれは剛の法玉をもらったんだ
そして、おれは九郎を内閣調査室にスカウトしたんだ
おれは、ほどなくして夢から覚めた
そこは、那須連峰の西端にある沼っ原湿原の奥だった
M109にプラスチック爆弾=C4を食らって爆死した場所だ⁉️
C4爆弾が炸裂した場所から少し離れた木の影に、おれは立っていた
C4で木っ端微塵に吹き飛ばされた身体が、全部綺麗に元通りになっている
「生きてるじゃないか⁉️」
法玉を自分の身体に埋めてから60年以上経った
それからは肉体の老化が遅くなり、いつまでも50代の身体が維持されていた
そして、死んで生き返ったのは今回が初めてだった
聞いてはいたが、生き返るのは不思議な感覚だ
アイアン・クロウの能力は九郎が持っている
他の3つの法玉は、生き返るのが精一杯だ
それでもコイツは....
「なかなかスゴいじゃないか❗️」
炎はまだ、周囲の山々を照らしていた
漆黒の烏天狗が、火車が取り憑いた人間と死闘を繰り広げている
胸に炎の車輪を着けた人間は、その炎で自らの身体を焼いていた
その炎の車輪の中心に、妖怪『火車』の顔があった
火車は牙を剥いて笑っていた
.....これは夢か?
烏天狗が押されている
火車の炎が凄まじい熱量を持っている
....あの烏天狗は誰だ❓
江戸時代の中期から後期にかけて、日本の妖怪の多くが退治された記述が残っている
だが実際は、大天狗の霊力によって妖怪達が未来に飛ばされただけだった
どうしても斃すことのできない妖怪を、大天狗は未来の人間たちに託したのだ
年号が令和に変わった頃から、江戸時代から飛ばされて来た妖怪達が出現し始めた
火車もそのひとつだ
車輪にとり憑く妖怪の火車は、現代の車にとり憑き、圧倒的な力で人々を食い散らかした
火車に恨みを持つ人間に対して、烏天狗が時代を越えてその力『法玉』を与えたのが4人のクロウだった
4人のクロウのうち3人は、すでに力尽きて倒れてしまった
その法玉を、最後のクロウ.....ゼロ・クロウに託して
「お前の妻子を殺したのは私だ❗️
お前の怒りはその程度か❓
アイアン・クロウ‼️」
口から炎を上げ、目から血の涙を流して火車に取り憑かれた人間が叫ぶ
火車が最初に取り憑いたのが、今アイアン・クロウと戦っている笹川の車だった
そして、最初の犠牲者がアイアン・クロウの妻子だった
もちろん、笹川に罪がある訳ではない
だから、アイアン・クロウは最後の攻撃を踏み切れずにいた
だが、いつまでも迷っている訳にはいかない
アイアン・クロウの中で、4つの法玉が光る
「零」ゼロ・クロウ
「剛」ダイナ・クロウ
「玄」ファントム・クロウ
「瞬」フラッシュ・クロウ
全ての法玉の力を有した者
それがアイアン・クロウだ
「行きますよ、先生❗️」
「来い❗️
九郎‼️」
....そうだ
あれは九郎....
神長九郎だ❗️
アイアン・クロウの鋼の爪が、火車の顔を貫き、取り憑かれた人間の心臓をも貫く
「笹川先生
ありがとうございます」
命のない妖怪を殺すことはできない
だから笹川は、自分の身体に火車を取り憑かせ、自分の命と共に火車を葬り去ろうとしていた
そして、笹川の命を絶つのはアイアン・クロウだ
それは笹川と九郎の、命を賭した約束だった
笹川の身体から逃れ、他の車に取り憑こうとする火車
「諦めるんだな火車
この周囲に車は1台もない」
アイアン・クロウの強い意志が火車を睨みつける
「そして、私の身体には結界を張っている
妖怪のお前は私の身体から出ることは不可能だ」
衣服が燃え落ちると、笹川の身体にはびっしりと呪文が書かれていた
満足そうに笑う笹川
最後の笹川の命を吸って、炎を上げて抵抗する火車
2人はその炎に焼かれながら、黙って耐えている
「ありがとう」
笹川の最後の言葉と共に、火車の炎は消え去った
そこには、崩れ落ちた炭と、半身が炭化した九郎だけが残った
アイアン・クロウの辛勝だった
もう、アイアン・クロウの姿を止めることもできていない
人間の、神長九郎の姿に戻っていた
九郎の身体から、ひとつ、またひとつと法玉がこぼれ落ちる
九郎の身体が、もうアイアン・クロウのフルパワーに耐えられないのだ
4つの法玉がこぼれ落ちた時、クロウの傍らに1人の男が現れた
震える瞳で、九郎が男の顔を見た
その男は、地面に落ちた零の法玉を拾い上げた
「すまないが九郎....
お前のその力を、おれに貸してくれないか❓」
男は返事も聞かず、その法玉を九郎の身体に押し込んだ
言葉を返すこともできず、炭となって崩れ落ちる九郎
立ち上がる男の隣に、九郎が立っていた
「いいですよ」
.....そうだ、思い出した
あの時に、おれは剛の法玉をもらったんだ
そして、おれは九郎を内閣調査室にスカウトしたんだ
おれは、ほどなくして夢から覚めた
そこは、那須連峰の西端にある沼っ原湿原の奥だった
M109にプラスチック爆弾=C4を食らって爆死した場所だ⁉️
C4爆弾が炸裂した場所から少し離れた木の影に、おれは立っていた
C4で木っ端微塵に吹き飛ばされた身体が、全部綺麗に元通りになっている
「生きてるじゃないか⁉️」
法玉を自分の身体に埋めてから60年以上経った
それからは肉体の老化が遅くなり、いつまでも50代の身体が維持されていた
そして、死んで生き返ったのは今回が初めてだった
聞いてはいたが、生き返るのは不思議な感覚だ
アイアン・クロウの能力は九郎が持っている
他の3つの法玉は、生き返るのが精一杯だ
それでもコイツは....
「なかなかスゴいじゃないか❗️」
炎はまだ、周囲の山々を照らしていた
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
Rabbit bride 2085 第5話 流体のなるぁ
まろうど
SF
戦闘用AI強化アプリを違法ダウンロードして、軍隊並の連携と判断で犯罪に走る者が増えた。ブライドは、そのアプリを開発販売している男を探していた。
男をスカウトする目的でブライドと対峙する流体のなるぁとの空中戦、格闘戦を制するのはどっちだ?
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
Rabbit bride 2085 第10話 バエルの城
まろうど
SF
悪魔バエルの能力を持つ重犯罪サイボーグvs内閣調査室エージェント『ブライド』の物語
西暦2085年の日本は、急激に発展したサイボーグ技術に対応できず犯罪が急増していた
警察では対応できない重犯罪サイボーグや妖物の対応をするのが電脳空間の絶対王『電皇陛下』の私設機関『内閣調査室』のエージェントだった
そのエージェントの中でもとびきりの美少女であり、若手のエースが『ブライド』だ
『ブライド』は、パールホワイトのウエディングドレスを戦闘服に、数々の秘密兵器と性癖を使って重犯罪サイボーグを狩る、超絶エロいエージェントである
Rabbit bride 2085 第7話 強襲のブライド
まろうど
SF
消された記憶。
隠された3年前の事件。
誰を恨めばいい❓
誰に不満をぶつければいい❓
怒りに燃えたブライドが、単身で海上の要塞に強襲を掛ける。
《強襲のブライド》お見逃しなく‼️
Rabbit bride 2085 第3話 血の代償
まろうど
SF
ウエディングドレスを戦闘服に、性癖を武器に重犯罪者を狩る美少女『ブライド』。今回の相手は相性が最悪。捕まえられて、緊縛されたブライドは.....
Rabbit bride 2085 第4話 迫撃のブルバード
まろうど
SF
ブライドと容姿の似た女性が殺害された。
犯人は、ブライドの元教官のブルバード。
自分の性欲を満たすだけの目的で、ブライドを拘束して死ぬまで犯すことを望んでいる。
誰が誰を追い詰めて、誰が誰を狩るのか?
課長不在の内閣調査室は、いったい誰が指揮を取るのだろう?
混戦必至の第4話、始まります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる