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プロローグ

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紅蓮の炎と漆黒が戦っている

漆黒の烏天狗が、火車が取り憑いた人間と死闘を繰り広げている

胸に炎の車輪を着けた人間は、その炎で自らの身体を焼いていた

その炎の車輪の中心に、妖怪『火車』の顔があった

火車は牙を剥いて笑っていた

.....これは夢か?

烏天狗が押されている

火車の炎が凄まじい熱量を持っている

....あの烏天狗は誰だ❓

江戸時代の中期から後期にかけて、日本の妖怪の多くが退治された記述が残っている

だが実際は、大天狗の霊力によって妖怪達が未来に飛ばされただけだった

どうしても斃すことのできない妖怪を、大天狗は未来の人間たちに託したのだ

年号が令和に変わった頃から、江戸時代から飛ばされて来た妖怪達が出現し始めた

火車もそのひとつだ

車輪にとり憑く妖怪の火車は、現代の車にとり憑き、圧倒的な力で人々を食い散らかした

火車に恨みを持つ人間に対して、烏天狗が時代を越えてその力『法玉』を与えたのが4人のクロウだった

4人のクロウのうち3人は、すでに力尽きて倒れてしまった

その法玉を、最後のクロウ.....ゼロ・クロウに託して

「お前の妻子を殺したのは私だ❗️

お前の怒りはその程度か❓
アイアン・クロウ‼️」

口から炎を上げ、目から血の涙を流して火車に取り憑かれた人間が叫ぶ

火車が最初に取り憑いたのが、今アイアン・クロウと戦っている笹川の車だった

そして、最初の犠牲者がアイアン・クロウの妻子だった

もちろん、笹川に罪がある訳ではない

だから、アイアン・クロウは最後の攻撃を踏み切れずにいた

だが、いつまでも迷っている訳にはいかない

アイアン・クロウの中で、4つの法玉が光る

「零」ゼロ・クロウ
「剛」ダイナ・クロウ
「玄」ファントム・クロウ
「瞬」フラッシュ・クロウ

全ての法玉の力を有した者
それがアイアン・クロウだ

「行きますよ、先生❗️」

「来い❗️
九郎‼️」

....そうだ
あれは九郎....
神長九郎だ❗️

アイアン・クロウの鋼の爪が、火車の顔を貫き、取り憑かれた人間の心臓をも貫く

「笹川先生
ありがとうございます」

命のない妖怪を殺すことはできない

だから笹川は、自分の身体に火車を取り憑かせ、自分の命と共に火車を葬り去ろうとしていた

そして、笹川の命を絶つのはアイアン・クロウだ

それは笹川と九郎の、命を賭した約束だった

笹川の身体から逃れ、他の車に取り憑こうとする火車

「諦めるんだな火車
この周囲に車は1台もない」

アイアン・クロウの強い意志が火車を睨みつける

「そして、私の身体には結界を張っている

妖怪のお前は私の身体から出ることは不可能だ」

衣服が燃え落ちると、笹川の身体にはびっしりと呪文が書かれていた

満足そうに笑う笹川

最後の笹川の命を吸って、炎を上げて抵抗する火車

2人はその炎に焼かれながら、黙って耐えている

「ありがとう」

笹川の最後の言葉と共に、火車の炎は消え去った

そこには、崩れ落ちた炭と、半身が炭化した九郎だけが残った

アイアン・クロウの辛勝だった

もう、アイアン・クロウの姿を止めることもできていない

人間の、神長九郎の姿に戻っていた

九郎の身体から、ひとつ、またひとつと法玉がこぼれ落ちる

九郎の身体が、もうアイアン・クロウのフルパワーに耐えられないのだ

4つの法玉がこぼれ落ちた時、クロウの傍らに1人の男が現れた

震える瞳で、九郎が男の顔を見た

その男は、地面に落ちた零の法玉を拾い上げた

「すまないが九郎....
お前のその力を、おれに貸してくれないか❓」

男は返事も聞かず、その法玉を九郎の身体に押し込んだ

言葉を返すこともできず、炭となって崩れ落ちる九郎

立ち上がる男の隣に、九郎が立っていた

「いいですよ」

.....そうだ、思い出した
あの時に、おれは剛の法玉をもらったんだ

そして、おれは九郎を内閣調査室にスカウトしたんだ

おれは、ほどなくして夢から覚めた

そこは、那須連峰の西端にある沼っ原湿原の奥だった

M109にプラスチック爆弾=C4を食らって爆死した場所だ⁉️

C4爆弾が炸裂した場所から少し離れた木の影に、おれは立っていた

C4で木っ端微塵に吹き飛ばされた身体が、全部綺麗に元通りになっている

「生きてるじゃないか⁉️」

法玉を自分の身体に埋めてから60年以上経った

それからは肉体の老化が遅くなり、いつまでも50代の身体が維持されていた

そして、死んで生き返ったのは今回が初めてだった

聞いてはいたが、生き返るのは不思議な感覚だ

アイアン・クロウの能力は九郎が持っている

他の3つの法玉は、生き返るのが精一杯だ

それでもコイツは....
「なかなかスゴいじゃないか❗️」

炎はまだ、周囲の山々を照らしていた
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