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3 きゅうりと翔太郎

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稲穂がゆらゆらと風と遊んでいる。

朝日が川面に反射して踊っている。

見渡す限りの水田。

見渡す限りの青空。

見渡す限りの景色の色が、稲穂の黄金色と空の青色の2色しかない。

「田舎って不思議な世界だね❣️」

(うさぎちゃんは、田舎は嫌いじゃなかった❓)

「そうね....
そうだったね。

でも、ちょっとだけ好きかもしれないよ💕」

うさぎはサポートAIのkameとおしゃべりしながら、朝の五行川沿いを歩いていた。

「そうだkameちゃん。

九郎さんに連絡しなくちゃ💦」

(心配しているかな❓

今、呼び出してるよ)

「はい、九郎です」

思ったより素っ気ない声だった。

「おはようございますうさぎです❣️
報告します。

通報のあった妖怪は、鵺です。

鵺は猿、狸、虎、蛇の4体の妖怪が合わさったモノです。

蛇はすでに退治されていましたので、残り3体を退治します」

「鵺か‼️
手強いぞ」

「大丈夫です。
協力者もいますから❣️」

「そうか。
なら、昨日送られた蛇の頭部の解析結果を送る。

蛇の頭部にはサポートAIが埋め込まれていた。

操っている者が何処かに潜んでいる筈だ。

そいつも一緒に処分を頼む」

「わかりました❣️」

通話を切ってすぐに、送られたデータを確認するうさぎとkame。

(うさぎちゃんが任命された理由が分かったね)

「なるほど❣️
これならガーランドも使えそうですね」

(専用の魔方陣を作っておくよ)

おしゃべりしている間に、畑の中で作業をしている風太郎の姿が見えてきた。

翔太郎は農家だが、なぜかお米を作らない。

きゅうりばっかり作っている。

きゅうりだけに心血を注いでいる。

地元のみんなに、きゅうりバカと呼ばれているそうだ。

でも、翔太郎の作ったきゅうりは、とっても美味しいと評判だった。

黄金色の稲穂の中に、ここだけ緑色に染まっている。

「なんかここだけ別世界みたいだね❣️」

(きゅうりバカがいるせいだね)

「朝の収穫はまだ終わらないのかな❓」

大きな声で呼んでみた。

「翔太郎さーん❣️

朝ごはんできたよ🍚」

うさぎの声に収穫の手を止める翔太郎。

長い髪を後ろで縛っている翔太郎の額に汗が光っていた。

「トラックにきゅうりを積むのを手伝ってくれ」

トラックの近くに、たくさんのきゅうりが詰まった黄色い採集コンテナが積み上がっていた。

うさぎはひとつずつコンテナを持ち上げる。

翔太郎は4つまとめて持ち上げる。

汗をかいた翔太郎の身体は、皮膚の下で太い筋肉がうごめいている。

その筋肉のひと束が、うさぎの腕くらいの太さのようだ。

「きゅうりばっかり食べているのに、なんでこんなに立派な身体になるのかな⁉️」

「旨いものを食べてるからさ」

屈託のない笑みで答える。

近所のお婆さんが声を掛けてきた。

「あら翔太郎、恋人かい⁉️」

お婆さんは散歩の途中のようだ。

「親戚の子です」

そう答える翔太郎。

他愛ない会話をして、楽しそうに笑って、お婆さんはまた歩き出した。

「この街のみんなに良くしてもらっている。
皆、気のいい人たちなんだ。

それなのに、この街に鵺が住み着いてしまった。
被害が出る前に、おれが奴を退治したい」

「一緒にやりましょう❣️」

「宜しく頼みます」

翔太郎は嬉しそうにきゅうりを頬張った。

「旨い‼️」

(それはスーパーに卸すきゅうりだろう💦)

kameの言葉に、うさぎも笑った。

「全部食べないでね❣️」

大きな空と豊富な水が、今日も旨いきゅうりを育ててくれる。


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