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序章 黒い弾丸
1 黒い弾丸
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那須塩原市の旧塩原町には関谷断層と呼ばれる、(当時)日本最大の断層がある。
(後に、複数の断層に分割された)
だから、平地と山の境目がはっきりしていた。
多くの山に見られる裾野が無く、平地の終わりからいきなり山がそそり立っている。
おれはそれが好きだった。
曖昧な事がなく、きっぱりとしているからだ。
おれは関谷の旧道から塩原温泉郷に向かっていた。
わざと旧道を通る理由は、旧道にはタイトコーナーがあるからだ。
スポーツカーは曲がってなんぼの世界だ。
誰でも速度を乗せられる直線なんかクソ喰らえ。
コーナー手前になって、後続のジャパンが車間を詰めてくる。
おれは軽いブリッピングで2速までシフトダウンをしていく。
たいした速度は出していないので、ブレーキはチョン掛けでいい。
何がジャパンだ。
おれとコーナリングで勝負をするつもりか?
バイパスとの合流までに3つのタイトコーナーがある。
格の違いを見せ付けてやる。
おれはRX7をほとんど減速させずに、最初の左コーナーに進入する。
重心移動からスライドを誘発させて、パワーオーバーステアで豪快にコーナリングする。
立ち上がりで、少しだけアクセルを抜く。
ここで振り切ってしまったら、ジャパンのドライバーが諦めてしまうからだ。
それじゃつまらない。
コーナーの立ち上がりで元気になるジャパン。
どうやら、奴のエンジンはL20ETのようだ。
「スカイライン ジャパンターボで、おれに挑むつもりかい?」
直線で車間を詰めるジャパンターボ。
そのくらい元気でないと、潰し甲斐がないってものだ。
おれはアクセルを踏み込んで、迫り来るコーナーの直前でRX7に全開加速をさせた。
おれの車はマツダのサバンナRX7 ターボGT(昭和58年式)だ。
トルネードシルバーメタリックのボディカラーはターボ専用カラーだ。
搭載する12Aターボはグロス出力165馬力だが、現在のネット出力では130馬力程度に表記される。
たいした出力ではないが、8250rpmまで常用できる超高回転のエンジンだ。
当時のレシプロエンジンは、せいぜい6000rpmが限界だった。
おれはコーナリング中のエンジン回転数を、6000~8250rpm をキープさせる。
レシプロ車が同じ速度でコーナーに進入出来たとしても、RX7が2速でコーナリングするるのに対して、レシプロ車は3速に上げる必要がある。
当然、強いトラクションを掛けられるRX7の方がコーナリングスピードは上回る。
RX7が右のタイトコーナーをドリフトで駆け抜ける。
ジャパンも同じ速度でコーナーに進入してドリフトするが、アペックスから全開加速ができるRX7の敵ではない。
直線では更に車間が開く。
最後の左コーナーの先はバイパスとの合流になるため、すぐに一時停止する必要がある。
おれはスライドからのフルブレーキで、きちんと一時停止をする。
そして、全開加速で塩原街道に合流する。
後方からけたたましいスキール音が響いてくる。
どうやら、ジャパンは最後のコーナーで派手なスピンをしたようだ。
まぁ、そんなところだろう。
おれは単騎で、塩原街道を塩原温泉郷に向けて走っていった。
走り屋全盛期の1985年(昭和60年)から、この物語は始まる。
当時は何処の峠にも、何処の街道にも最速の走り屋がいた。
現在の那須塩原市を通る国道400号 湯の香ラインが塩原街道と呼ばれていた頃、この街道をホームコースとする走り屋達がいた。
今でこそトンネルや橋が出来て走り易い道になっているが、当時は曲がりくねった旧道が唯一の道だった。
初心者は絶対に行ってはならないと言われるくらい、ハンドル操作を誤って谷底に転落する車が多いルートだった。
そのトリッキーに曲がりくねる塩原街道を、誰も追いつく事ができない速度で駆け抜ける、一台のバイクがあった。
それは、黒いカワサキの750だ。
モリワキの集合を入れたそのバイクの、無敵の走りに憧れた者は多かった。
そのライダーは、走り屋達から畏怖の対象として《黒い弾丸》と呼ばれていた。
「黒い弾丸か.....
一度でいいから勝負したいものだ」
おれは春風に揺れる木のトンネルを見上げて、そう願っていた。
『ミッドガルドの旋風(かぜ)
マツダ サバンナRX7 ターボGT』
🆚
『黒い弾丸
カワサキ Z750FX』
箒川が流れる潜龍峡沿いに、小気味良いタイトコーナーが続く。
平日の昼間は、意外にも空いているようだ。
道幅は広くはないが、センターラインは引かれている。
もし、対抗車に大型バスが来ると大変な事になる。
大型バスはセンターラインを大きくはみ出して、道幅を目一杯使わないと曲がれないので、こっちは急ブレーキで止まらなくてはならない。
そういった事を想定しながら、おれは塩原街道をRX7でドリフトしながら走っていた。
この速度で追って来られる者はいないだろう。
あのジャパンターボは戦線を離脱したはずだし、そもそも、おれと勝負をするだけの腕がない。
もし居るとすれば、伝説のライダー『黒い弾丸』だけだろう。
回顧(みかえり)トンネルを過ぎた辺りから、おれは速度を落としてグリップ走行に切り替える。
周囲の景色を見たいからだ。
塩原は渓谷美もスゴイが、滝がスゴイんだ。
街道の左右に沢山の滝がある。
渓谷の底を流れる箒川にも滝がある。
その箒川に流れ落ちる大小の滝が無数にあるのが塩原渓谷のいいところだ。
街道のすぐ脇を豪快に流れる滝もあれば、雨の時だけ姿を現わす滝もある。
通る度に、滝の数が変わるんだ。
滝好きにはたまらないコースだった。
突然、バイクの集合管の音が聞こえた。
さっきのトンネルで反響したのだろうか?
後方からだんだん近づいている?
まさか!
乾いたエキゾーストノートが、塩原の山々に反響している。
モリワキの集合だ。
やはり、排気音が近づいてきている。
もしや、そいつは.....
轟‼️
轟音がおれに追いついた。
ミラーにヘッドライトが映った瞬間、奴はRX7をアウトから抜き去った。
見つけたぞ❗️
逃がすものか‼️
黒いヘルメット。
黒い革ツナギ。
黒いグローブとブーツ。
ライダーの名前は誰も知らない。
だが、走り屋としての異名は知っている。
『黒い弾丸』
会えて嬉しいぜ。
全開加速の準備は完了している。
逃がすものか!
テールトゥノーズでタイトコーナーに進入する。
コーナーのアペックスでアクセルをガバ開けするZ750FX。
グイグイとバイクの向きを変えて、豪快な加速で立ち上がって行く。
惚れ惚れするライディングテクニックだ。
立ち上がりで車間が開いた。
さすがだ。
黒い弾丸の異名は伊達ではないようだ。
コーナー間の緩やかに曲がる道では、お互いの速さが拮抗している。
約10メートルの車間距離は縮まらない。
それでいい。
何故なら、おれはオーバースピードで、次のタイトコーナーに進入するからだ。
前が詰まっていては使えない技術があるからだ。
おれは右足でブレーキ操作に集中する。
最大の減速を得られるハーフロックを使いこなす。
そして、おれはヒールアンドトゥは使わない。
左足はクラッチ操作をするが、ギアチェンジ以外にも仕事がある。
ハーフクラッチでエンジンブレーキをかけ続け、エンジンを高回転で維持させている。
だから、ヒールアンドトゥの必要性がないのだ。
右足でブレーキ操作をしながら、左足でエンジン回転数を維持している。
これがヒールアンドトゥを上回る、おれのドライビングテクニック、ハーフアンドハーフだ。
タイヤは白煙を上げるがロックはしていない。
一瞬でブレーキは終了する。
ブレーキ操作と同時に、ハンドルはほんの少しだけアウト側に切る。
ブレーキ終了と同時に、ハンドルは思い切ってイン側に切る。
車体の重心をイン側に移動させて、小さく速く曲がるクイックターンだ。
ブレーキ解除と同時にクラッチを繋ぐ。
高回転を維持しているエンジンは、クラッチが繋がった瞬間加速体制に入る。
ブレーキペダルからアクセルペダルに右足を移動するロスタイムはあるが、その間に加速が鈍る事はないので、実質的にロスタイムはないのと同じだ。
右足がアクセルペダルを思い切り踏み込むと、重心移動との相乗効果でテールスライドが誘発される。
おれのRX7は、Z750FXよりも速い速度でコーナーに進入し、立ち上がりでテールに貼り付く。
どんなもんだ。
ミラーを見る黒い弾丸。
奴は得意のコーナーでRX7を振り切れなかった。
さぞ、驚いた事だろう。
次で抜いてやる。
奴のテールにビタ付けしたまま、アウトからドリフトで抜いてやる。
⁉️
ダメだ❗️
大型バスが来た‼️
大網温泉のホテルの脇を右に曲がるタイトコーナーがある。
建物で先が見えないブライドコーナーだ。
黒い弾丸は、アウトからハングオンでコーナーに切れ込む。
と同時に、大型バスが道を塞ぐように目の前に現れた。
目の前を突然壁で塞がれたも同じだ。
逃げ道はない。
白煙を上げるタイヤ。
ハーフロックで急激に速度を落とすRX7。
容赦なく迫り来る大型バス。
完全停止は不可能な距離と速度だ。
先行した黒い弾丸は無事なのか?
おれは大外を回るようにブレーキドリフトでコーナーに進入する。
大型バスと接触したRX7が火花を散らす幻覚が見えるほど、2台の間の空間は最小だった。
神速のシフトダウンで体制を立て直し、S字の切り返しをアクセルワークを使ってテールスライドだけで完了させる。
針の穴を通す正確さで、おれはスライドコントロールができる。
だから走り屋なんだ。
道幅をいっぱいいっぱい使わなければドリフトできない走り屋モドキとは技術が違う。
峠には峠の走り方がある。
それはサーキットの技術と対極にある技術だ。
いかに小さく速く曲がれるかが、タイトコーナーが続く日本のワインディングでは重要なんだ。
黒い弾丸を確認した。
元気にコーナリングしているじゃないか。
車間距離は、少し開いたようだ。
奴の方が一枚上手か?
癪に触る。
いいさ。
ここから仕切り直しだ。
さぁ、第2ラウンドを始めようか⁉️
(後に、複数の断層に分割された)
だから、平地と山の境目がはっきりしていた。
多くの山に見られる裾野が無く、平地の終わりからいきなり山がそそり立っている。
おれはそれが好きだった。
曖昧な事がなく、きっぱりとしているからだ。
おれは関谷の旧道から塩原温泉郷に向かっていた。
わざと旧道を通る理由は、旧道にはタイトコーナーがあるからだ。
スポーツカーは曲がってなんぼの世界だ。
誰でも速度を乗せられる直線なんかクソ喰らえ。
コーナー手前になって、後続のジャパンが車間を詰めてくる。
おれは軽いブリッピングで2速までシフトダウンをしていく。
たいした速度は出していないので、ブレーキはチョン掛けでいい。
何がジャパンだ。
おれとコーナリングで勝負をするつもりか?
バイパスとの合流までに3つのタイトコーナーがある。
格の違いを見せ付けてやる。
おれはRX7をほとんど減速させずに、最初の左コーナーに進入する。
重心移動からスライドを誘発させて、パワーオーバーステアで豪快にコーナリングする。
立ち上がりで、少しだけアクセルを抜く。
ここで振り切ってしまったら、ジャパンのドライバーが諦めてしまうからだ。
それじゃつまらない。
コーナーの立ち上がりで元気になるジャパン。
どうやら、奴のエンジンはL20ETのようだ。
「スカイライン ジャパンターボで、おれに挑むつもりかい?」
直線で車間を詰めるジャパンターボ。
そのくらい元気でないと、潰し甲斐がないってものだ。
おれはアクセルを踏み込んで、迫り来るコーナーの直前でRX7に全開加速をさせた。
おれの車はマツダのサバンナRX7 ターボGT(昭和58年式)だ。
トルネードシルバーメタリックのボディカラーはターボ専用カラーだ。
搭載する12Aターボはグロス出力165馬力だが、現在のネット出力では130馬力程度に表記される。
たいした出力ではないが、8250rpmまで常用できる超高回転のエンジンだ。
当時のレシプロエンジンは、せいぜい6000rpmが限界だった。
おれはコーナリング中のエンジン回転数を、6000~8250rpm をキープさせる。
レシプロ車が同じ速度でコーナーに進入出来たとしても、RX7が2速でコーナリングするるのに対して、レシプロ車は3速に上げる必要がある。
当然、強いトラクションを掛けられるRX7の方がコーナリングスピードは上回る。
RX7が右のタイトコーナーをドリフトで駆け抜ける。
ジャパンも同じ速度でコーナーに進入してドリフトするが、アペックスから全開加速ができるRX7の敵ではない。
直線では更に車間が開く。
最後の左コーナーの先はバイパスとの合流になるため、すぐに一時停止する必要がある。
おれはスライドからのフルブレーキで、きちんと一時停止をする。
そして、全開加速で塩原街道に合流する。
後方からけたたましいスキール音が響いてくる。
どうやら、ジャパンは最後のコーナーで派手なスピンをしたようだ。
まぁ、そんなところだろう。
おれは単騎で、塩原街道を塩原温泉郷に向けて走っていった。
走り屋全盛期の1985年(昭和60年)から、この物語は始まる。
当時は何処の峠にも、何処の街道にも最速の走り屋がいた。
現在の那須塩原市を通る国道400号 湯の香ラインが塩原街道と呼ばれていた頃、この街道をホームコースとする走り屋達がいた。
今でこそトンネルや橋が出来て走り易い道になっているが、当時は曲がりくねった旧道が唯一の道だった。
初心者は絶対に行ってはならないと言われるくらい、ハンドル操作を誤って谷底に転落する車が多いルートだった。
そのトリッキーに曲がりくねる塩原街道を、誰も追いつく事ができない速度で駆け抜ける、一台のバイクがあった。
それは、黒いカワサキの750だ。
モリワキの集合を入れたそのバイクの、無敵の走りに憧れた者は多かった。
そのライダーは、走り屋達から畏怖の対象として《黒い弾丸》と呼ばれていた。
「黒い弾丸か.....
一度でいいから勝負したいものだ」
おれは春風に揺れる木のトンネルを見上げて、そう願っていた。
『ミッドガルドの旋風(かぜ)
マツダ サバンナRX7 ターボGT』
🆚
『黒い弾丸
カワサキ Z750FX』
箒川が流れる潜龍峡沿いに、小気味良いタイトコーナーが続く。
平日の昼間は、意外にも空いているようだ。
道幅は広くはないが、センターラインは引かれている。
もし、対抗車に大型バスが来ると大変な事になる。
大型バスはセンターラインを大きくはみ出して、道幅を目一杯使わないと曲がれないので、こっちは急ブレーキで止まらなくてはならない。
そういった事を想定しながら、おれは塩原街道をRX7でドリフトしながら走っていた。
この速度で追って来られる者はいないだろう。
あのジャパンターボは戦線を離脱したはずだし、そもそも、おれと勝負をするだけの腕がない。
もし居るとすれば、伝説のライダー『黒い弾丸』だけだろう。
回顧(みかえり)トンネルを過ぎた辺りから、おれは速度を落としてグリップ走行に切り替える。
周囲の景色を見たいからだ。
塩原は渓谷美もスゴイが、滝がスゴイんだ。
街道の左右に沢山の滝がある。
渓谷の底を流れる箒川にも滝がある。
その箒川に流れ落ちる大小の滝が無数にあるのが塩原渓谷のいいところだ。
街道のすぐ脇を豪快に流れる滝もあれば、雨の時だけ姿を現わす滝もある。
通る度に、滝の数が変わるんだ。
滝好きにはたまらないコースだった。
突然、バイクの集合管の音が聞こえた。
さっきのトンネルで反響したのだろうか?
後方からだんだん近づいている?
まさか!
乾いたエキゾーストノートが、塩原の山々に反響している。
モリワキの集合だ。
やはり、排気音が近づいてきている。
もしや、そいつは.....
轟‼️
轟音がおれに追いついた。
ミラーにヘッドライトが映った瞬間、奴はRX7をアウトから抜き去った。
見つけたぞ❗️
逃がすものか‼️
黒いヘルメット。
黒い革ツナギ。
黒いグローブとブーツ。
ライダーの名前は誰も知らない。
だが、走り屋としての異名は知っている。
『黒い弾丸』
会えて嬉しいぜ。
全開加速の準備は完了している。
逃がすものか!
テールトゥノーズでタイトコーナーに進入する。
コーナーのアペックスでアクセルをガバ開けするZ750FX。
グイグイとバイクの向きを変えて、豪快な加速で立ち上がって行く。
惚れ惚れするライディングテクニックだ。
立ち上がりで車間が開いた。
さすがだ。
黒い弾丸の異名は伊達ではないようだ。
コーナー間の緩やかに曲がる道では、お互いの速さが拮抗している。
約10メートルの車間距離は縮まらない。
それでいい。
何故なら、おれはオーバースピードで、次のタイトコーナーに進入するからだ。
前が詰まっていては使えない技術があるからだ。
おれは右足でブレーキ操作に集中する。
最大の減速を得られるハーフロックを使いこなす。
そして、おれはヒールアンドトゥは使わない。
左足はクラッチ操作をするが、ギアチェンジ以外にも仕事がある。
ハーフクラッチでエンジンブレーキをかけ続け、エンジンを高回転で維持させている。
だから、ヒールアンドトゥの必要性がないのだ。
右足でブレーキ操作をしながら、左足でエンジン回転数を維持している。
これがヒールアンドトゥを上回る、おれのドライビングテクニック、ハーフアンドハーフだ。
タイヤは白煙を上げるがロックはしていない。
一瞬でブレーキは終了する。
ブレーキ操作と同時に、ハンドルはほんの少しだけアウト側に切る。
ブレーキ終了と同時に、ハンドルは思い切ってイン側に切る。
車体の重心をイン側に移動させて、小さく速く曲がるクイックターンだ。
ブレーキ解除と同時にクラッチを繋ぐ。
高回転を維持しているエンジンは、クラッチが繋がった瞬間加速体制に入る。
ブレーキペダルからアクセルペダルに右足を移動するロスタイムはあるが、その間に加速が鈍る事はないので、実質的にロスタイムはないのと同じだ。
右足がアクセルペダルを思い切り踏み込むと、重心移動との相乗効果でテールスライドが誘発される。
おれのRX7は、Z750FXよりも速い速度でコーナーに進入し、立ち上がりでテールに貼り付く。
どんなもんだ。
ミラーを見る黒い弾丸。
奴は得意のコーナーでRX7を振り切れなかった。
さぞ、驚いた事だろう。
次で抜いてやる。
奴のテールにビタ付けしたまま、アウトからドリフトで抜いてやる。
⁉️
ダメだ❗️
大型バスが来た‼️
大網温泉のホテルの脇を右に曲がるタイトコーナーがある。
建物で先が見えないブライドコーナーだ。
黒い弾丸は、アウトからハングオンでコーナーに切れ込む。
と同時に、大型バスが道を塞ぐように目の前に現れた。
目の前を突然壁で塞がれたも同じだ。
逃げ道はない。
白煙を上げるタイヤ。
ハーフロックで急激に速度を落とすRX7。
容赦なく迫り来る大型バス。
完全停止は不可能な距離と速度だ。
先行した黒い弾丸は無事なのか?
おれは大外を回るようにブレーキドリフトでコーナーに進入する。
大型バスと接触したRX7が火花を散らす幻覚が見えるほど、2台の間の空間は最小だった。
神速のシフトダウンで体制を立て直し、S字の切り返しをアクセルワークを使ってテールスライドだけで完了させる。
針の穴を通す正確さで、おれはスライドコントロールができる。
だから走り屋なんだ。
道幅をいっぱいいっぱい使わなければドリフトできない走り屋モドキとは技術が違う。
峠には峠の走り方がある。
それはサーキットの技術と対極にある技術だ。
いかに小さく速く曲がれるかが、タイトコーナーが続く日本のワインディングでは重要なんだ。
黒い弾丸を確認した。
元気にコーナリングしているじゃないか。
車間距離は、少し開いたようだ。
奴の方が一枚上手か?
癪に触る。
いいさ。
ここから仕切り直しだ。
さぁ、第2ラウンドを始めようか⁉️
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