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第二章 ブラッド・レーベル

第18話 ブラッド・レーベル③

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声の主は、先ほどの男の刑事。それと女刑事。二人ともこちらに銃口を向けている。その顔にはガスマスクを身に付けていた。なるほど、しっかり対策していたわけか。

「突入突入!!」
「いけいけいけいけ!!」
「防御班は前へ!!」

威勢のいい声とともに、通路のあちこちから武装した連中が突入してきた。防御班、まるで溶接で使うような盾を持っている連中を先頭に、その後ろに銃を構えている連中。総勢4,50人ほどだろうか。

完全に囲まれたな。なぜだ。見え猿からの通信はなかった。何か異常があれば、見え猿が見逃すはずがない。ということは、まさか……?

『乗っ取ったのか……?』

「その通り。これで、君たちの目は死んだ。さあ、素直に投降してくれ。できれば殺したくない。君たちが持っている情報について、色々と聞きたいことがあるからね」

『…………』

見え猿からのサポートがないとなると、僕たちで状況を把握して動くしかない。即断即決。すぐに動かなければ。

『戦闘は避けられない。あの刑事二人は僕と言え猿で。その他の雑魚はみんなに任せる。極力殺すな』
『『了解!!』』

ブラッド・レーベルは戦闘態勢に入った。それぞれが標的に向かい進行する。

「各員! 全員取り押さえろ! 最悪の場合、発砲も許可する!!」

男刑事が、全体に指示を出していた。さあ、本格的なゴチャマンだ。人数は圧倒的にこちらが不利。警備の連中はおおよそ50人近く。さらに向こうは銃や盾、恐らく防弾チョッキなども装備しているだろう。

冷静に考えて、この状況……。

「……夢子ちゃん、僕たちでリーダーを押さえるよ」
「了解」

向こうも僕たちを迎え撃つ準備ができたららしい。正面から打ち合うなんて僕達らしくないけど、これも力を示すいい機会だ。アイツに見せつけなければならない。そして必ず引きずり出す。


『あー!』

言え猿が先行して攻撃を仕掛けた。手には特製のバタフライナイフ。それで敵の銃弾を捌きながら、防護服の弱い部分である関節部を狙って切りつける。

「うっ! ぐぐぐうぐぐぐぅ……!」

言え猿のナイフには強力な神経毒が塗られており、掠っただけでも数時間は動けない。切られた相手は、悶えるように苦しみながら地面に伏している。しかし、その声が発せられることはない。

『邪魔だ』

それに続くように、聞こえ猿がご自慢の怪力を活かし、鎚を振り回す。持ち手である柄の部分は長く、頭部の金属部分は通常のものより小さい。
その分、取り回しがしやすく小回りが効く。それでいてリーチもあるが、癖がある獲物だ。聞こえ猿はそれを使いこなし、相手との距離を取りつつも、相手のガードごと潰していく。

「グエッ!」

盾で防ごうとしても無駄だ。聞こえ猿の一撃はそう軽くない。そしてそれを避けようとしたところには、言え猿の猛毒ナイフが飛んでくる。

『アハハハハ!! 楽しいね赤鬼! コイツら雑魚じゃん!』
『うるさい。黙ってやりなよ』

さらには逃した敵を的確に刈り取る赤鬼と青鬼。それぞれが一本ずつ鉈を手に、猛威を振るっている。

『捕らえ猿、君は僕たちのサポートを』

『……分かったわ』

言え猿が切り開いてくれた道を、僕と捕らえ猿が駆ける。
僕たちは、こんなところで捕まるわけにはいかないんだ。

だから、相手が誰だろうと狩り尽くす。それが、薺を救うことに繋がるから。


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